正確性だけでは不十分。大きな飛距離も絶対に必要だった

ドライバーを抜き、スプーン2本作戦で優勝した今平周吾
「水曜日のプロアマで、ドライバーが不調で右にしか行かなかったので、スプーンに長さを足したらドライバーぐらい飛ぶんじゃないかと思ってやったらいい感じになりました。曲がるストレスがなく、心に余裕があるというか、曲がっても幅の中に収まってくれる安心感がありました」と今平が語ったように、VISAでティーショット用に新たなスプーンをバッグイン(長くしたといっても42.75インチ)。セカンドショット用のスプーンとは飛距離が10~15ヤードも違うという。この飛ぶスプーンがヤマハの新『RMX VD』だったのは既報の通り。

ヤマハ『RMX VD』のスプーン(3番ウッド)。飛距離性能をとことん追求したぶっ飛びモデル。ヘッド性能を極限まで高めるため、ネック調整機能はあえて採用していない
ドライバーを抜くという戦略は、今平にとっては初の経験だったが、かつては片山晋呉が2008年の日本オープンで実践し優勝したこともある。しかし、それは日本オープンである。当時の記録を見ると、ラフの長さは120ミリにも及び、「フェアウェイを外したらプラス1打」(片山)というセッティング。もちろん今回のVISAはそこまでラフは深くなく、18番に代表されるようにティーショットで飛距離を稼いだほうが明らかに有利なホールもある。そんな中でのドライバーを抜く戦略は、日本オープンのそれとは少し意味合いが違う。ティーショット用のスプーンが安定性はもちろん、ドライバーに迫る高い飛距離性能を兼ね備えているからこその決断だったはずである。
今回、今平が導入したスプーンは『RMX VD』としては2代目のモデル。初代も「ぶっ飛び性能が高い」と話題になり、契約外のツアーも使用するなど人気を博した。

前作の『RMX VD』スプーン。契約外のプロも使用するほどその飛距離性能は高い
そして今回の2代目は、“前作を上回る飛距離性能”を至上命題として開発された。前作同様、通常フェアウェイウッドには用いない高強度のチタン、さらに非常に高価な高比重タングステンもふんだんに使用、前作をしのぐ低重心ヘッドとなり、より強弾道が打てるモデルへと進化した。「飛びすぎてドライバーと10ヤードも変わらない」というプロがいたというほど、その飛距離は噂になっている。
ミート率1.5を連発! まさしく「小さなドライバー」
今平は『RMX VD』スプーンで安定して275~280ヤードを飛ばし、ビッグトーナメントの優勝を手繰り寄せた。しかし、気になるのはわれわれアマチュアでもその飛距離性能は体感できるのか、ということ。ヘッドスピード43m/sのシングルゴルファーと試打経験豊富なフィッターが、前作と比較しながらその性能を改めてチェックした。

長岡篤徳さん(49歳・HC6.7)
ドライバーの平均飛距離は250~260Y。どちらかというとフェアウェイウッドは苦手だが、今回の試打では意外な結果をもたらした

平野義裕さん
今回、今平周吾にならい、ティーアップした状態でテストした。実はフェアウェイウッドが苦手という長岡さんだが、構えた印象は不思議としっくりくるという。
「ヘッドは比較的小ぶりなんですが、難しさは感じません。形状も好みの洋ナシ形なので構えやすいですね」。

「新モデル(左)のほうが、前モデル(右)よりも締まって見える。フェース面も黒いので精悍なイメージ」(長岡さん)
打ってみるとナイスショットを連発。とても苦手とは思えない。
「芯を食ったときの打感の軟らかさは本当に気持ちいい。飛距離は……えっ! かなり出ますね。通常スプーンは220~230ヤード計算ですが、それよりプラス10~15ヤードはコンスタントに飛んでいます。しかも安定しているのが驚きです」(長岡さん)

フェアウェイウッドが苦手なはずの長岡さんだが、ナイスショットを連発

長岡さんのナイスショット3球の平均。新モデルのほうが初速性能が高く、低スピン。球の強さが際立つ
コースで時折出る強いフックのミスに悩まされているという長岡さんだが、それが出ない点にも手ごたえを得た。これにはヘッド形状に秘密があると平野さん。
「ソールの後方が持ち上がっている、ヒップアップした形状です。長岡さんのようにアッパー軌道が強いタイプは、ソール後方が下がっているとそこが先に当たる形になりミスするケースも。お尻が高いことで気持ちよく振り抜けていますね。実は、ヒップアップ形状のフェアウェイウッドって意外と少ないんです。飛距離に加えて推しポイントですね。」(平野)

ソール後方と地面の間に空間ができるヘッド形状。ライや打ち方に左右されにくい

重心アングル(フェース面の上を向く角度)は新モデルのほうが少なめ。より強弾道が打ちやすい浅めの重心であることがうかがえる
ヘッドスピード45m/sの平野さんも、飛距離性能の高さを感じたようだ。
「普段からティーショットでスプーンを使うことがあるので、欲しいのは吹き上がらない強い弾道。スピン量は3000回転までいかずに、ドライバーより少し多いぐらい。直進性が高く、ミート率はドライバーでもなかなか出ない“1.50”を連発。初速性能がかなり高いです。初速が上がることで最高到達点も高くなるので、球が上がりづらいことはなく、しっかりキャリーで飛ばせる。私のヘッドスピードで、250~260ヤードを安定して飛ばせそうです。ドライバーでスコアを崩す人は“サブドライバー”として使えるし、中、上級者はティーショットのレイアップ用として重宝することは間違いないですね」

強弾道で260ヤード超えも繰り出す平野さん

平野さんのナイスショット3球の平均。新モデルはヘッドスピードに対してはほぼMAXの飛距離といっていいだろう
念のため、ティーアップしない状態で打つとどうかもテストした。
低重心ヘッドであればあるほど、地面から打った時によりフェース面上の重心位置近くで打てることになる。
「フェース面が黒いので、ロフトを感じにくく上がるか心配でしたが、打ってみるとしっかり上がってやさしさすら感じました。下からでもティーアップした時と遜色なく飛ぶのには驚きです。平野さんの指摘通り、アッパー軌道で入ってもヘッド後方が引っかからないことが、地面からだとより体感できて気持ちよく振り抜けます」(長岡)
「新旧モデルともにヒップアップ形状なので、抜けはどちらもいいですね。前作はフェース面がシルバーなので、地面から打つときにより上がりそうな安心感がありますが、打つと両方ともにしっかりキャリーで飛ばせます。下からでも新モデルのほうが低スピンで飛距離性能は一段と高いです」(平野)

「アッパー軌道でも、ソール後方が地面とぶつからないので気持ちよく振り抜けます」(平野)
5Wは高初速なうえにとにかくラク。FWが苦手な人でも好結果を生む
『RMX VD』フェアウェイウッドにはスプーン(3W)のほかに、5W、7Wのラインナップがある。ちなみに前作では3W、5W、7Wといずれも低重心設計だったが、新『RMX VD』は3Wはより低重心化を進めた一方で、5W、7Wは“グリーンを狙う”番手でもあることから、重心を高めに設定したという。そのあたりの違いを見るべく、5Wもテストした。
「いや、5Wも飛びます! すごく楽に球が上がるしやさしい。5Wってつかまりやすい番手ですけど、左に巻き込むような雰囲気がない。スピンも適度に入るし、個人的にはコレ買いです!」(長岡)
「グリーンを狙えるコンセプトといいつつも、3W同様かなり初速が出ますね。5Wもソールの後方が上がっていて抜けが抜群にいいので、ちょっとアッパーめに入れればロースピン系でかっ飛ばすこともできる。地面から打つことも考えれば、こちらもお薦めしたいですね」(平野)

「5Wも初速が速く、飛距離性能が高い」(平野さん)

ナイスショット3球の平均。5Wとしてもかなりの飛距離性能を持つことがうかがえる
ドライバーに匹敵する初速性能を持つ『RMX VD』スプーン(3W)、高初速に加えグリーンを狙える弾道も繰り出せる同5W。『RMX VD』はロングショットに悩みを抱えるゴルファーの“ゲームチェンジャー”になり得るモデルだ。