海外のゴルフに関する様々な理論に精通するインストラクター・大庭可南太が、PGAツアー飛ばし屋の間では定番となっているワイドなバックスウィングについて解説する。

新年明けましておめでとうございます。ゴルフインストラクターの大庭可南太です。今年は暖冬ということでこの時期も他の季節同様にラウンドをされている方も多いかと思いますが、ご自身のスウィングを見直したり、トレーニングやストレッチなどでコンディションを整えたりするのはやはり冬がおすすめです。

というわけで今回は、前回の記事でも紹介した、飛ばし屋の定番ムーブメントである「ワイドなバックスウィング」について紹介したいと思います。

「飛ばし屋」はみんなやっているバックスウィング

画像: 画像A 飛距離の出る選手の多くは、始動で右ひじを曲げず、極力アドレスで出来た「Y」の形を変えずに上げていく。一方アマチュアは早期に右ひじを曲げ、またコックを入れる(右)ことで浅いトップになりやすい(写真は左上ジョン・ラーム/KJR、左下ブライソン・デシャンボー/Blue Sky Photos、中上ブルックス・ケプカ/KJR、中下ローリー・マキロイ/姉崎正)

画像A 飛距離の出る選手の多くは、始動で右ひじを曲げず、極力アドレスで出来た「Y」の形を変えずに上げていく。一方アマチュアは早期に右ひじを曲げ、またコックを入れる(右)ことで浅いトップになりやすい(写真は左上ジョン・ラーム/KJR、左下ブライソン・デシャンボー/Blue Sky Photos、中上ブルックス・ケプカ/KJR、中下ローリー・マキロイ/姉崎正)

両腕を伸ばしたままバックスウィングを始動することで、両腕が体幹の中心から外れることなくしっかりと上半身を捻転することができるため、ダウンスウィングのエネルギーをしっかりと蓄積させることができます。

逆に始動直後に右ひじを曲げる、あるいはコックを入れるといった動作を行うと、クラブヘッドそれ自体は上がるのですが、上半身の捻転は不十分になりやすく、その結果見た目の割には実質的に「浅い」トップになってしまいます。俗に「手で上げている」という状態は、このような状態を表現しているのだと思います(画像A右)。

では実際にやってみると…

そんなに「飛ばし屋」がやっているのならば是非ともマネしたいところです。条件は簡単で、両腕を伸ばしっぱなし、コックも入れずにどこまでバックスウィングできるのかやってみればいいわけです。

画像: 画像B 両腕を伸ばしてバックスウィングをすると、想像以上に体幹を「ねじる」ようにしなければならない。こらえきれずにスウェイ(中)が発生する場合もある。ワイドスタンス(右)にするとさらに体幹の捻転が感じられる

画像B 両腕を伸ばしてバックスウィングをすると、想像以上に体幹を「ねじる」ようにしなければならない。こらえきれずにスウェイ(中)が発生する場合もある。ワイドスタンス(右)にするとさらに体幹の捻転が感じられる

やってみると、これが思った以上にお腹がよじれてキツイことがわかります。どうしても余分なところが一緒に動いて、スウェイ(画像B中)になってしまう場合もあるかもしれません。

さらに体幹の可動域を確認するためにスタンスを思い切り広くして(画像B右)、股関節や骨盤の可動域を制限すると、完全に上半身の捻転のみでしかクラブを動かせないため、かなり窮屈に感じるはずです。

しかし「キツイ」ということは、体幹の筋肉がしっかりと捻じられている証拠であり、その「キツさ」が解放されることでダウンスウィングのエネルギーになっているわけです。

必要なのは体幹の「分離」能力

この動作が困難な場合、柔軟性や筋力の問題だけではなく、「分離」の能力に問題がある可能性があります。例えばバックスウィング時に顔の向きが大きく変わってしまう場合、頭部と体幹を分離して動かせないことが原因かもしれません。その場合、具体的にどこに問題があるかは、以下の二つのテストを行うことで確認できます。

画像: 画像C 両肩にアライメントスティックを当てて、顔の向きを変えないまま体幹の向きを変えることで肩のターンを発生させることができる

画像C 両肩にアライメントスティックを当てて、顔の向きを変えないまま体幹の向きを変えることで肩のターンを発生させることができる

画像Cの動作テストでは、上半身を頭部(と骨盤)から分離して動かすことができるかが確認できます。この動作に問題がある場合、バックスウィングの際に顔の向きが変わる、あるいは骨盤の向きも一緒に変わってしまうということが起きます。

画像: 画像D 頭部、両肩の向きを固定したまま、骨盤だけを動かす。感覚としては「おへそ」の向きを左右に変化させるイメージ

画像D 頭部、両肩の向きを固定したまま、骨盤だけを動かす。感覚としては「おへそ」の向きを左右に変化させるイメージ

また画像Dのテストでは、上半身を固定した状態で骨盤を動かすことで、下半身が体幹と分離して動かせるかを確認しています。この動作に問題がある例としては、骨盤がその場で回旋するのではなく、骨盤が左右に動いてしまうといったことが起きます。

これら2つの動作が問題なくできるのであれば、体幹部分を独立して動かすこともできるはずです。これらが不自由な場合は、ほとんどは柔軟性の問題ではなく動作の感覚の問題です。ピアノも練習をすれば左右の手や指を別々に動かすことができるようになると思いますが、上手く弾けないのは手や指の柔軟性がないからではありません。つまりある程度訓練で上達させることができます。

この体幹の分離能力が高いほど、画像Aのプロのように「ワイドなバックスウィング」にしていくことが容易になります。とはいえこうした動作は日常生活ではほぼ発生しない動作であるため、一般的には練習が必要になるというわけです。

しかしバックスウィングがワイドになっていくことで、上半身の捻転が深くなるだけではなく、トップのヘッドの位置もボールから遠くにできるため、助走距離を長くすることもでき、飛距離アップには絶対的に有利です。

できる人は画像B(両腕を伸ばしっぱなし、コックも入れない状態)の素振りを、またそれが困難な方は画像Cや画像Dの動作を行なっていくことで慣れていくことができます。そのとき体幹が捻られることで、腹部やわき腹などの筋肉にかなりのトレーニングになることも実感できるはずです。この冬試してみてはいかがでしょうか?

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