効率的な順回転を促し打球のブレ幅を抑える
テーラーメイドが初めて「ピュアロール」インサートを発表したのは、10年以上前。
フェース面に向かって45度下向きに傾斜したグルーブ(溝)が特徴で、効率的な順回転を生み出す。設計上では、毎分25~50回転の順回転を発生する、というものだ。
また素材は、アルミニウム製やカッパー(銅)製、アイオノマー製、アイオノマー80%にアルミニウムパウダー20%を混ぜて練ったタイプなどさまざまなバリエーションがある。

「ピュアロール」インサートは『トラス』パターがプロから強く支持され続ける理由のひとつ
このテクノロジーは現在の『トラス』シリーズにも継承され、ヘッド構造に合わせて厚さなども調整されている。ちなみに『TPトラス(’23)』ではアイオノマー80%とアルミニウムパウダー20%を混ぜ込んだタイプを採用。複合素材を採用することで、ソフトでマイルドな打感にも貢献している。
『スパイダーGTxトラス』では、TPUというウレタン素材にアルミニウム製バーをはめ込んだ進化版の「ピュアロール2」を採用している。

ソフトでマイルドな打感とともに効率的な順回転を生み出す「ピュアロール」インサート
パッティングコーチの橋本真和プロも、試打前はインサートで転がりがどれだけ変わるのか、疑問に感じていたという。「でも、実際にデータを取ってみると、明らかな違いが生じたので、驚きました」(橋本)
パッティングの打球計測器『クインテックボールロール』では、打球のサイドスピンやトップスピンの量を計測できるが、その数値に大きな違いが出たという。

自らテストして、データで「ピュアロール」インサートの明らかな効果を確認した橋本プロ
オフセンターヒット時の
曲がり幅に大きく影響
さて、そもそもパットの打球にサイドスピンは影響するのか。芝面との摩擦ですぐに順回転が始まるから、打球結果にそれほど大きな違いは出ないのでは?
「たとえば芯を外した場合、ヘッドのブレともいうべき回転運動が生じます。そのギヤ効果で、打球にはサイドスピンの挙動が加わるんです。アイアンショットなどと原則的には同じです」(橋本)
現実には回転軸が斜めに傾いて転がり始め、途中から順回転に移行するわけだが、その斜め回転のサイドスピン量がトップスピン量より少ないほど、スムーズに順回転に移行できるので、転がりは良くなる。

ミスヒット時に生じるサイドスピンをいかに減らすかで転がりの良さが決まる
「芯から10ミリ、20ミリと外してマシン試打で比較したところ、「ピュアロール」インサートは他の樹脂系インサートのモデルより明らかにサイドスピン量が少なく、またトップスピン量も安定していました。慣性モーメントやトラス構造でヘッドのブレを抑えても、フェースへの球の食いつき、球離れの早さなどで打球のサイドスピンが増えてしまうと、打球結果は悪くなります」(橋本)
その意味でも『トラス』シリーズのミスヒットに対する強さは、「ピュアロール」との相乗効果といえるだろう。
プロでも毎回芯では打てない!
だからパターのサポートが必要
テーラーメイドパターのプロダクト責任者であるビル・プライス氏によると、ツアープロでも試合ではトウ側に外すミスが多いという。『スパイダー』や『トラス』シリーズは、そのミスをカバーするために開発されたのだ。
「プロでもオフセンターヒット時にはサイドスピンが増えやすくなります。たとえばフックラインでトウ側に外してヒットすると、フック回転で打球がさらに左に切れやすくなり、カップ手前で曲がってしまう。それを嫌い曲がる前に届かせようと、その後のホールでパンチが入るようになり、ミスを重ねることも有ります」(橋本)

パッティングのミスヒットはトウ側に外すことが多いが「ピュアロール」インサートなら曲がりが少ない
プライス氏も「いかに打った瞬間から順回転になるかが重要。アマチュアは4回に1回はバックスピンが入ったりする。『ピュアロール』はインパクト直後から順回転になりやすいので、アマチュアにもやさしく、ミスが減ると思う」と語っている。
「ストローク技術で安定して順回転をかけられるプレーヤーは、トッププロでも多くありません。女子ツアーで『トラスTB1』の人気が出たのは、ブレード型なのに当たり負けせず、転がりがブレずに伸びたから。それには『トラスホーゼル』はもちろん、『ピュアロール』インサートもかなり貢献していると思います」(橋本)

「直進性が高いので曲がりが遅くなるイメージ」(中島啓太・左)、「柔らかめで押していけるイメージがある」(池村寛世)と評価
「トラスホーゼル」は底辺が広いほどミスに強いというが、本当だろうか?
次回はプロゴルファーが実際に試打して、テーラーメイド独自のアライメント効果と共に検証してみよう。