雨の日や雨が降ったあとのラウンドではフェース面が濡れた状態でショットを打つ場合もある。ではフェースが乾いている状態と比較して、具体的にどれだけショットのデータに差異が生まれるのか。プロゴルファー・堀口宜篤に、ドライバー、7番アイアン、ウェッジで比較検証してもらった。

屋外でプレーするゴルフは、天候も大きな要素の一つ。とくに雨の日やその翌日、芝にまだ水分が残った状態でのゴルフでは、ショットに少なからず影響してくる。フェース面が濡れた状態の場合、インパクトの瞬間にボールとフェース面の間に水分があることで摩擦力が低下し、スピン量が減ってしまうのだ。

では実際のところ、フェース面が乾いた状態と濡れた状態で、どれくらいスピン量に差が生まれるのか。ドライバー、7番アイアン、ウェッジでそれぞれプロゴルファー・堀口宜篤に打ってもらい、検証を行ってみた。

なお、今回の検証は屋内施設での検証となるため、ボウルに貯めた水にクラブヘッドを浸けてから、そのままスウィングすることで雨の日にフェースが濡れた状態を再現。ドライバーにはキャロウェイ「エピックマックスLS」の9度、7番アイアンはキャロウェイ「XフォージドCBアイアン」(33度)、ウェッジはピン「グライド3.0」(56度)を使用した。

ウェッジではスピン量が約2200回転も低下

まずはもっともスピン量が重要となるウェッジから検証を始めた堀口。まずフェース面が乾いた状態での試打結果は以下のようになった。

【ウェッジ(フェースが乾いた状態)の試打結果】
スピン量9850.3回転 キャリー93.7Y トータル93.7Y 打ち出し角29.9度

続いてフェース面を濡らした状態で試打した結果は以下の通りだ。

【ウェッジ(フェースが濡れた状態)の試打結果】
スピン量7602.3回転 キャリー98.3Y トータル104Y 打ち出し角31.8度

「まず打った瞬間、感触が違い過ぎて焦ってしまうくらい、明確に違います。濡れた状態でのショットは、フライヤーを打ってしまったときの感触に近いでしょうか。飛距離も伸びてしまっていますし、スピン量も約2200回転ほど落ちていて、トータル飛距離に10ヤード以上のズレが出てきてしまっています。グリーンを狙いたいウェッジでのショットでこのズレは致命的と言えるでしょう」

画像: ウェッジの場合、フェースが濡れた状態ではスピン量、飛距離ともに大きな影響が出た

ウェッジの場合、フェースが濡れた状態ではスピン量、飛距離ともに大きな影響が出た

ウェッジショットのときは、直前までフェース面を濡らさないようにすることが必要なようだ。

7番アイアンだとどうなる?

続いては7番アイアンでの検証結果を見ていこう。

【7番アイアン(フェースが乾いた状態)の試打結果】
スピン量5757回転 キャリー159.3Y トータル168.7Y 打ち出し角18.1度

【7番アイアン(フェースが濡れた状態)の試打結果】
スピン量6181回転 キャリー152Y トータル160.7Y 打ち出し角19.4度

「当たったときにフェースに食いついている感触がなく、すぐ離れていっている感じがします。7番アイアンについては平均値を取ると、打ち出し角がわずかに上がり、スピン量もそこまで大きな変化がなかった一方で、飛距離は減少している結果です。ウェッジと同様に致命的なミスの原因になるような数値が出るかと思ったのですが、大幅に数値が変わるということはありませんでしたね」

画像: 7番アイアンの場合は平均値こそフェースが乾いた状態から大幅な変化はなかったものの、飛距離や打ち出し角が安定しなかった

7番アイアンの場合は平均値こそフェースが乾いた状態から大幅な変化はなかったものの、飛距離や打ち出し角が安定しなかった

ただし、平均値ではなく検証の際のショットのデータを1球ずつ見ていくと、平均してスピン量の大幅な低下がみられたウェッジに対し、7番アイアンの場合は打ち出し角が16~20度の間で安定せず、それによってトータル飛距離も156~173ヤードと大きなブレ幅があった。

「ウェッジほど致命的ではないにせよ、アイアンに関しても番手間のタテの距離感覚は確実に狂ってしまいそうですね。またウェッジにも言えることですが、実際のラウンドの際は雨などによって地面もぬかるんでいますから、もっと影響は大きくなりそうです」

ドライバーの場合はむしろメリット?

最後にドライバーの場合はどうだろう。まずフェース面が乾いた状態での試打結果は以下のようになった。

【ドライバー(フェースが乾いた状態)の試打結果】
スピン量2253.3回転 キャリー242Y トータル265.7Y 打ち出し角11.2度

続いてフェース面を濡らした状態で試打した結果は以下の通りだ。

【ドライバー(フェースが濡らした状態)の試打結果】
スピン量2064.3回転 キャリー248.7Y トータル271Y 打ち出し角12.9度

「フェース面が濡れた状態のほうがスピン量が約200回転ほど減少し、飛距離に関しても伸びています。実際に打っていても、ウェッジでは致命的に感じたボールが飛び出ていく感触がドライバーではむしろプラスに働いているように感じますね」

画像: ドライバーの場合はフェースを濡らすことでスピン量が減り、飛距離が伸びるという結果に

ドライバーの場合はフェースを濡らすことでスピン量が減り、飛距離が伸びるという結果に

これはドライバーはそもそもなるべく遠くまで飛ばしたいクラブであることももちろんそうだが、なにより「短い距離を狙う番手と比べ飛距離のブレが致命的なミスになりにくいこともプラスに働く理由の一つだと堀口は言う。

「実際、計測器がない一昔前の時代にも雨の日はドライバーのフェースが濡れていたほうがスピンが減ってよく飛ぶ、ということは言われていましたし、計測によって明確に数値化されずとも『たしかに飛んでいる』という実感がありました。ただ、昔のドライバーってフェース面に溝がしっかり入っていましたが、最近のモデルだとアライメントとしてプリントされているだけ、という場合もあるので以前ほど露骨に影響してくることはなさそうですね」

ただし、スウィングタイプやもともとのスピン量によっては「スピンが減少し過ぎてドロップの危険もありますし、スピンがかからない=弾道のコントロールができないので、ドライバーであっても基本的にはしっかり水分を拭き取ってから打つのが良いと思います」と堀口。

水に限らず砂や泥でも同じような現象が起きてしまうため、とくにウェッジやアイアンなど、地面から打つ機会が多く汚れが残りやすい番手に関しては「こまめな清掃を忘れずに行ってください」という。

「ただ、今回僕が検証したように、フェースが濡れていると自分の場合どれだけショットの結果が変わってしまうのかを把握しておくことは大切です。どれくらい転がってしまうのかというイメージがあるだけでも、不意の雨への対応のしやすさが変わりますよ」

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