ジュニア時代から強かった植竹希望がとうとう初優勝を挙げた。彼女の強烈なタメのあるスウィングを東大ゴルフ部監督で日本におけるプロコーチの草分け的存在、現在、成田美寿々、穴井詩らのコーチを務める、井上透が解説!

今季、バンテリンレディスオープンでツアー初優勝を挙げた植竹希望選手は、女子プロらしからぬ超効率スウィングが特徴です。

 ひと昔前の女子プロと言えば、ゆったりとしたリズムで、体重移動(左右動)が大きく、オーバースウィングで打つ選手が大半でした。
 しかし、植竹選手は、左右動を抑え、速いリズム、早い切り返によって、非常にコンパクトでキレのあるスウィングを実現しています。

 圧巻は、ダウンスウィングのシャローイング動作(クラブを体の後ろに倒していく動き)と、大きなタメです。これは体幹の強さ、手首の柔軟性など、様々な条件が揃った結果と言えますが、ここまでのシャロースウィングは、男子プロでもほとんど見ることがありません。
このタイプの代表はセルヒオ・ガルシアですが、シャローの度合い(入射角度の緩やかさ)で言えば、彼をしのぐレベルではないでしょうか。その結果、低く長いインパクトゾーンが実現され、ショットの正確性が確保されているのです。

 一般的に、スウィングがコンパクトになるほど、飛距離は出にくくなります。しかし、植竹選手の場合、切り返しにおける左つま先方向への強い踏み込みから、左脚伸ばし、地面反力を利用することで、クラブを加速させ、スピードと飛距離を確保しています。
 動きは小さいけれども、体全体でエネルギーを生み出すことで、パワーを担保し、飛距離と方向性を両立させている。正直、効率性という観点から見ると、彼女のスウィングは、理想的と言えるでしょう。

画像: ダウンスウィングで体の後ろにクラブを倒し大きなタメを作る。そこから強い踏み込みと絶対に左に流れないよう頭を残すことでスピードと飛距離を生み出している(写真は2021年 ニチレイレディス 撮影/大澤進二)

ダウンスウィングで体の後ろにクラブを倒し大きなタメを作る。そこから強い踏み込みと絶対に左に流れないよう頭を残すことでスピードと飛距離を生み出している(写真は2021年 ニチレイレディス 撮影/大澤進二)

 とはいえ、このシャローでタメのあるダウンスウィングは、男子プロでもなかなかマネはできないと思います。そこで参考にしてもらいたいのは、ダウンスウィングのクラブの角度と、インパクトの手元の高さの関係です。
 基本的に、インパクトの手元の高さというのは、ダウンスウィングのクラブの角度に比例します。クラブがシャロー(緩やかに)に入ってくる人ほど手元は低くなり、スティープ(鋭角に)に入ってくる人ほど、手元が浮き上がって高くなるのです。

 植竹選手のインパクトを見ると、驚くほど手元が低いことがわかりますが、これは、彼女のクラブが誰よりもシャローに下りて来ているから。手元の低さと、シャローなダウンスウィングはふたつでワンセットだと考えてください。

画像: 手元がこんなに低い所を通り、クラブが緩やかに下りてくる。ガルシアをもしのぐレベルだ(写真は2021年TOTOジャパンクラシック 撮影/大澤進二)

手元がこんなに低い所を通り、クラブが緩やかに下りてくる。ガルシアをもしのぐレベルだ(写真は2021年TOTOジャパンクラシック 撮影/大澤進二)

 逆に言えば、クラブがスティープに下りているうちは、いくらインパクトで手元を低くしようとしてもできないということになります。
よく、「インパクトで手が浮きがるのを直したい」「手元が浮き上がって体が起き上がるのを矯正したい」という人がいるのですが、そのためには、クラブの入射角度を緩やかにする(ダウンスウィングでクラブを後ろに倒す)必要があるのです。

目安は、ダウンスウィングでクラブが右肩よりも下を通る軌道です。クラブが右肩の上を通って下りているうちは、手元が浮き上がる動きは直らないので注意してください。

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