ゴルフに関する様々な理論に精通するインストラクター・大庭可南太が、アイアンとドライバーのショットの違いを、クラブヘッドの「最下点」から考える。

こんにちは。ゴルフインストラクターの大庭可南太です。さて今年は暖冬ということもあり、冬の時期でもラウンドをされた方も多かったと思います。また、天気予報を見ると、もう寒さのピークを過ぎたようなので、料金の安い2月中のラウンドを計画されている方もいるのではないでしょうか。

とはいえ冬場はどうしても芝の元気がなく、土が露出しそうな薄いライになっていることも多いので、「上から」「クリーン」にヒットしたいと考えることもあるでしょう。今回はその際に重要になる、「クラブヘッドの最下点」について考えてみたいと思います。

プロのクラブヘッドの最下点は「ボールの10cm先」

まずはスコッティ・シェフラーのアイアンショットのインパクトを見ていただきましょう。

画像: 画像A プロのアイアンスウィングのインパクト前後。ボールのあった位置のはるか前方の地面にクラブヘッドが着弾していることがわかる(写真はスコッティスコッティ・シェフラー 写真/KJR)

画像A プロのアイアンスウィングのインパクト前後。ボールのあった位置のはるか前方の地面にクラブヘッドが着弾していることがわかる(写真はスコッティスコッティ・シェフラー 写真/KJR)

写真を見ると、やや右足よりにあったボールを打っているにもかかわらず、そのはるか前方のターフを削っていることがわかります。ミドルアイアン以下のクラブでは一般にツアープロは、ボールの前方3〜5インチにクラブヘッドの最下点が来るとされていて、平均では4インチ(10cm)程度になるようです。

かたやアマチュアは「ダフる」、つまりボールの手前の地面にヘッドが落ちてしまうミスが起きるわけですから、ヘッドの最下点でいえば、もしかするとプロとは20cmくらい違っているかもしれません。

この最下点とハンディキャップには密接な関係があり、ローハンディになるほど最下点が前方になることがわかっています。

最下点は左肩の下

なぜハイハンディのゴルファーほど最下点が手前になってしまうのかは、前回のコラムで紹介したダウンスウィング時の「右手首の背屈」が速い段階で解けてしまうことが大きな原因ですが、そうしたエラーの発生を抑えることができればクラブヘッドの最下点も安定してくることになり、人体の構造上、最下点は左肩の真下になります。

画像: 画像B アイアンとドライバーでの、最下点とボール位置の関係。スタンスの幅と、ボールの位置を変えることで、スウィングアークのどこで打撃を行うかを変えることができる

画像B アイアンとドライバーでの、最下点とボール位置の関係。スタンスの幅と、ボールの位置を変えることで、スウィングアークのどこで打撃を行うかを変えることができる

写真B左の通り、地面から打つショットの場合は最下点よりもボールを右足よりに置けば、ヘッドは下降軌道でインパクトを迎え、その後地面に向かいます。いわゆるダウンブローになり、ダフることも(理論上)なくなるはずです。

この状態を上から見ると想定すると、最下点までクラブヘッドは(外側に振っていかれる)インアウトの軌道になり、最下点以降は(内側に振っていかれる)アウトイン軌道になっていることになります。

つまりアイアンショットをはじめとする地面にあるボールを打つ場合は、セオリー通りに、左足よりやや内側(正確には左肩の真下よりやや右足より)にボールを置くようにスタンスを取れば、クリーンに入ってインアウト軌道のドローボールが打てる「はず」なのです。

ではドライバーの場合はどうでしょうか。

ドライバーで「ハイドローを打つ」とか言うけど……

ドライバーはティーアップをしていることもあり、アッパー軌道で打つというイメージをお持ちの方も多いと思います。これは不可能ではないのですが、写真Bを見れば、アイアンとドライバーでそこまで極端にヘッドの入射角度を変えられるわけではないことがわかります。

トラックマンのデータで比較すると、プロの7番アイアンでは入射角度がマイナス4.3度(4.3度のダウンブロー)なのに対して、ドライバーはマイナス1.3度(1.3度のダウンブロー)となっています。つまりドライバーもアッパー軌道になっているわけではなく、ダウンブローの度合いが減っているという表現が正しいことになります。

画像: 画像C トラックマンのPGAツアープロの平均データ。クラブが短くなるにつれてダウンブローの度合いは増えるが、ドライバーだけアッパー軌道で打つというわけではない

画像C トラックマンのPGAツアープロの平均データ。クラブが短くなるにつれてダウンブローの度合いは増えるが、ドライバーだけアッパー軌道で打つというわけではない

レッスンの現場でも、「ドライバーの高さが出ない」という方がいらっしゃいますが、そうしたケースのほとんどは一生懸命高さを出そうとして「かち上げる」スウィングになっています。

それによってヘッドの加速ポイントも遅れ、またアッパーにするほどアウトイン軌道が増すことになり左に打ち出され、スライスもチーピンも出るあげく、スピン量も適正化しないためボールは意外と高くならないはずです。

そもそもドローボール(左に曲がる)を打つということは、右に打ち出せることが前提になります。アッパー軌道=アウトイン軌道(左にヘッドを出している)であることを考えれば、スタンスを右に向けるか、ボールを右足寄りに置いてインアウトになる調整をする、あるいは肩が開くのを抑えるなどの工夫をするしかありません。

そのうえでインサイドアウトのヘッド軌道よりもフェースが閉じた状態でインパクトをしないとドローになりませんが、昨今の大型ドライバーでそのような操作をするのはかなりの技術が必要です。

最近の新作ドライバーが慣性モーメントを増やす傾向にあることを考えれば、あまりドローにこだわらず、ターゲット方向からやや左に打ち出して、多少はフェードするかもしれないくらいのマネジメントを考えたほうが現実的と思います。

かつては「どちらかに曲げる」というのが上級者の証のような風潮がありましたが、昨今はボールもクラブも進化して「飛んで曲がらず高さも出る」ようになっていますので、その性能を素直に活かせるゴルフを目指したほうが良いと思うのです。

とどのつまり、アイアンではボールの先に最下点が来るようにして、ドライバーではあまりアッパー軌道やドローを意識せずに、目標にまっすぐヘッドを出せることを目標にするということになるのです。

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