今日の14時35分(日本時間)に第1組がティーオフを迎える第150回大会「全英オープン」。特派記者の週刊ゴルフダイジェスト・グッチーが、テレビではなかなか放送されない、選手たちの事前情報や舞台オールドコースの裏側をお届け! 4回目は“セントアンドリュース・オールドコース(以下、オールドコース)のセッティング”。
画像: そもそもリンクスはフェアウェイが硬いことで有名。今年はいつも以上に硬くなっているのだとか

そもそもリンクスはフェアウェイが硬いことで有名。今年はいつも以上に硬くなっているのだとか

おはようございます! グッチーです。こちら現地セントアンドリュースは13日(水)の深夜。あと数時間で全英オープンの第150回記念大会がスタートします。もうワクワクが止まらなくてこれはちょっと眠れなそうです……。私の話はさておき、今日はある事情通からゲットした情報を届けます。

ある事情通とは、全英オープンで5度の優勝を誇るピーター・トムソンの長男で、セントアンドリュースをホームコースにしているアンドリュー・トムソンさんです。

アンドリューさんはR&Aのメンバーでもあり、父親のゴルフ場設計事務所で働き、オーストラリア(シドニー郊外)とスコットランド(セントアンドリュース)でゴルフコース建設の監督を務めた設計家でもあります。

そのアンドリューさんが、「今年のオールドコースはグリーンよりフェアウェイのほうが速いかもしれない」と言うのです。背景には、「前回大会の2015年に強風でサスペンデッド(順延)した影響」があるそうです。大雨や雷ではなく”強風”でというのがなんともリンクスらしい理由ですが、「グリーン上でボールが止まらない」との教訓から、今大会ではグリーンのスピードを落としているのだとか。少しでもグリーンのスピードを落として、強風でグリーン上の球が転がってしまうのを防ぐ狙いなんですね。

画像: アンドリュー・トムソンさん。全英オープンを5回優勝した故ピーター・トムソンの長男。ゴルフコース設計家でR&Aのメンバー

アンドリュー・トムソンさん。全英オープンを5回優勝した故ピーター・トムソンの長男。ゴルフコース設計家でR&Aのメンバー

ただ、今回注目したいのは「グリーンの遅さ」ではなく、むしろ「フェアウェイの速さ」です。フェアウェイがグリーンより速くなるという背景には、前回のルポでもお伝えしましたが「地面の硬さ」があります。アンドリューさんが言うには、「実はいつも以上に硬く仕上げている」のです。その大きな理由は選手の飛距離アップにあります。

ご存じ、全英オープンを主催するR&Aはルールの総本山。最近では飛距離制限に向けた新ルール作成に乗り出しているほど、飛距離には敏感です。というのも現地に入ってわかったのですが、オールドコースは狭いリンクスに造られたコースなので、距離を延ばすことは不可能に近いのです。このまま”飛距離ゲーム”になると、ゴルフの聖地であるオールドコースでの開催は難しくなります。

その飛べば有利に待ったをかけるために、「フェアウェイを硬くした」というのです。

なぜ、フェアウェイを硬くするのが飛距離ゲームの抑止にになるのか?

普通に考えれば、フェアウェイを硬くしたほうが、よりランが出て飛距離が出ると思います。ただし、オールドコースは起伏の激しいフェアウェイにポッドバンカーが点在しているため、転がりすぎると簡単にハザードに入ってしまいます。つまり、落ちてから転がった先が重要になるわけです。もちろん球の高低やスピン量で、ランの出方は変わりますが、基本的にはどの番手でもキャリーが大きいほうが落ちてから球が転がります。つまり、飛ぶ選手のほうがハザードにつかまりやすく、ランが出れば出るほど自分の狙ったところから離れていくので、しっかり止める球を打つ技術が必要になります。

フェアウェイを硬くすることで、より転がりやすくなり、よりバンカーが効いてくる。飛ばしてどんどん前にいけばいいという発想に、コースセッティングを変えることで待ったをかけたわけです。非常に興味深い考え方ですよね。

球を狙ったところに止めるというのは、ある意味、“ゴルフの原点回帰”を目指しているのだと思います。

以上の理由から、今年は「グリーンよりフェアウェイのほうが速い可能性がある」とアンドリューさんは言うのです。ちなみに、この状態に仕上げるために、1カ月間あえてフェアウェイへの散水を少なくしてきたそうです。ちなみに今週は、今日初めてパラパラ雨が降った程度。初日、2日目も晴天が続く予報ですから、試合が始まって以降も、硬くて速いフェアウェイに仕上がっていることは間違いないでしょう。

画像: スウィルカンブリッヂでサムズアップする比嘉一貴プロ。「憧れの地」というコースでの初日の目標は「ダボを打たないこと」と堅実な話をしていた

スウィルカンブリッヂでサムズアップする比嘉一貴プロ。「憧れの地」というコースでの初日の目標は「ダボを打たないこと」と堅実な話をしていた

この話には少し続きがありまして、フェアウェイが硬いことを敏感に察知していた日本人選手がいました。それは比嘉一貴プロです。

水曜日の練習ラウンド後、比嘉プロはこう答えていました。「こちらに来て合計で2ラウンドほど回りましたが、それでもまだ、どう転がるかが計算できていません。最初に回ったときよりも、今日のほうが落下してからランが出ているんです。グリーンのスピードは重いんですけど。フェアウェイのほうがスピードが速い気がしています」

また、アンドリューさん情報では、タイガー・ウッズも同じようなことを言っていたといいます。さすがの感覚です。

皆さんも、今日からの中継は「フェアウェイの速さ」に注目してご覧になってください。

PHOTO/姉崎正

画像: my-golfdigest.jp
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