ボストンにほど近い名門ザ・カントリークラブを舞台に熱戦を繰り広げた全米オープンは13年にこのコースでイングランド勢102年ぶりの全米アマチャンピオンとなったマシュー・フィッツパトリックが栄冠に輝いた。同じコースで全米アマと全米オープンを制したのはジャック・ニクラス以来史上2人目。そこにはベテランキャディとの絆の物語があった。

最高峰メジャーの最終日、会場を大いに湧かせたのは我らが松山英樹だ。3日目ノーバーディに終わり17位タイと馬群に沈んだが最終日は4日間を通してのベストスコア『65』(しかもノーボギー)と爆発し単独4位に食い込んだ。

通算3アンダーでクラブハウスリーダー(ホールアウトした選手のトップ)となった時点で首位とは2打差。万が一プレーオフになった場合に備え「少し待ってみます」と戦況を見つめた。しかしフィッツパトリックが15番でバーディを決め6アンダーまで伸ばしたところでレクサスに乗り込み手を振りながら会場を後にした。

画像: フィッツパトリックが全米オープンを制す。先に泣き出したキャディのフォスター氏と喜びを分かち合う(写真は2022年の全米オープン 撮影/Getty Images)

フィッツパトリックが全米オープンを制す。先に泣き出したキャディのフォスター氏と喜びを分かち合う(写真は2022年の全米オープン 撮影/Getty Images)

その15番のフィッツパトリックのバーディが凄かった。ティショットを大きく右に曲げ本人思わず「フォワーと叫びそうになった」というが、ギャラリーが踏み固めたベアグランドから残り220ヤードを5番アイアンで6メートルに寄せてバーディ。「2打目は生涯最高のショットのひとつだった」と単独トップに浮上した。

最終ホールでは厄介な左のバンカーに捕まり何かドラマが起きるかと思われたが素早く決断。9番アイアンで「思った通りの球が打てた」とグリーンに運びあっさりタップインパー。最終組を一緒に回ったウィル・ザラトリスがバーディならプレーオフという場面で彼が放った「カップの20センチ手前までは完全に入ったと思った」パットが無情にも外れ先にウィニングパットを決めていたフィッツパトリックが優勝。

その瞬間先に泣き出したのはキャディのビリー・フォスター。故セベ・バレステロスやリー・ウェストウッドなど欧州のスーパースターたちのバッグを担いで30勝以上を挙げてきたベテランだがなぜかメジャーだけは無縁。帽子のつばで顔を隠しフィッツパトリックに肩を抱かれ感涙にむせぶ姿に思わずもらい泣き。

「ビリー(フォスター)にとってメジャーは悲願。彼にとってはすべてといっていいくらい価値がある。僕も信じられない。宇宙の果てに飛んでいったような気分。明日引退しても悔いがない」とフィッツパトリック。

最終ホールのバンカーからのスーパーショットも狙う方向や弾道などフォスターの細かいアドバイスがあったからこそ実現できた。ナイスアシスト! 4年前からバッグを担いでくれた相棒が最高の仕事をしてくれた。

13年に全米アマチャンピオンに輝いたときと同じ宿に泊まりホストファミリーの愛情に包まれて過ごした1週間。「メジャーに勝つのは本当に難しい。年に4回しかないんだからそこに合わせるのは至難のワザです。でもだからこそ価値があるし自信になる」。

大好きなサッカーは観客の声援が凄い。
「ゴルフはそういうゲームじゃないけれど18番ではスタジアムのような大歓声に包まれゾクゾクしたよ」

「18番の(フィッツパトリックの)セカンドショットは全米オープンの歴史に残る1打。あそこからバーディも狙える位置につけたんだから脱帽。悔しいけれど素晴らしい戦いだった」と1打差で敗れたザラトリス。

今回の全米オープンは記録と記憶に残るメジャーだった。

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