――素振りのスウィングは綺麗なフォームでスムーズなのに、実際のスウィングになるとフォームもリズムも変なスウィングになってしまうという人は多い。なぜそうなってしまうのか、理由を教えて欲しいという声に応えて二人で話し合うが、いきなり合田から驚くべき発言が!
合田:要するに、素振りのようにどうして打てないかということなんでしょ。でもね、素振りのように打ってもダメなんですよ。俺の素振りはいいんだぜ、なんて思っているのは『まぼろし~』なんです。
卯木:でも、アマチュアの人に素振りをしてもらうと、実際に打つよりも綺麗なスウィングをしていませんか。
合田:確かにスムーズには振れてはいますよね。でも、素振りの時のフェース面のポジションなんかは正しく合っていないですからね。
卯木:なるほど。ただ何となく振ってちゃダメということですか。
合田:そう。だいたいの人が適当に振っていますからね。
卯木:ということは、「素振りはいいスウィングなんですよ」というのは……。
合田:それは自分で自分を慰めているだけ。
卯木:それは悲し過ぎます。
合田:でも冗談じゃなく、「素振りのいいスウィングは幻」っていうことを証明できるんですよ。
――そのために用意するものは紙コップ。そしてこの紙コップを上から覆い被せてボールを見えないようにすれば、準備完了だ。
合田:素振りでいいスウィングができるのに、実際にボールを打つ時にそれができないというのは、ボールがそこにあるというのが関係しているわけでしょ。だったら、このコップでボールを隠してしまえばいいわけですよ。

素振りと実際のスウィングとの違いは、ボールが見えているかどうか。そこで、ボールを覆い隠すように紙コップを被せ、プレッシャーを感じない状態で打ってみよう
卯木:ボールが見えない状態にするわけですね。
合田:そう。ボールじゃなくて紙コップを打つんだったら、素振りと同じ理屈なんだから、いいスウィングができるわけだよね。それで打ったコップの中のボールがちゃんといい打球となって飛ぶかどうかをチェックすれば、「いいスウィングが幻」か「現実」かが分かるというわけさ。
卯木:なるほど。
合田:じつはね、僕がツアーに出ていた頃に高橋勝成さんに「素振りみたいに振りたいんですよ」と言ったら、このコップを被せた検証をやらされたんですよ。僕が打ったらロクな球しか出ないんだけど、勝成さんが打つとスパーんと素晴らしい球が出るんです。それで勝成さんから、「お前はじつは素振りもよくないんだよ」って言われた経験があるわけですよ。
卯木:そうだったんですね。
合田:じゃあ、卯木さん打ってみようか。
――卯木はまずコップだけを打つ。するとコップは、センターやや右方向に飛ぶ。
合田:今のスウィングは自分的にはどう?
卯木:まあ、ナイススウィングですかね(笑)。
――次にボールに紙コップを被せたものを打つ。結果は、コップとボールは先ほどと同じ方向に飛んでいった。
合田:ナイススウィング! まあ、レッスンプロだからね(笑)。でもアマチュアの人がやると、こうならない。普段、スライスに悩んでいる人は、やっぱりボールは左に出ていくわけですよ。だからスウィングのパターンはそうそう変わらないわけですよ。
卯木:そういうことなんですね。
合田:でもこの検証はドライビングレンジとかじゃできないけどね。
卯木:ここのような弾道測定機器が置いてあるインドアのスタジオなんかでやってもらえればできるんじゃないですか。
合田:そうね。
――最後に、多くのアマチュアが素振りは良いスウィングだというのは幻説を説明する。
合田:ほとんどのアマチュアの人が素振りもアウトイン軌道でカットスウィングになっているんですよ。
卯木:でも私がさっき言ったように、アマチュアの人も素振りはいいスウィングに見えるんですよ。
合田:それはね、リズムがいいだけなんです。でも軌道はカットになっていますよ。
卯木:そうか。ボールがないと当てにいく動きがないから、スムーズに振れているように見えるけど、軌道自体はカットに振っているということなんですか。
合田:その通り。だから結局は、素振りがいいスウィングだというのは「幻」を見ているということなんだよね。
―-これからは、「幻」とならないように、素振りの時は軌道も考えながらナイススウィングを意識してクラブを振るようにしよう!
協力/Gスタジオ八丁堀