故郷ブリスベンでおこなわれたオーストラリアンツアーとDPワールドツアー(欧州ツアー)の開幕戦を兼ねるフォーティネット・オーストラリアPGA選手権(以下全豪プロ)でキャメロン・スミスが劇的な優勝を飾った。全英オープンチャンピオンにとって今年挙げた5勝のうちフィールド的にも賞金的にももっとも小規模な大会だったが、決して忘れられない宝物のような1勝だった。
画像: 7時間に及ぶ激闘を制したのはキャメロン・スミス。3年ぶりに戻った故郷での優勝となった(写真は2022年フォーティネット・オーストラリアPGA選手権 撮影/Getty Images)

7時間に及ぶ激闘を制したのはキャメロン・スミス。3年ぶりに戻った故郷での優勝となった(写真は2022年フォーティネット・オーストラリアPGA選手権 撮影/Getty Images)

荒天に見舞われた最終日、長時間に渡る2度の中断を挟み決着がつくまでに7時間かかった。戦況を見守るギャラリーの中には最近2度の化学療法を受けた祖母キャロルさんの姿もあった。特注の『チーム・スミス』と記されたティシャツを着て孫の一挙手一投足を見逃すまいと最終日はもちろん72ホール歩いてスミスのプレーを見守った。

「(健康状態を考えると)祖母がなぜそんなに歩けたのか信じられません。胸を打たれました。父の誕生日でもあったし、11番(ボギー)で後続に並ばれたとき2人のために絶対に勝つと闘志が湧きました」

12番ではショットを木に当てながらバーディ。その後もバーディを重ねて後続を突き放し、目下売り出し中の20歳久常涼らに3打差をつけ3年ぶり3度目の栄冠に輝いた。応援に駆けつけた家族や友人、そして何より祖母と父の前で久々の72ホールトーナメント、世界ランクの加算試合で勝利を飾ったことはスミスにとってこれ以上特別なことはない。

「感情的な方ではないけれど、こみ上げてくるものがあった」と瞳を潤ませたのは絶頂期にLIVゴルフに移籍して批判され辛い時期を過ごしたこともあったから。今年の彼は昨年のチャンピオンのみが集うセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ、第5のメジャー・ツアー選手権、そしてセントアンドリュースでの全英オープンとビッグトーナメントを3つ制して世界ランク1位が手に届くところまで迫っていた。

しかしPGAツアーを電撃離脱してLIVに移籍。参戦2戦目のシカゴ招待で優勝し実力を見せつけた。それでもゲーリー・プレーヤーやフレッド・カプルスら先輩からは「54ホール? それってゴルフの試合といえるのか?」と非難され一部ファンも「お金で買収された」と背を向けた。

「もちろん移籍金や賞金が魅力だったことは否定しません。でも一番の決め手はオーストラリアで過ごす時間が長く取れることだった」と当時語っていたが、コロナ以来故郷に戻れなかった彼が3年ぶりに帰国。これからおよそ3カ月、夢にまでみたオーストラリアの休暇を満喫することになる。

ブリスベンの空港にはスミスを見ようと大勢のファンが詰めかけ大歓迎を受けた。そして大会出場前には幼い頃ゴルフを覚えたワンティマCCに立ち寄った。決してゴージャスではないブルーカラーのためのゴルフ場で200人のメンバーがスミスのために祝賀会を開いてくれた。スミスは全英で獲得したクラレットジャグ(トロフィー)を持参しメンバーと懇談した後、ジャグに大好きなオーストラリア産のビールを注ぎ集まった人々と飲み干した。

優勝を決めた日曜日の夜にはクラレットジャグだけでなくジョーカークウッドカップ(全豪プロの優勝トロフィー)にもビールを注ぎ家族や友人、チーム・スミスの面々と祝杯を上げた。

紆余曲折あった20代最後の年。まだ全豪オープンが残っているが終わりよければすべてよし。父・デスさんに最高の誕生日プレゼントを贈ったスミスはいつまでも勝利の余韻に浸っていた。

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