全長790㎜のヘッドに詰め込まれた
「全番手でピンに絡めるため」のテーラーメイドの最新技術
マッスルバックのようなシンプルなルックスながら高い飛距離性能とやさしさを兼ね備えた中空アイアン『P790』。腕前を問わず幅広いプレーヤーから人気を集めているが、新登場の4代目は、これまでで最も大きな進化を遂げたと言っていいだろう。
『P790』の特徴でもある多くのパーツで構成されている部分は変わらないが、驚くべきはその作り込みだ。タングステンの量や位置、心地よい打感・打音を生み出すバーの配置、また多くの余剰重量を生み出すためのディンプル状に加工されたバックフェースなどが、“番手別”にすべて作り分けられているのだ。正直ここまで凝った作りのアイアンは見たことがない。

数多くのパーツから構成されているのが『P790』の大きな特徴。今回、各番手の内部構造を変化させることで、それぞれで求められる最適な弾道を生み出すことを狙った。ちなみに『P790』のネーミングは、ブレード長が790㎜であることに由来する
写真は『P790』のヘッドを分解したもの。左は7番アイアン、右は5番アイアンだが、内部の作りが大きく異なるのが見て取れる。このように3番からPWまで細かく作り分け、各番手の最適弾道を出せる工夫がなされている。
さらに細かくテクノロジーを見てみよう。
❶は「鍛造L型フェース」。オフセンターヒット時でも弾道のバラつきを抑える。またソール部の「貫通型スピードポケット(3I~7I)」はフェース下部で打ったときでも無駄なスピンを抑え、高初速をキープする。
❷の「SPEEDFOAM™ AIR充填剤」は前作より軽くソフトに進化した。薄くなったフェースの反発力を損なわずに、中空構造とは思えない打感、打音の良さを生み、寛容性にも一役買っている。
❸は「タングステンウェイト」。7番に比べて5番のほうが低く横長に配置されている。より低重心化され、大きなキャリーボールを生む。またタングステンの重量は前作から約1.2倍に増えた(#3-#5 33g、#6-#7 38g)。
❹の「THICK-THIN バックウォールキャスティング」というディンプル状のバックにより余剰重量を創出。これも番手ごとに形状が異なり、最適な重心設計を実現している。
突起のような❺は「サウンド スタビライゼーション バー」。これは文字通り、上級者好みの落ち着いた打球音を演出。これも形状を変化させることで、全番手の打球音に統一感をもたらす。
テーラーメイドのクラブらしく、実に多くのテクノロジーが凝縮されているが、その目的はアイアンの最大の使命、「狙った距離を正確に打てること」にある。ロングアイアンはしっかりと“高さを出す”、ミドルアイアンはターゲットを“狙える”、そしてショートアイアンは狙った場所に“止める”、これらを実現する、つまりスコアに直結する性能を限界まで追求したということだ。ロングアイアンからショートアイアンまで弾道の高さが揃い、結果としていわゆる“飛距離の階段”が整う性能が高まったのだ。

各番手の最高到達点を揃えることが、飛距離のギャップを均等に整えるための理想とされている。写真のように番手ごとに異なる内部設計にすることで、この理想に限りなく近づいた(右端が3I、左端がPW)
加えて一段と洗練されたデザインや形状、他の中空とは一線を画す心地よい打感、打音。生まれ変わった『P790』は、さらに高い評価を集めそうだ。
「Pシリーズらしい本格的な形状、しっかり飛んで止まる性能。
まさにやさしいアスリートアイアンですね」(細川プロ)
では実際に『P790』を打って、その真価を確かめてみよう。試打者は、テーラーメイドのクラブを数多く愛用してきた細川和也プロに依頼した。

細川和也プロ。ツアーで活躍後、現在は東京板橋区の「プレミアム ワールド ゴルフ」でレッスン活動に勤しむ。同施設は弾道計測器・トラックマンを全打席で完備、またクラブ工房も併設され、ゴルフライフをトータルでサポートしてくれる。
「プレミアム ワールド ゴルフ」℡03-6903-6387
細川プロは、まず『P790』の形状に魅力を感じたという。
「前作よりも少しシャープな印象で、アスリートアイアンの感じが増しました。一段とクセのない“いい顔”になって、打ちたい弾道をイメージできますね。7番と9番を比較してみると、ヘッドのつながりがいいことがわかる。特にフトコロの感じとか。やはりアイアンは顔が大事で、ここに違和感があったり、顔からは想像できないような打球が出たりすると使いづらいですから」

「7番アイアン(左)も9番アイアンも形状やフトコロの感じにつながりを感じる。個人的にはここに違和感があると使いづらいです」(細川プロ)

アイアンの見た目で弾道をしっかり描きたい本格派ゴルファーも満足できるヘッド形状です(細川プロ)
多少芯を外しても、距離の差が出にくい
打ってみると、ミスへの寛容性の高さを実感できると細川プロ。
「アスリートが好みそうな形状ながら、セミラージのヘッドサイズや厚みのあるトップブレードなど、やさしさも感じるので、スウィングに余裕が生まれて芯を食いやすいです。一方で結構なオフセンターヒットでも飛距離と打感が大きく変化しませんね。ミスしてもグリーンには届いてくれる、この安定感は武器になりますね」

芯を外しても大きく飛距離を落とさないが、打点のフィードバックはクラブから伝わってくるという。実戦的かつ上達にもつながるアイアンだ
先に見た内部構造を裏付けるように、ショートアイアン、ミドルアイアン、ロングアイアンで、欲しい弾道が実現できると細川プロ。
「9番はスピンがしっかり入って止まる。ぶっ飛ぶ感じがないので安心感があります。さらに左にも行きづらい。ショートアイアンで引っかかりにくいと思い切ってピンをデッドに狙えます。7番アイアンは弾き感が少し出てきて、ボール初速が速く高弾道ですね。でもスピンも利いています。飛び系であり止まり系でもあると言えます。5番アイアン、これは高さと弾きで飛ばせる感じが強い。でも感触はソフトでいいですね。芯を多少外しても5ヤードぐらいしか距離が落ちないので、グリーン手前はとらえてくれそう。マッスルバックやセミキャビティではこうはいきません。欲しい性能が個々に凝縮されていることがわかります」

ミドルアイアン、ロングアイアンでは飛距離とともに高さもしっかり出るので、グリーンで止まる落下角度を得られる。ショートアイアンは強くスピンが入るので、よりボールをコントロールできる

試打結果を見ても、7I、9Iは十分すぎるほどの落下角度で、問題なくキャリーでピンを狙える。そして飛距離については、各々“キャリーで”飛ばせるので距離のギャップが整う。セットでの完成度が高い、と細川プロ。
見た目はスタイリッシュ、打点のミスに強く、コースでスコアにつながる実戦的な弾道を各番手で実現できる。新『P790』は、まさに“やさしいアスリートアイアン”と言える。コースで結果を出したい、だけどアイアンとしてのカッコよさも譲れないというゴルファーは、ぜひ一度試してみることをお薦めしたい。