男子ツアー「ダンロップフェニックス」はプレーオフの末、プロ転向したばかりの金谷拓実が優勝した。その模様を現地で撮影していたカメラマン・姉崎正がレポートする。

11月16日月曜日。日本のゴルフツアーで初めてのチャーター便が、羽田から宮崎まで運行されました。私はそれに搭乗するため、羽田空港第3ターミナルの2階でチェックインをして、搭乗口ターミナルまでバス移動し搭乗時刻を待ちます。

概ね知った顔(選手、キャディ、メーカー、メディア)で、なんだかちょっと修学旅行のような雰囲気ですが、当然全員マスクをして小声での会話と、ご時世なりにみんな気を付けています。

画像: プレーオフの末、惜しくも敗れた石坂友宏(左)

プレーオフの末、惜しくも敗れた石坂友宏(左)

石坂友宏プロとそこで遭遇。三井住友VISA太平洋マスターズにあと一人欠場者がでれば参戦できるウェイティング枠で待機していながら、出場を逃したことをねぎらい、「イケメンプロ、ダンロップフェニックスでがんばってね」と、21歳の学生プロに励ましの言葉を(ディスタンスを取りつつ)かけました。彼は「今週は、キャディがイケメンですから」と帯同キャディを笑顔で紹介してくれました。彼が2020年のダンロップフェニックスの台風の目になるとは、知るよしもない月曜の朝です。

長いダンロップフェニックス撮影の中で、今年は、変化がとりわけ大きな大会でした。コロナ渦中の開催で無観客はもちろんですが、海外からの招待選手が不在なことと同時に、この試合に出場し続けて、1994年からは3連覇を成し遂げ、男子ツアーを牽引してきたジャンボ尾崎さんの不在は時代の流れを否応なく感じさせました。

11月22日最終日。最終組の石坂、大槻智春、金谷拓実の3人が14番グリーンを終えると、ふたつ隣の18番フェアウェイにチャン・キムがやって来ました。トータル12アンダーでここまで来ています。昨年の日本オープンで痛い目にあった記憶(古賀GCの最終日最終ホールバーディでのチャン・キム逆転優勝を撮り逃す)が蘇り、急ぎ彼のもとへ向かいました。

パー5の18番は今まで多くのドラマを生んできたホールです。中でも1995年、ピーター・シニアを退け2連覇を成し遂げたジャンボ尾崎さんのイーグルは今でも色褪せず思い出せます(当時はモノクロフィルムで撮影していて写真に色は付いていませんでしたが)。

画像: 今大会5位タイでフィニッシュしたチャン・キム

今大会5位タイでフィニッシュしたチャン・キム

フェアウェイにチャン・キムのボールがあります。あれ、ずいぶん飛ばしているなぁ。でもチャン・ キムだしなぁ。と思いそのアイアンショットを撮ります。で、グリーンへ。イーグルパットなら首位と並ぶか。と、横にいたカメラマンに聞く所によると、どうやらティショットを林に入れるトラブルがあったらしい。このホールをボギーのチャン・キム。優勝はないでしょう。急ぎ16番グリーンへ向かいます。

13アンダーの稲森佑貴が16番グリーンにいます。最終組に付きたいが、先行するリーダーを追うのが最終日撮影の鉄則です。ここは稲森をマークし、ここから追いかけます。17番パー3のティショットは7番アイアンでナイスオンのバーディチャンス。今年の日本オープンチャンピオンが、ここでグッと優勝に手が届く所に来ました。

グリーン奥に回り込んでバーディパットを狙います。稲森、グッと唇を引き締めてのストロークです。あれ、ボールが止まる前に外したのが分かったのか歩き出しちゃった、パーです。 ああ、これで動きが難しくなった。17番バーディなら文句なく稲森マークでしたが、石坂と金谷が気になる。

画像: プロ初優勝を挙げた金谷拓実

プロ初優勝を挙げた金谷拓実

稲森の18番ティショットを捨ててもう一度17番ティへ。と、16番で金谷バーディ石坂ボギーの情報が入ります。この時点で13アンダーで3人がリーダーとなりました。大槻も12アンダーで食らい付いています。最終組の3人のティショットを撮り終えると、隣の18番フェアウェイの稲森のセカンドショットへ。

稲森の位置からは松の木の間からピンが見えます。フェアウェイウッドで放たれたボールは、松の枝に当たって左へ落下。これでバーディで締めることは難しくなりました。

そのため、また急いで17番グリーンへ。間に合うか。 17番では金谷がグリーン左からアプローチ。次は大槻のバーディパット。右手でボールの転がりをイメージさせる放り投げるような仕草のあとアドレスに入ります。外れた。がっくり膝を落とす大槻。キャディも膝を落として、残念。首位をとらえられず。

そして石坂、右手で持ったグリップに左手を添えてアドレスに入りました。さぁバーディトライで す。と、打つやと思いきやアドレスを解いた。ボールに虫でも付いたのか、はたまたなにかしっくり来なかったか。で、一瞬天を仰いで仕切り直しです。緊張感が伝わってきます。で打ちました、が、これも残念バーディならずのパー。

18番をともにパーで72ホールを終えて4度に渡るプレーオフに突入し、4度目のティショットを右の林に入れた石坂。ここで勝負合った、でした。1998年生まれの22歳の金谷と、1999年生まれ21歳の石坂の優勝争い。20代前半の優勝争いは、とうが立って満身創痍のカメラマンにも夢と希望を感じさせてくれました。

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