PGAツアー「WGCワークデイ選手権」を制したコリン・モリカワ。その勝利の裏には、メジャーチャンピオンたちからのアドバイスがあった! 海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポートする。

優勝賞金約2億円という、4大メジャーに次ぐビッグイベント「WGCワークデイ選手権」はツアー3年目のコリン・モリカワが、2位のビクトル・ホブラン、ブルックス・ケプカと3打差をつけ、逃げ切り優勝。昨年の「全米プロ」に続く、ツアー4勝目を飾った。

今大会の優勝により、フェデックスカップランキングは14位に浮上。メジャーとWGCの大会の両方で勝利を挙げている選手は、モリカワを含めて過去24人いるが、25歳以下で達成している選手はタイガー・ウッズとコリン・モリカワの2人だけである。

「誰がなんと言おうと、首位で日曜日を迎えるのはプレッシャーがかかるし、ナーバスになるものだ。でも再び優勝争いに加わり、優勝のチャンスが巡ってきたのはワクワクするものだね。しばらくそういう機会もなかったけど、これこそ僕たち選手が望むものだし、とにかく優勝したいんだ」

昨年の8月、「全米プロ」でメジャー初優勝を遂げた彼は、その後「全米オープン」「CJカップ」で予選落ちを喫した。彼は今、ツアーで最も安定感のある選手の1人であり、予選落ちの回数が極端に少ない選手として知られているが、今振り返ると「全米プロ」で優勝した後、自己満足に浸り、ゴルフに対して気持ちが疎かになっていたのだという。2試合の予選落ちが、彼のやる気に火をつけたようだ。

画像: ツアー通算4勝目を挙げたコリン・モリカワ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

ツアー通算4勝目を挙げたコリン・モリカワ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

「毎週毎週、ベストを目指したくはないという気持ちになっていた。別にきちんと練習していなかったわけではないんだけど……。だから(11月の)マスターズ前に気持ちをリセットした。12月中はずっと練習していたし、ヨーロピアンツアーにも何試合か出場した。今年がスタートする頃にはとてもいい感じに仕上がってきていて、あとはうまく噛み合えば、という感じだったんだ」

この、噛み合ってきていた彼のゴルフの断片を一つにまとめ、「WGCワークデイ選手権」優勝にまで導いたものは、大会前に受けた2人のメジャーチャンピオンからの貴重なアドバイスだった。「マスターズ」「全英オープン」でメジャー2勝を挙げているマーク・オメーラと、今大会の開催地であるコンセッションゴルフクラブのメンバーで、「全米プロ」チャンピオンのポール・エイジンガーである。

モリカワはラスベガスに居住しているが、マーク・オメーラもまた最近、フロリダからラスベガスに引っ越してきたばかり。モリカワはラスベガスのゴルフ場でオメーラに遭遇し、1時間ほどパッティングのアドバイスを受けたという。オメーラは長年「ソーグリップ(右手の人差し指、中指、薬指の3本を真っすぐ伸ばしてグリップの真上に乗せるグリップ法)」でパッティングしているが、これをモリカワも取り入れてみたところ、徐々にコロがりがよくなり、パットに対する自信を取り戻し始めたのだという。

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「(以前も)パットが決まって試合で優勝もしていたけど、自分が思うような安定感はなかったんだ。いい時もあれば、悪い時もあった。だが今では、ただスピードやライン、自分が狙ったところからいかにボールをカップインするか、ということに集中できるようになった。今ではパッティングに対して自信を持っているし、すごくしっくりきている。あちこちまだ修正するところはあるけど、だいたいにおいてとてもいい感じだし、こんなふうに感じたことは今までなかったよ」

マーク・オメーラは日頃から「パットは自信が全てだ」と語っているが、ソーグリップを取り入れたモリカワも、その大事な「自信」を取り戻した。以前はストロークゲインドパッティング部門で200位台だったのが、今大会を終えて191位に浮上している。

また、ポール・エイジンガーからはバミューダ芝でのアプローチ法、特にバウンスの使い方を習うことで、ヘッドをどう運べばいいのかのレッスンを受けたのだという。これが奏功し、「ストロークゲインド:アプローチ・ザ・グリーン」と「ストロークゲインド:ティ・トゥ・グリーン」で出場選手中1位に。思い通りに寄せ、パットを決められるようになった彼は、持ち前の正確なショット力と相まって、今まで以上に盤石なプレーが可能になった。

「ポール・エイジンガーと少し話をし、たくさんアプローチの練習を積んだことで、グリーンを外しても寄せワンで凌げるという自信がついた。今週は(エイジンガーの教えで)何度も助けられたよ。18ホールを積極的に攻めるには、寄せワンで凌げるという自信が何よりも必要なんだ」

彼のゴルフのモットーは、「積極的に、賢くプレーすること」であり、「精度の高いアイアンショット、ピンを狙うこと、いいフィーリングで打っている時、あるいは打ちやすい距離が残っている場合はフラッグを攻める」のが彼のゴルフの基本だと語る。

守りに入ろうとするとつい緩んでしまうという彼は、積極的に攻める気持ちを持ち続けることが大事だという。悪いショットを打っても、すぐに気持ちを切り替えて次はいいショットを打っていく、という心構えが、バーディを量産できるプレースタイルを生み、勝利を手繰り寄せる秘訣になっているともいえる。

画像: コリン・モリカワの最終日のプレーに後押しした最後の1人はタイガー・ウッズ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

コリン・モリカワの最終日のプレーに後押しした最後の1人はタイガー・ウッズ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正) 

最後にもう1人、モリカワの最終日のプレーを後押ししたメジャーチャンピオンがいる。先週、交通事故で重傷を負ったタイガー・ウッズだ。カリフォルニア生まれのモリカワにとって、「タイガーは全て」であり、小さい頃からのヒーローだった。タイガーに憧れている彼は、タイガーと同じエージェントに所属すれば、何かしら関わりを持てるのではないか? と思ったと以前語っていたくらいの大好きな憧れの選手である。

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だから最終日は、ロリー・マキロイやトニー・フィナウら多くの選手のように、赤いポロシャツに黒のスラックスというタイガーの最終日スタイルで臨みたいと思った。実際、全出場選手の20%が、赤シャツ+黒スラックスという出で立ちでプレーしたという。しかし、悪天候による宅急便の遅延で、最終日の朝になってもモリカワの「タイガーウエアセット」は届かない。キャディにも近所の配送センターまで見に行かせたが、荷物が届くことはなく、最終日のプレーを開始しなければならなかった。

だが彼はその代わりに、「タイガーのようにプレー」することにした。過去、タイガーはWGCの試合で18勝しているが、その半数の試合の最終日を首位で迎えている。モリカワはWGCへの出場は3回目で、首位で最終日を迎えるのは初めてだったが、過去にタイガーがWGCでプレーしていた時のことを思い出しながら、自信を持って首位として振る舞い、自分のプレーに集中。4バーディ、1ボギーの69で回り、WGC初優勝を飾った。

あと1ヶ月後には今年初の男子メジャー「マスターズ」が開幕する。高速グリーンのオーガスタで特に重要な「ショートゲーム」に自信を取り戻したモリカワなら、メジャー2勝目も遠くはないだろう。

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