バウンス角が大きいウェッジはやさしく、ローバウンスのウェッジはプロ向き……そういうふうに考えるのは一般的と言っていいだろう。しかし、ギアライター・高梨祥明は、そもそものソールの形状、そしてゴルファーの構え方によって一概には言えないと語る。ウェッジの底にまつわるちょっとディープな話を聞いてみよう!

バウンス4°でも十分に“効果”を感じたミズノT22 グラインド

過日、ミズノのニューウェッジシリーズ「T22」を試打する機会に恵まれた。このシリーズは大まかには4つのソールグラインド(S、D、C、X)があり、プレースタイルによって最適なバウンス効果を選択できるシステム。Sグラインドがもっともバウンス効果が高く、D→C→Xグラインドの順にトウ・ヒール、センター部のバウンスが抑えられ、フェースを開くアプローチに対応していくイメージになる。

たとえばロフト58度モデルで各グラインドのバウンス角表示を比べると、S /16度、D/12度、C/8度、X/4度となる。Xグラインドのバウンス4度は、表示を目にしただけでもリーディングエッジが刺さるのではないか? 難しそうだ! と決めつけたくなるほどのローバウンス。一方、Sグラインドはバウンス16度もあって、極めてやさしそう。地面が硬いと“跳ねる”のではないか? と思われかねない超ハイバウンスだ。バウンス角表記だけで判断すれば、そんな感じ。多くのゴルファーがそう思ったのではないだろうか。 

画像: ミズノのニューウェッジ「T22」の58度・Xグラインド(バウンス角4度)モデル

ミズノのニューウェッジ「T22」の58度・Xグラインド(バウンス角4度)モデル

しかし、実際に芝生の上から打ってみると、感じられるバウンス効果はまったく額面通りではなかった。あくまでも私が自分のやりやすいアプローチスタイルで打ち比べたところ、もっともローバウンスなはずのXグラインド/ロフト58度/バウンス4度モデルでも、しっかりとソールが地面に当たって滑ってくれる感があり、十分なやさしさを体感することができた。

むしろ、もっともハイバウンスでお助け要素の強いはずのSグラインド/ロフト58度/バウンス16度のほうが、若干地面に深く潜る感じがしたのが意外だった。実際にディボット跡も深く、スムーズにヘッドが抜けていかない感があったのだ。

これはあくまでも、筆者の試打感に過ぎない。打ち手によって評価は様々である。ここで言いたいのは、バウンス角「表示」と実際にゴルファーが感じるバウンス「効果」には、アプローチスタイルや構え方によってイコールとならない面があるということ。打ち方によっては、バウンス4度は難しい!と決めつける必要はないということだ。

バウンス角度とバウンス効果は違う実効的バウンスという考え方

ローバウンスはバウンス効果が弱く、ハイバウンスは効果が強いというのは、もちろん間違った解釈ではない。しかし、これはひと昔前の解釈といえないこともない。なぜなら、現在は各ブランドともに多様なソール形状(グラインド)をラインナップしているからだ。

過去のようにソール形状がワンパターンしかなければ、バウンス表示が小さいほうが文字通りバウンス効果は低くなったが、現在はソールの幅やソールの面の丸み、トウヒールの落とし方まで形状は千差万別。単純にリーディングエッジからソールの頂点までの角度を測って「バウンス角」を表記したところで、実際の“効果”とはイコールにはならないのだ。

画像: 一番右はもっともローバウンスモデル(バウンス4度)だが、ソール幅が広く丸みがあるため表記以上にバウンス効果が感じられやすい。一番左は16度バウンスだがソール幅が狭く平らなためハンドファーストに構えやすい。こう構えてしまうとバウンス効果が生まれにくくなる

一番右はもっともローバウンスモデル(バウンス4度)だが、ソール幅が広く丸みがあるため表記以上にバウンス効果が感じられやすい。一番左は16度バウンスだがソール幅が狭く平らなためハンドファーストに構えやすい。こう構えてしまうとバウンス効果が生まれにくくなる

現在、ツアーウェッジの世界を圧倒的な使用率でリードしている、タイトリスト ボーケイ・デザインウェッジの生みの親、ボブ・ボーケイ氏は“バウンス”についてこう表現している。

「私がスタッフたちによく言うのは、スケールで測ったバウンスの角度と、我々が提供したい“バウンス”は同じではないということです。実際のショートゲームでゴルファーの助けになるのは、角度ではなく山のように盛り上がった出っ張りそのもの。それがバウンスです。計測した角度が小さくても、しっかりとソールに出っ張り部分があれば、実効的バウンス効果が高い、やさしいウェッジになるのです」(ボーケイ氏)

ソールの幅を広くしただけでも、あるいはソールに強い丸みを付けただけでも“バウンス”効果は大きくなる。ワイドソールやキャンバーソールが地面に潜りにくいのはそのためだ。角度は測れば出てくるが、大事なのは角度ではなく“出っ張り”そのものの効果。これがなければどんなハイバウンス表示のウェッジでも、狙った効果を生み出すことはできないのだ。

たとえば、フラットな面でソールの盛り上がりはないがソール後方(トレーリングエッジ)にかけて急角度になっているウェッジでは、計測上バウンス角度は非常に大きくなるが、ソールの座り的にハンドファーストに構えやすく、結果としてバウンス効果が得られにくくなってしまうことが多い。バウンスが18度あろうが、18度ハンドファーストに構えれば、ソールの出っ張りは“ゼロ“となってしまうのだ。つまり、構え方ひとつでバウンス効果は使えなくなってしまうということだ。

画像: 簡単に言えば地面の上にシャフトを垂直にして構えたときのリーディングエッジから下のソールの出っ張りがバウンス。これだけ浮いても実際は芝生の上の浮いているボールを打つので問題はない。むしろリーディングエッジが浮かないよう構える=バウンスをゼロにするほうが問題

簡単に言えば地面の上にシャフトを垂直にして構えたときのリーディングエッジから下のソールの出っ張りがバウンス。これだけ浮いても実際は芝生の上の浮いているボールを打つので問題はない。むしろリーディングエッジが浮かないよう構える=バウンスをゼロにするほうが問題

正しくバウンス効果を評価したいならば、アドレス時にシャフトのアングルを垂直にしてセットアップすることをおすすめしたい。この状態で構えたならば、どんなウエッジでも正しくバウンス効果を発揮しやすくなっている。硬い床にセットしたならばリーディングエッジが少し浮いている状態が正しいセットアップである。リーディングエッジの浮きをなくそうとアドレスでシャフトを目標側に倒していく(ハンドファースト)と、バウンスは“ゼロ”になっていく。ハイバウンスだろうがこう構えてしまえば意味なしである。

写真提供/高梨祥明

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