細かな斜めのミーリングが
ボールとの間の水分をかき出す
13年前、ロフト角が25度以上のクラブにいわゆる「新溝ルール」が施行された。25度以上とはいえ、そのターゲットはウェッジ。当時、ラフからでも高いスピンで寄せられる角溝ウェッジが主流となっており、それを規制しようとするものだ。以降、あえて高重心にするなど、各メーカーは溝以外でいかにウェッジのスピン量を上げるかの努力を続けている。
フェース面全体に施す「ミーリング」もそのひとつ。現在も各メーカーはここの研究に余念がないが、今回テーラーメイドは、『MG4』ウェッジに施した斜めのミーリングに自信を覗かせる。実は『MG4』のミーリングは、他社のものよりもだんぜん“深い”。これは新しいレーザーエッチング処理によるもので、“悪条件下”でこそ威力を発揮するという。

グルーブ(溝)の間に刻まれた細かなミーリング。他社のそれとは違い、レーザーによる彫りが深いことが特徴。これによりフェースとボールの間の水分や芝を逃す排水溝のような効果を発揮。また耐用性も高い
ラフから、あるいは雨天でのショットは、例外なくボールとフェースの間に芝や水分が介在する。そんなとき斜めのミーリングがいち早く水分などを排出、安定した高いスピン性能を発揮するというわけだ。
この「ハイドロ スピン フェース」にいち早く反応したのがPGAツアー選手たち。例えばマキロイは、今年他社モデルを使用することもあったが、『MG4』がツアーシーディングされるやいなや即導入。『MG4』の特徴である、濡れたライからでも安定したスピンが得られるという性能が、いかにプレーをシンプルにし、スコアの助けになるか、という証明だろう。

46、50、54度の3本を『MG4』にしたローリー・マキロイ

コリン・モリカワは50、56、60度を『MG4』にチェンジ
世界のトップランカーの意見が詰まった
形状、グラインド、仕上げ…
さらに細かく見てみよう。多くのトップランカーと契約するテーラーメイドならではだが、形状やグラインドなどツアーからのフィードバックが『MG4』には色濃く反映されている。

フェース面のみノンメッキ。ハイドロ スピン フェースと相まって、ウェットコンディションでも高いスピン力を発揮、かつ打感もソフトだ
前作のMG3に比べ、やや丸みを帯びた形状に。開いて使うことの多いウェッジで、より違和感のない顔つきになった。またトップブレードにも工夫が施されている。例えば46度はトップブレードの厚みが5.5ミリ、58度は6.8ミリとなっている。46度、48度といったギャップウェッジはアイアンからの流れを重視するためやや薄めに作られ、サンドウェッジ、ロブウェッジといったハイロフトは、厚くすることで高重心設計になり、スピン性能の向上にもつながる。またフェースはノンメッキ仕上げでスピン性能が高まることに加え、打感もソフトになる。

ソールはSB、LB、HBの3タイプ。バウンス角やソール幅、削りがそれぞれ異なる。ソールタイプによって展開ロフトが異なるが、ロフトは46~60度まで。
グラインドは「SB(スタンダード バウンス)」、「LB(ローバウンス)」、「HB(ハイバウンス)」の3パターン。LBはトウとヒールのトレーリングエッジ側(後方)を大きく削り、開きやすい形状になっている。この削りの度合いなども、ツアーからのフィードバックにより多彩な技術を繰り出せる形状が追求されている。

ソールの縞模様が特徴的な「ミルドグラインドソール」。製品名の頭文字にもなっているこの製法は、製品誤差が非常に少ないことが大きな特長だ
そして従来より『MG』シリーズのアイコン的役割も果たしている「ミルドグラインドソール」は健在。こちらはテーラーメイド独自のCNC精密加工により非常に精巧な作りで、製品誤差がほとんど発生しないという。すなわち、マキロイはじめ世界のトップ選手が使用するものと同じソールを手にできるというわけだ。
ウェット時もさることながら
もともとのスピン性能自体が凄い(細川プロ)
では、実際に『MG4』を打ち、その性能を検証してみよう。試打を担当したのは、これまでテーラーメイドのクラブを数々使用してきた細川和也プロ。

細川和也プロ。ツアーで活躍後、現在は東京 板橋区の「ワールドプレミアムゴルフ」でレッスン活動に勤しむ。同施設は弾道計測器・トラックマンを全打席で完備。またクラブ工房も併設され、ゴルフライフをトータルでサポートしてくれる。「プレミアムワールドゴルフ」℡03-6903-6387
「悪条件下でのスピン性能を謳っていますが、そもそもが“激スピン”のウェッジですね。ノンメッキのフェースと溝で食いつき感が凄い。いわゆる“フェースに乗る”感じが味わえると思います。50ヤードで7000回転、30ヤードでも6000回転超のスピン量……、スピンに憧れている人にお薦めしたいウェッジですね」

食いつきが強く、フェースに乗る。「ローバウンスモデルでも、下を抜けずに距離感が合わせやすい」(細川プロ)
強いスピン性能とともに、『MG4』の形状にも細川プロは注目した。
「全体的に丸みを帯びて、すごく構えやすいです。サイズ感も大きすぎず、小さすぎずでラフからの抜けもよさそう。いわゆるストレートネックなのですが、フェースとネックをつなぐフトコロ感もあって個人的にしっくりくる形状ですね。あといいなと思ったのが、LBとHBでは、微妙に顔が違うところ。LBのほうがリーディングエッジからトウの立ち上がりが早く、開いたときに違和感が少ない。HBはその部分の立ち上がりが遅くやや角ばった印象。開いて使うこと前提のLBと、スクエアで使うことの多いHBで作り分けている。このあたり、芸が細かいですね」

右がHB、左がLB。LBのほうがリーディングエッジからトウにかけての立ち上がりが早いのがわかる
濡れたライでもフェースに乗って距離感が出る!
では実際にウェットな条件下での性能を見てみよう。フェースとマットにたっぷりと水をたらし、細川プロが50ヤードの距離で打ってみた。


【試打結果】
50Y ドライコンディション ➡スピン量 7010回転/分
50Y ウェットコンディション➡スピン量 6050回転/分
「いや、この結果には驚きました。正直もっとスピン量が減ると思っていましたが、約1000回転減っただけ。打ち出しの角度も高くならなかったので、濡れていてもボールがフェースにしっかり乗っていることがわかります。これならウェットな状態でも距離感が出せますね。新しいミーリングの効果をしっかり体感できます」
ドライな状態では激スピン、ウェットな状態でもその性能を高いレベルでキープすることが実証された『MG4』。新たなウェッジスピンの領域に踏み込んだテーラーメイドが、今後の“ウェッジ勢力図”に変化をもたらす、そんな可能性を感じさせるモデルだ。