「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はロフトとライ角の裏話を聞いた。

みんゴル取材班(以下、み):ずっと不思議に思っていたのですが、フェアウェイウッドやアイアンのロフト角はキリのいい数字なのに、ドライバーは9.5とか10.5とか端数が多い。それはなぜでしょう。0.5度の違いに何か意味はありますか。

宮城:大いにあります。ロフトの数字に対してゴルファーがどう感じるか。9度は無理だけど9.5度ならちょっと打てそうな気がしませんか。

み:確かに。9度とわかった途端に当たらなくなったという話はよく聞くし、自分にも経験があります。0.5度は設計者の優しさというわけですね。

宮城:心理的な問題だけでなく、実際に10度と9度はまるきり別世界なんです。そこを境に急に難しくなります。わかりやすい例えでいえば、7番アイアンは打てるのに6番から急に打てなくなるのと一緒です。

み:なるほど、10度が1番ウッドなら9度は0番ウッドというわけですか。

宮城:9度ぴったりで作ると本当に難しくなってしまうので0.5度のロフトアップは意味があります。

み:いっそのこと10度と11度にすればよいのでは。

宮城:残念ながら11度以上のドライバーはユーザーに敬遠されてしまいます。

み:雑誌の企画でヘッドを計測したときに10.5度表記でもリアルロフトが12度以上のものもありました。そのことも踏まえて0.5度にどんな意味があるのか疑問に思ったのですが。

宮城:そこまで違うのは意図的だと思います。12度と表記したら売れないので。0.5度には製造誤差に対して逃げを作っておくという意味もあると思います。これはプロから預かっているヘッド(ステルスグローレ)ですが測ってみると11度近くあります。でも、10.5度と書いてあれば誤差の範囲といえます。

み:製造誤差というのはどれくらいあるものですか。

宮城:昔とは製造方法が変わったので今のクラブではそんなに誤差は出ません。せいぜいプラスマイナス0.3度くらいで0.5度も違うことは希です。とくにキャロウェイやテーラーメイドなど外ブラはほとんど誤差がありません。ただしものによっては誤差が大きい場合があります。実際にいろいろ測ってみるとロフトもさることながらライ角の誤差が問題になることもあります。

み:ロフトが合っていてもライ角が違うことがあるのですか。

宮城:ヘッドを鋳造して冷えるときの収縮率がロフトとライで違うからです。金型を作るときにそれを見越して調整しますが、いまは金型も海外で作るので中にはとんでもないものもあります。

最近の話ですが、どうしても上手く打てないと相談されたUTを測ってみたら5番と6番のライ角が見事に逆転していたことがありました。これではポスチャー(かまえ)が変わってしまうので打てるはずがありません。

み:誤差に気づかないまま使い続けるとスイングまでおかしくなってしまう。

宮城:そのためにライ角をフィッティングするわけですが、気を付けなくてはいけないことがあります。試打クラブで2度アップライトが合うといわれて、自分が購入するクラブを2度アップライトに曲げても上手く当たらないことがあります。

み:なぜですか?

宮城:そもそも試打クラブと購入するクラブのリアルライ角が同じとは限らないからです。プラスマイナス何度を基準にするのではなく、本来は実際に使うクラブのライ角をいちいち実測して合わせる必要があるのです。

画像: 「ドライバーのロフト角、9度と10度ではまるっきり違う世界なんですよ」と宮城氏は語る

「ドライバーのロフト角、9度と10度ではまるっきり違う世界なんですよ」と宮城氏は語る

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