今季最後の海外メジャー、全英オープンを制したコリン・モリカワ。24歳にしてすでにメジャー2勝を誇る彼の素顔を、海外ツアー取材歴20年の大泉英子が、その横顔とともにレポート! 実はタイガー級にすごい!?

2つのメジャーで「初出場・初優勝」は史上初の快挙

2019年6月にプロ転向し、翌年の2020年に初出場した「全米プロ」でメジャー初優勝を遂げたコリン・モリカワ。今回、タイガー・ウッズもなし得なかった大記録を樹立した。ロイヤル・セントジョージズGCで2年ぶりに開催された「全英オープン」で初出場、初優勝を飾ったのだ。2つのメジャーで初出場、初優勝を飾ったのは、ゴルフ史上、コリン・モリカワだけである。

さて、そもそもコリン・モリカワとはどんな人物なのか? 

彼は2019年6月にプロ入りし、今年で3年目を迎える24歳。マシュー・ウルフ、スコッティ・シェフラー、ビクトル・ホブランなど、現在ツアーで台頭している同年代の若手選手の筆頭格だ。カリフォルニア州ロサンゼルス出身で、ハワイ出身の日系アメリカ人の父と、中国系アメリカ人の母を持つ。カリフォルニア大学バークレー校に通い、大学在籍中は世界アマチュアランキングで1位に輝いたこともある。

画像: 全英オープンを制したコリン・モリカワ(写真はGettyImages)

全英オープンを制したコリン・モリカワ(写真はGettyImages)

性格はとても温厚で、冷静。自身も「同い年の人よりも大人びていると思う」と自覚している。分別のある大人として行動したいそうだ。そして両親からは「誰であれ、他人を敬いなさい」と教えられてきた。おかげで取材の際も、親切でやりやすい。もちろん、練習中いつでも取材OKというわけではないが、きちんとこちらのリクエストを聞いてくれ、真摯に答えてくれる。そして、爽やかに白い歯を見せながら、人懐っこい笑顔で取材を終えるのだ。

そして彼には学生時代から交際している、キュートな中国系アメリカ人のガール・フレンド、キャサリン・ズーさんがいる。彼女は常に試合に帯同しているが、「全英オープン」にはイギリスへの入国の制限が厳しいからか、現地に不在のようだった。彼がプロ入りし、新人として不慣れなツアーを転戦する中で、ゴルフのことをよく理解しつつも、コースを離れれば気分転換させてくれる大事な存在だ。まだ結婚するという話は聞かないが、ラスベガスで同棲している。

話を戻そう。

メジャー2試合で初出場、初優勝を遂げたことに対し、記者から「歴史を作った感想は?」と優勝直後の会見ですぐさま聞かれると、彼は次のように答えた。

「僕はまだ24歳だし、プロ入りしてからの2年間から、自分がやってきたことを振り返るのは難しいですね。なぜなら僕はもっと今この瞬間を楽しみたいし、大好きなひとときだから。ゴルフが大好きで、世界で最強の選手たちと優勝争いをしたという瞬間をじっくり振り返りながら、お酒でも飲みたいです」

まだ年齢的にも若いし、プロ入りして2年しかたっていない。だから、「前人未到の歴史」を築き上げたという実感は湧いていないのかもしれない。あるいは過去を振り返る気分でもないのかも……。それよりもむしろ、世界の大舞台で世界の強豪とメジャーで戦い、優勝できたという「今」の余韻に浸りたいというのが本音なのだろう。 

タイガーはデビューを飾った翌年の1997年に「マスターズ」でメジャー初優勝を飾っているが、メジャー2勝目を達成したのは1999年「全米プロ」でのこと。ここのところ、新型コロナウイルスの影響を受け、メジャーを含むトーナメントの開催日程が大幅に変更されているが、そんな中でもモリカワはメジャー初優勝から1年未満でメジャー2勝目を挙げた。タイガー同様、カリフォルニア州で生まれ、子供の頃からタイガーに憧れていたモリカワだが、プロ入り後は、タイガーと少しでも繋がりが持ちたいと、同じマネージメント事務所に所属している。しかし一方で、「タイガーがやっていないことを自分はやりたい」という野望も抱いていた。そのうちの一つが、今回かなったのだった。

さらに、今回の優勝で彼は他にもいくつかの記録を樹立している。

【1】過去100年間で、25歳以前に複数回メジャー優勝を達成した8人目の選手(ジーン・サラゼン、ボビー・ジョーンズ、ジャック・ニクラス、セベ・バレステロス、タイガー・ウッズ、ローリー・マキロイ、ジョーダン・スピース、コリン・モリカワ)

【2】1934年以来、8戦2勝という、メジャー最速優勝選手(ボビー・ジョーンズ以来2人目)

【3】1900年以来、「全英オープン」で初出場・初優勝した7人目の選手(ジョック・ハッチンソン、デニー・シュート、ベン・ホーガン、トニー・レマ、トム・ワトソン、ベン・カーティス、コリン・モリカワ)

【4】「全英オープン」「全米プロ」の2大会で25歳以前に優勝した2人目の選手(タイガー・ウッズに次ぐ)

身長175センチ、体重73キロという、日本人男性と同じような体格の持ち主で、平均飛距離は294.3ヤード(ツアー116位)というモリカワは、弱冠24歳にして以上のような、ゴルフ界のレジェンドと肩を並べるほどの記録を築き上げつつあるのだ。

また、彼は「連続予選通過記録」でもタイガー・ウッズの25回に次ぎ、2位の22回という記録を保持している。しかも2019年6月にプロデビューを飾った「RBCカナディアンオープン」から数えて22試合、である。まだツアーや開催コースのこともわからない、プロゴルファーとして転戦することにも慣れていない新人の彼が打ち立てた記録だ。

タイガー・ウッズほどの迫力や人気はないかもしれない。だが、彼にはジュニア時代から培ってきた豊富な競技経験や知識が既に備わっており、メジャー2勝を挙げた今、自信をつけてさらに大きく飛躍しようとしている。子供の頃から技術面、精神面で指導を受けているコーチ、リック・セシングハウス氏も彼にとって大きな存在だ。

彼が今後、長いゴルフ人生をかけてコツコツと築き上げていく記録の中には、タイガー・ウッズ、あるいはゴルフ殿堂入りを果たしているレジェンドたちの記録を更新するものもいくつか出てくるだろう。今後も、日系人モリカワの活躍に期待したい。

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