本当の中元調子のFW/UT用シャフトは、実はあまり存在しない
まずは『LIN-Q EX FW/HY』(以下、LIN-Q)がどんなシャフトなのか解析することにした。持ち込んだ先は「4plus FITTING LABO」。ここでは5点の剛性を調べることで、シャフトの性格を可視化できる。チーフフィッターの吉川仁さんがさっそく計測。

シャフトの先端250㎜の位置から順に400㎜、550㎜、700㎜、850㎜の位置で圧力をかけ、その剛性を数値化。モデルごとの性格が可視化できる

「4plus FITTING LABO & GOLF SALON」チーフフィッターの吉川仁さん。元大手シャフトメーカーのエースフィッターとして活躍。シャフト開発にも携わり、アベレージからトッププロまで多くのゴルファーのフィッティングをこなす
解析を進めるうちに、吉川さんが「う~ん」と思わず唸る。
「いや、興味深いですね。先端の剛性は高めでしっかりしているのに、中間部から手元は結構しなやか。いわゆる“中元調子”系なんですが、実はこの手のFWやUT用のシャフトってあまり存在しないんですよ」

吉川さん曰く「先端はしっかりしていますが、(網掛け部分の)中間から手元にかけて、剛性が低く、かつ数値の上昇が緩やか」。この剛性変化はFW、UT用シャフトでは非常に少ないという
吉川さん曰く、特にFW用のシャフトには、ボールが上がりやすい先端がしなやかな先調子系のものが多く、パワーのある中・上級者の人が打つと、吹き上がったり、左右のブレが大きかったりと扱いづらさを感じることも少なくないという。
「もちろん他に中元調子がないわけではないのですが、そういうシャフトは、手元側もかなりしっかりしていることが多く、逆にしんどくなるケースも。結果、ドライバー用のシャフトの先端をカットして使う人が多いですね」
ドライバーのシャフトは、自分に合うものがわかっていてリシャフトしていても、FWやUTのシャフトとなるといまいち自信がない、そんな人が多いという。しかし、今回の『LIN-Q』はそんな悩みを抱えるゴルファーのひとつの答えになるかもしれないと吉川さん。
「解析データを読み取ると、次のような方に合いそうです。
・インパクトでロフトが増えすぎる
・当たりが薄いミスが多い
・左へのミスが多い
・スピン量が多い
・必要以上に球が上がる
シャフトの先端がめくれる(強くしなり戻る)ことがないので、スウィングのトレンドである“ハンドファースト”でインパクトしやすいはず。これは先端側に入っている素材“トレカ®M40X”の効果でしょう。トルク(ねじれ)も少ないので、打点が安定しない方にも合うと見ます」
スピン少なめのライナー系。そして打点ブレにすこぶる強い!
『LIN-Q』の性格がわかったところで、続いては試打計測で実態を把握していこう。
まずは『LIN-Q』のFW用シャフトから試打を開始。スペックは65S、ヘッドは「コブラ ダークスピード X」の5W(18度)のヘッドを装着した。

FWは65S、HYは85S。ヘッドはそれぞれコブラ ダークスピード X FW/キングテック ユーティリティメタルを装着
「正直、いい! いいシャフトです。ライナー系でスピンは少なめなので、基本的に飛距離性能が高い。解析結果から想定した通り、手元側がしなっていい意味でヘッドが遅れてくるので、ハンドファーストで当てやすい。強い球になるし、いま流行りのスウィングにマッチします。
中元調子なので手元は確かにしなやかなんですが、まったりした切り返しをする必要はなくて、スウィングテンポは問わない。このあたりはドライバーのシャフトと共通の“Q・Ply Core テクノロジー”によって、シャフトの余分なつぶれを防ぐからでしょう。
基本的に打点ブレの少ないシャフトですが、仮に打点がブレてもシャフトの動きが圧倒的に少ない。トウ側に当たっても、フェースが開く感じが抑えられるので、距離も落ちず、曲がり幅も小さい。自分の振りたいようにシャフトがついてきてくれますね。この安定感はすごいです」

「硬い感じがないのに、シャフトのつぶれが少なく、トルクも絞られている。インパクトの安定感がすこぶる高い」(吉川さん)

比較対象として、同社のATTAS MB FW(65S)もテスト。『LIN-Q』の低スピン性能が目を引く(GC クアッドで5球計測の平均値・以下同)
飛距離、弾道のばらつきが少ない、打点も安定。UTのシャフトはこうありたい
続いては『LIN-Q EX HY』(UT用)シャフト。スペックは85S、ヘッドはキングテック ユーティリティメタルの21度でテストした。
「振動数を計測してみたら300cpmと高め。結構しっかりしているシャフトです。なんですが、振ると手元の硬さは感じずに、FW用同様とてもしなやか。この心地よい振り感が『LIN-Q』の特徴ですね。でもトルクは少ないし、FWと同じく高弾性の素材を使っていることもあり、ボールの位置にビタッとフェースセンターが戻る感じがある。距離、方向性のばらつきが少ないですし、ボールを押していく力が強いです。UTはピンチのときに使うクラブでもあるので、余計な動きをしてほしくない。そういう点でもメリットの大きいシャフトだと思います」

『LIN-Q』のHYも、ボールを押し込めるので強い弾道で飛ばせる

比較モデルはATTAS MB HYの85S。HYでは『LIN-Q』のほうが落下角度が増え、グリーンで「止まる」球に
試打を終えた吉川さんに、改めて『LIN-Q』の感想を聞いた。

「ほどよいしなりがあるけど、しっかりしている。これが『LIN-Q』の特徴ですね。とても素直にしなるので、シャフトの挙動に影響されてゴルファー側が何か調整したり変な動きをしてしまうことがない。結果的に安定したインパクトを迎えられます。打点が不安定な人でも、当たり負けに非常に強いので、飛距離が落ちにくく方向性もズレにくい。
FWやUTは、ドライバーに比べて短くてロフトが大きく、アイアンに比べて重心が深いという左に行きやすい要素が多々あるクラブ。それを嫌がる中・上級者は多いのですが、そんな悩みを持つ方にもぜひ試してみてほしいシャフトです」
『LIN-Q』はハードヒッター向けの印象があるかもしれないが、「しなやかにしなるので、ドライバーのヘッドスピードが41~42m/sあれば、スペック次第で十分使えます」と吉川さん。

FWは50グラム台のSから展開している
FWやUTに苦手意識を持つ人も多いが、思い切ってシャフトを替えることでその印象は一変するかもしれない。リッキー・ファウラーをはじめ、世界的にも信頼を勝ち取っている『LIN-Q』。今までにない領域に踏み込んだ稀有な性能を味わってみてはいかがだろうか。
撮影/有原裕晶 協力/4plus FITTING LABO & GOLF SALON
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