ミスヒットでもブレない!
三角形で支える「トラスホーゼル」
今ではもう見慣れた感がある『トラスパター』の三角ネック。橋などの建築物の強度や安定性を高めるため、部材同士を三角形につなぎ合わせた構造形式を「トラス構造」と呼ぶが、そこからヒントを得てデザインされたのが、この三角形「トラスホーゼル」だ。
いかに狙った所に正確に打ち出せるかがパッティングの大命題だが、プロでも100%正確にヒットすることはできない。だからこそ、オフセンターヒット時のミスを最小限にできるパターが求められるのだ。

テーラーメイドのトラスホーゼルは、パター史上における画期的な発明のひとつといえる
オフセンターヒット。つまり芯を外すとヘッドは重心を軸に回転し、フェース面がブレてしまう。これが方向性を狂わせるだけでなく、エネルギーロスにより距離感も損なわせ、3パットの要因となる。
このフェース面のブレを抑えるには、シャフトでヘッドを吊るす接合部分が通常の1点ではなく、2点のほうが有利。ルール上、ホーゼルは2つにできないので、両端に幅がある三角形状を採用したところ、明らかな抑制効果が確認されたのだ。

フェースの先っぽでヒットしてもフェースの向きが変わりづらく安定した方向性が得られる
ダスティン・ジョンソン用に開発
日本の女子ツアーで大ブレーク
開発のきっかけはブレードタイプを好むダスティン・ジョンソンの要望に応えるためだったという。ヘッドの構造上、ブレの抑制効果を期待しづらいブレードタイプにトラスを採用したことで、実際、完成モデルを即実戦投入し、2020年「トラベラーズ選手権」優勝につなげた。
日本国内では、コロナ禍で2年合算となった女子ツアーの2020~21シーズンからツアーでの使用率もぐんぐんアップ。使用選手が多くの勝利を挙げ「トラスブーム」が巻き起こり、現在も人気モデルとして定着している。

最近では、QT181位から「アクサレディス」に推薦出場した山内日菜子が最新モデル『スパイダーGTxトラス』を駆使して初優勝。改めて「トラスホーゼル」の効果が証明されたといえるだろう。
マシン試打が実証する
オフセンターヒットの抑制効果
解析器を駆使し、パッティング専門のコーチングを行っている橋本真和プロによると「パッティングマシンで芯から23ミリ、トウ寄りに外した打球をノーマルのホーゼルのものと比較すると、ブレやロスが3分の1以下に低減されました」という。
芯から23ミリはボール幅の半個分。そんなに外すのか、と感じるかもしれないが「アマチュアのロングパットではこのぐらいはよくあります。ファーストパットが〝お先に”の距離に寄るか、大きくそれるか。このブレの抑制効果は、3パット解消には大きな強みになります」(橋本)

これが23ミリ外し。アマチュアではこのくらい外すのは当たり前だとか。それでもお先にの距離に寄ってくれるのだ
「たとえば10メートルのファーストパットで2メートル残るのと、70センチ残るのでは雲泥の差。本来なら、芯を外さないよう練習を重ねてストロークを磨くのが正しい上達方法だろうが、道具に頼れる部分はなるべく頼っていい」
「練習量の多い女子プロでも、程度の差こそあれ結構芯は外れます。だからこそ、プロに人気のパターは万人向きでやさしいんです」(橋本)
三角形の幅は広いほどやさしい?
両端の支え具合がポイント
ちなみに、三角形状は左右の2点の幅、つまり底辺が広いほどブレの抑制効果は高いという。
「見た目として、ホーゼルとフェースのラインが気になるという意見もありますが、基本的に慣れの問題だと思います。『トラス』は三角形の形状でバリエーションが豊富ですが、三角形の両端の幅が広いほどヘッドがブレにくいことは、マシン試打でも結果が出ています」(橋本)
モデルとしてはセンターシャフトで、フェース上部のトウ端とヒール端まで支えているタイプが最もブレにくいという。

機能的にはセンターシャフトで底辺が広いほどヘッドがブレにくく、ミスヒットを助けてくれる
「ただ、使用モデルはストロークのタイプや操作性も含めて判断するのがベター。ストロークで違和感が出ると打点ブレ以前に打ち出しのミスが増えます」(橋本)
三角形状のバリエーションが多いのも、まずプレーヤーのストロークありきだからなのだ。

『トラスパター』には様々な形状がある。自分のストロークに合ったモデルを選ぶことも大切だ
さて、打点のミスによるブレ防止といえば、ヘッドの慣性モーメントとの兼ね合いはどう考えたらいいのだろうか。次回は、新しい「スパイダーGTxトラス」で考察してみよう。