プロ野球セ・パ両リーグでチームドクターとして活躍した吉松俊一氏は「幼少期からの運動が脳の活性化につながる」という。吉松俊一氏とその息子・吉松俊紀氏の共著「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)から、頭のいい子どもを育てるヒントをご紹介。

頭の回転をよくする反復練習

スポーツの世界では、よく「体で覚えろ」といった表現で指導がなされます。よく野球のヒーローインタビューで、ホームランを打ったバッターに「打った瞬間、どのように思いましたか?」などと質問するインタビュアーがいます。しかし、実際はほとんどナニも考えていなかったというのが実情ではないでしょうか。

しかし、この状態は、決してまったく頭を使っていないわけではありません。むしろ大脳の情報処理と、その情報を命令として神経系を通じて体の筋肉に伝えるのが猛スピードだと考えるべきです。つまりコンピュータにたとえるなら、一流選手の大脳は超高性能コンピュータであり、頭で考えるより先に体が勝手に動いているのです。

画像: 反復練習を行うこと=体で覚えることが、脳の活性化につながる

反復練習を行うこと=体で覚えることが、脳の活性化につながる

実際、どんなスポーツでも考える時間があると、失敗することは往々にしてあるものです。たとえば野球でバッターが、読みどおりのボールが来たとします。そのとき、「よしもらった」と思った瞬間、力んで空振り、あるいは凡打、ということはよくあることです。神経の伝達スピードは秒速100m/sから120m/sといわれていますが、「よし、もらった」と思った分だけ、大脳の情報処理スピードが遅れるのでしょう。

これがスポーツでは失敗の原因とされる邪念や欲といったものの、大脳から見た正体です。

では、一方の成功の原因となる無心とは、まさしく大脳が超高速でその性能を発揮した状態です。つまり、もっとも大脳が活性化した状態といってもいいでしょう。そして大脳を鍛えるには、このスポーツにおける「体で覚えろ」といった練習が実に効果的なのです。

体で覚えるためには反復練習が不可欠ですが、これこそが大脳の神経細胞をつないでいるシナプスの性能を磨くのです。

ちなみに机に向かっただけの勉強では、このシナプスの性能を上げることは難しいこともわかっています。つまりスポーツの反復練習、体で覚えることこそが、頭の回転をよくするのです。

「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)より。

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