女子ツアー「アース・モンダミンカップ」では5年ぶりに渡邉彩香が復活優勝を挙げた。ツアーの前線で活躍している選手らが、なにかしらをきっかけにスランプに陥ってしまうことも少なくない。果たしてスランプから復活するために何が必要なのか、トレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが分析した。

新型コロナウィルスの影響で、事実上の開幕戦となった「アース・モンダミンカップ」。無観客、そしてインターネットによる4日間のライブ配信と話題の多かった大会だが、なかでもファンを興奮させたのが、渡邉彩香の5年ぶりの優勝だった。

最後に優勝した2015年、渡邉は賞金ランキング6位で日本人選手としては最上位。押しも押されもせぬ若手のホープで、将来が大いに期待されたものだ。しかし、2016年は賞金ランキング12位と健闘したものの、2018年には55位、2019年は115位とシードを落とし、成績は下降線を辿っていった。ファンもそれを知っているからこそ、見事な復活劇を賞賛したのだろう。

画像: 5年ぶりに優勝を果たした渡邉彩香(写真は2019年の日本女子オープンゴルフ選手権 撮影/岡沢裕行)

5年ぶりに優勝を果たした渡邉彩香(写真は2019年の日本女子オープンゴルフ選手権 撮影/岡沢裕行)

プロゴルフは、長期に渡って安定した成績を上げている選手がいる一方で、ある時期にまばゆい輝きを放った後、極度の不振に見舞われて、成績を落とす選手が少なくない。それは、一言で言えばスランプということになるが、ゴルフの場合は、その急降下の度合いが他のスポーツに比べても大きく見えるので、スランプには、なにか人生が終わったかのような悲壮感が漂う。

1991年に全英オープンを制したイアン・ベーカーフィンチは、メジャー優勝のあとスウィングイップスのような症状になり、メジャーで1R「92」を叩くなど、連続予選落ちのワースト記録を作る深刻なスランプに陥った。わずかな数年の間にメジャーチャンプが90打ってしまうのが、ゴルフの怖さでもある。

プロの世界で活躍している選手たちは、すべての技術が高度に作り上げられて、ツアーで戦うための緻密なチューニングがされた状態にある。なにか、ひとつかふたつ、その歯車が狂ってしまうと、全体がパカッと外れてしまったような状態になり、ゴルフ全体が大きく下降してしまう。

画像: 全英オープンを制したイアン・ベーカーフィンチもスランプに陥った選手のうちのひとりだ(写真は1987年のポラロイド杯ゴルフダイジェストトーナメント)

全英オープンを制したイアン・ベーカーフィンチもスランプに陥った選手のうちのひとりだ(写真は1987年のポラロイド杯ゴルフダイジェストトーナメント)

不振の原因は、スウィング改造の失敗、パッティングやアプローチのイップス、ケガやプライベートの問題など様々で、それらが複合的に作用することがあるから厄介だ。クラブ選びの失敗でスランプになる例も少なくなく、ボールとクラブを一度に変えてしまったために不振に陥ったという、ペイン・スチュワートの例は有名だが、近年はドライバーの急激な大型化に影響されて、調子を落とす選手も少なくない。

かつては、スランプになった選手を復活させるのは難しいと言われていた。事実、そのままツアーの舞台から消えてしまった選手も少なくない。しかし、近年はそんな状況から復活する選手も増えてきている。華々しいデビューの後、2015年にシードを落としながら復活し、有力選手として活躍する比嘉真美子や、復活優勝が6年ぶりとなった原江里菜や有村智恵、15年16年と圧倒的強さで2年連続賞金女王になりながら、2018年にはシードを落とし、昨年は復調気味だったイ・ボミなど、いわば一度外れた歯車を再び噛み合わせて復活する選手が増えているのだ。渡邉もそのひとりと言っていいだろう。

その理由として考えられそうなのが、計測器を含めたティーチング技術の発達や、トレーナーにつくことが当たり前となり、フィジカル面の改善が測れるようになったこと、スポーツカウンセリングの浸透など、復活するきっかけが増えたことだ。渡邉は現在のコーチについて、ちょうど一年だという。新たに取り組んだことが、それまでの技術やフィジカルコンディションなどと噛み合ってくると、プロゴルファーが復活できる時代になったと言えるかもしれない。

過去には、尾崎将司、そして中嶋常幸のビッグカムバックがあった。昨年のタイガー・ウッズによる11年ぶりのメジャー制覇は記憶に新しい。復活劇はプロスポーツの大きな魅力だ。今、不振に見える選手も再び輝く瞬間が訪れるかもしれないと思うと、トーナメントの見方もひと味変わってくるのではないだろうか。

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