「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回は宮城さんに昔のカーボンボディと今のカーボンボディの違いについて教えてもらった。

みんゴル取材班(以下、み):たまたま中古ショップでキャロウェイの「FT-5」を見かけたのですが、チタンカップフェース、カーボンボディ、後ろにウェイトっていう作りは「パラダイム」とそっくりですね。確か5000円くらいで売られていたのですが、それなら安い買い物かもと思ってしまいました。

宮城:「FT-5」も「パラダイム」もヘッドの真ん中をカーボンで軽くして慣性モーメントを大きくするという考え方は同じですね。ただ、5000円が高いか安いかは別にして性能はまったく違いますよ。

み:あの頃はどのメーカーも慣性モーメントの大きさを競っていました。キャロウェイ「FT-i」やらナイキ「サスクワッチ」やら異形ヘッドが流行り、カーボンボディもツアーステージの「シナジー」とかテーラーメイド「XR-05」とか各社が採用していました。

宮城:カーボンはボディを作るのに最適な素材なんです。軽さばかり注目されがちですが、むしろ剛性が高いことの方が利点でボールに対して効率よく力を伝えることができます。

み:キャロウェイのJAILBREAKも同じ理屈ですね。

宮城:「パラダイム」はボディの外周につなぎ目がないのでさらに剛性が高くなっているはずです。

み:「パラダイム」でソールとクラウンをつなぐ柱が2本から1本になったのもそのおかげかもしれませんね。ところで、カーボンボディに限らず、ゴルフ業界では鳴物入りで登場した新技術なのに、これって昔どこかで見たことあるぞってデジャビュみたいなことがときどき起こります。言い方は悪いですがアイデアの使い回しのような。

宮城:いいアイデアが浮かんでも、そのときはいろいろな理由で製品化できなかったり十分に生かせなかったりすることはよくあります。カーボンボディの第一の目的は慣性モーメントを大きくすることですが、「パラダイム」はフロントとバックにウェイトを配置してそれをクリアしています。これに対して「FT-5」はヒールにもウェイトがついているので効率があまりよくありません。

み:ヒールのウェイトはつかまりをよくするためですか。

宮城:「FT-5」はいまのクラブと比べてネック部分が太く、シャフトの軸線がフェースから離れています。ネックの付け根が太いのは強度上の問題です。昔のパーシモンと同じでフェースプログレッションが大きく、そのままでは球がつかまらないのでヒールにウェイトを置かざるを得ないわけです。

み:せっかくのカーボンボディを性能に生かしきれていない。

宮城:そうです。クラブ開発者は、製造技術が確立されていなかったりコストがかかりすぎたりして製品に生かせなかったアイデアを引き出しにためておいて、製造技術が追い付いてきたところで引っ張り出してくるわけです。カーボンフェースのアイデアも昔からありましたが、製品化できたのは強力な接着剤ができたおかげです。

画像: 「同じカーボンボディでも、昔と今とではヘッド性能がまったく違います」と宮城氏は語る

「同じカーボンボディでも、昔と今とではヘッド性能がまったく違います」と宮城氏は語る

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