
プロ転向のデビュー戦で優勝したローズ・チャン(左)と全米女子プロ優勝のイン・ルオニン(右)のスウィングを吉田直樹がペブルビーチで生解説
イン・ルオニンはブレーキングフォースを使うドローの飛ばし屋!

【イン・ルオニン】世界ランク5位。20歳。今シーズン、初優勝を飾ったのもつかの間、6月のKPMG女子PGA選手権で早くもメジャー優勝を達成した
「典型的な飛距離を出せるスウィングです。ヘッド軌道はインサイドアウトで、切り返しで腰は左回転を始めても、肩のラインは右を向いたまま。手はインの低いところから入って、アウトに抜けるときに腰の動きを一瞬、ストップさせます。これはブレーキングフォースと呼ばれる飛ばし屋が使うスウィング要素ですが、諸刃の剣となりかねない側面を持っています。
使い過ぎると手が必要以上に返ってしまうため、タイミングひとつで、引っかけや右プッシュが出てしまう。ルオニンは右ひじを曲げてインパクトすることで、手が走り過ぎないように、手と体の最適なポジションを確保しています。左足に加えて右足も蹴るダブルキックで、左足が一瞬浮いて後方に動く。このとき受ける地面反力を飛ばしのパワーに変えて、270ヤードの飛距離を叩き出しています」(吉田)
※ブレーキングフォース→腰を止めてクラブを加速させる動き。飛ばし屋と呼ばれるプロの多くが使う飛ばしの技術 ※ダブルキック→左右の足を蹴って、地面反力を発生させる打ち方。フィニッシュで左足が後方に動くのが特徴

インパクトで腰の動きを止めるブレーキングフォースの使い手。地面反力は、ダブルキックで発生させている
シングルキックで飛ばす華麗なるスウィンガーのローズ・チャン

【ローズ・チャン】世界ランク45位。20歳。タイガーと同じスタンフォード大出身。アマチュアタイトルを総なめにしたあと、デビュー戦でいきなり優勝
「ルオニンとは対照的に、ブレーキングフォースを使わず270ヤードの飛距離を出すのがローズ・チャンです。男女問わず、飛ばし屋といわれるプロの多くがブレーキングフォースを使っていることを考えると、ローズの身体能力の高さがうかがえます。
腰を素早く回転さることによって、ヘッドがローテーションする前にインパクト。そこから手が体の正面から外れないまま振り抜いていく。タイガー・ウッズが絶賛することでもわかるように、スウィングに欠点がほとんど見つからない。ヘッド軌道はスクエアで、アイアンはストレートかややフェード、ドライバーはつかまるシャフトを使って、ドローを打とうとしているようです。ドライバーを打つときは、地面反力を使ってヘッドを加速。この動きもルオニンとは対照的に、左足をグッと踏み込むシングルキックです」(吉田)
※シングルキック→左足の蹴りで地面反力を発生させる。左にウェートシフトして打つプレーヤーに向く

ブレーキングフォースを使わず飛ばす。腰を素早く回転させながら、体の動きに手の動きをシンクロさせている。地面反力の使い方はシングルキック型
PHOTO/Yasuhiro JJ Tanabe
※2023年7月7日8時10分、一部文章を修正しました