ツアーモデルから飛び系まで数種類のラインナップを引っさげて発売されるニューモデルのアイアン。一体どれを選んだいいのか? ギアライター高梨祥明が語る、選び方のコツ。

2番手ロフトが立っているのにボールを高く打ち出せる理由

多品種展開でいざとなると購入候補の絞り込みに迷ってしまう「最新のアイアン事情」について触れてみたい。

アイアンというとマッスルバックやキャビティバック、中空などとそのヘッド構造に注目が集まり、最近ではそのロフト設定で“性格”を判断されることも多い。極めて単純だが、ロフトがストロング(少ない/#7でロフト26°前後)になっていれば、飛び系アイアン。

従来ロフト(#7でロフト35°)に近ければコントロール系というものだ。そして、飛び系はレジャー志向の一般アマチュア、コントロール系はツアープロを筆頭にしたエリートゴルファーが使うもの、という“イメージ”もかなり定着している。

画像: 今秋発売のNEWタイトリスト Tシリーズアイアン。「T100」「T100・S」だけでなく、「T200」も伝統的でコンパクトなツアーシェイプに生まれ変わった。すっきりした外観のぶん、内部構造や素材の組み合わせでパフォーマンスをアップしているのが特徴

今秋発売のNEWタイトリスト Tシリーズアイアン。「T100」「T100・S」だけでなく、「T200」も伝統的でコンパクトなツアーシェイプに生まれ変わった。すっきりした外観のぶん、内部構造や素材の組み合わせでパフォーマンスをアップしているのが特徴

ゴルフクラブにまつわる定説には、少し立ち止まって考えると「?」と思えるようなことも多いが、アイアンのロフト設定についてもそうだろう。ヘッドスピードが遅く、ボールが上がらずにキャリーを出せていないアマチュアに対し、どうして従来よりも2番手ロフトが立っているモデルを推奨するのか? そんなことをしたら余計に上がらなくなって、もっと飛ばなくなるではないか! でも、そうならないから不思議なのである。

実際にストロングロフトアイアンを打ってみれば、意外に高くボールを打ち出すことができることがわかるはずだ。これがいわゆる低重心・深重心設計といわれるものの効果である。実際の飛びはロフトだけでは決まらない、ということだ。

ロフトだけに注視していると、今の7番アイアンのロフトは昔の5番相当だから、2番手飛んで当たり前という「説」を唱えたくなるが、昔の5番よりはるかにヘッドが大きく、やさしく感じるのが今の7番である。

何をもって5番や7番とするのかは決め方ひとつだが、たとえばヘッド重量をアイアン番手の基準においてみると納得しやすいかもしれない。5番よりも7番のほうが一般的には10〜15g重たくてよく、それだけ設計自由度が高いことになる。5番と同じロフトでも、7番用ヘッドのほうがサイズを大きくしたり、ウェイトを後方に配したりしやすいのである。慣性モーメントだけでなく、重心設計もしやすいのが重たくてよい7番ヘッドの利点なのだ。

ついでに言うと、7番と同じ設計で、5番や3番が作れるかといえばそうではない。軽いヘッドで重たいヘッドと同じことをしても、単に性能の低いものになってしまうだけだからだ。ロングアイアンをラインナップするならば、昔のようにまずロングアイアンの打ちやすさに焦点を当て、その基本設計をミドル、ショートとフローさせていったほうがやりやすい。軽いヘッドの基本設計を重たいヘッドに組み込んでいくのは簡単なのだ。

ロングアイアンでの打ちやすさが段違い。進化を続ける“ハイテク”ツアーアイアン

小さいヘッドで許容性を高めていこうとすると、ものすごく複雑なヘッド構造になる。タイトリストのTシリーズがそのいい例だろう。このほど9月24日の発売が発表された新しい「T100」「T100・S」「T200」は、“ツアープロファイル”と呼ばれるブレード長の短い、マッスルバックと同じようなシェイプとヘッドサイズが特徴。

その小さいサイズの中でとくにロングアイアンでの許容性を高めるために、いくつもの金属を複合し、ヘッド内部に高比重タングステンを精密配置するなど、すっきりとした見た目からは想像もできない先進的な技法で生み出されているのである。

「T100・S」は「T100」よりも2度ロフトが立っているが、実際に打ってみると高さ的にはその違いを感じることはまったくなかった。打ち出し角、飛距離、許容性を決めるのは、ロフトだけではない。重心設計の影響が大きいのは明らかだ。

だからこそ、我々はアイアンを自分で打ってたしかめるべきである。人が打って何ヤード飛んだ!という情報はあまりアテにならない。自分のイメージした高さ(キャリー)が出るのか、落ちたところにしっかりと止まってくれるのかを自ら確認することが大事である。

最後に、低重心のディスタンス系モデルは高弾道だが、ロースピンのためグリーン上に止まりにくい傾向があることも頭には入れておきたい。ドライバーのような飛距離アップをイメージしないことも、アイアン選びの重要なポイントである。

写真/高梨祥明

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