スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる、コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」。このアプリを活用しているゴルフコーチ・北野達郎に今季3勝目を最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」で挙げた、桑木志帆のスウィングを解説してもらった。

こんにちは。SPORTSBOX AI 3Dスタッフコーチの北野達郎です。今回は、国内女子ツアー最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」でメジャー初優勝を見事に成し遂げた桑木志帆選手をスポーツボックスAIで分析してみましょう。桑木選手のスウィングの特徴は、

①両腕の三角形が保たれたテークバック
②胸と骨盤の捻転差を保って切り返せるから、ハンドパス(手の軌道)の再現性が高い

以上の2点いなります。また後半では、フェードヒッターの桑木選手にまつわるエピソードもご紹介しています。それでは早速チェックしてみましょう!

画像: 今季3勝目をメジャー初制覇で飾った桑木志帆(写真/岡沢裕行)

今季3勝目をメジャー初制覇で飾った桑木志帆(写真/岡沢裕行)

両腕が伸びて、三角形が保たれているテークバック

まず1つ目の特徴は、両腕が伸びたテークバックです。スポーツボックスAIのデータ項目「LEAD ELBOW FLEXION」は左ひじの屈曲角度を表しますが、桑木選手はアドレスと171度、P2(シャフトが地面と平行のポジション)で172度と、ほとんど変わらないことがわかります。

画像: 画像1 アドレスとテークバックの比較/両腕が伸びているので、左ひじの角度がほとんど変わらないことがわかる

画像1 アドレスとテークバックの比較/両腕が伸びているので、左ひじの角度がほとんど変わらないことがわかる

左ひじの角度が変わらず両腕が伸びたテークバックのメリットは、「スウィングアークが大きくなる点」や、「スウィングの再現性が高まる点」が挙げられます。昔からレッスンでは「両腕の三角形を保ってテークバックしましょう」と言われていますが、桑木選手も両腕の三角形をキープしてテークバックするタイプといえるでしょう。

胸と骨盤の捻転差を維持して切り返すと、手は後からついてくる

続いてトップから切り返しを見てみましょう。トップでは胸の回転がマイナス91度(右)、骨盤の回転がマイナス45度(右)、胸と骨盤の捻転差を表す「X-FACTOR」はマイナス48度(右)の捻転差があります。余談ですが、X-FACTORは胸の回転角度マイナス91度から骨盤の回転角度マイナス45度を引いた数字(=マイナス46度)だけではなく、別の要素(※)も入るのでマイナス48度になっています。そして切り返しのP5(左腕が地面と平行)のポジションでのX-FACTORはマイナス42度で、トップから切り返しでも捻転差は維持しているがことがわかります。
※スポーツボックスには「X-FACTOR ストレッチ」という項目があり、骨盤の回転角度の最大値(桑木選手だと47度)にトップの回転角度45度を引いた合計値が「X-FACTORストレッチ」になります。例えばトップで胸90度、骨盤45度だとしても、トップ直前で骨盤が47度だったら2度の「X-FACTORストレッチ(骨盤の切り返し)」が発生しているので、捻転差45度+X-FACTORストレッチ2度を足すと、X-FACTORは47度という計算式になる

画像: 画像2 トップと切り返し(P5)の比較/胸と骨盤の捻転差が保たれているのがわかる

画像2 トップと切り返し(P5)の比較/胸と骨盤の捻転差が保たれているのがわかる

そして、トップから切り返しのアバターのハンドパス(手の軌道)に注目すると、バックスウィングとダウンスウィングで手がほぼ同じ軌道を通っているのがわかります。桑木選手のコーチをしている中村修プロに実際にお話を伺った際に、「トップから切り返しにかけてのキネマティックシークエンス(動きの順番)である横移動→回転→伸展が、スムーズにできているかは常にチェックしている」とのことでしたが、桑木選手のように切り返しで捻転差が保たれていると、その動きの順番がスムーズにできているか否か? の良いチェックになります。

画像: 画像3 一般アマチュア(左)の例と桑木選手(右)のアバター比較/捻転差の維持の差がハンドパスにも違いで表れている

画像3 一般アマチュア(左)の例と桑木選手(右)のアバター比較/捻転差の維持の差がハンドパスにも違いで表れている

切り返しのアバターの比較で、左は一般アマチュアの例、右は桑木選手ですが、捻転差がマイナス28度と既に減少しているアマチュアは、ハンドパスが前に出てアウトサイドイン軌道になっていますが、捻転差を保って切り返している桑木選手は、ハンドパスが前に出ずにバックスウィングと同じ軌道を通っています。桑木選手の持ち球はパワーフェードですが、その秘訣は切り返しを下半身から順番に始動して捻転差が保たれた結果、アウトサイドイン軌道ではなくプレーンに沿って手とクラブが下りてくるので、スライスではなく球がつかまったパワーフェードが打てるのでしょうね。

ホールによってドロー・フェードの打ち分けをせず、得意な球で攻める強さ

最後にフェードヒッターの桑木選手らしいエピソードを1つご紹介します。私が中村プロと「伊藤園レディス」の試合中について歩くと、あるホールのティーショットで左前に木が迫り出していて、「フェードヒッターには打ちにくそうだな」と感じる場面がありましたが、桑木選手はティーイングエリアの真ん中に立って、平然と木のスレスレから得意のフェードを打っていました。

中村プロによると「持ち球のフェードの曲がり幅をコントロールしながらでコースマネジメントを組み立てている」とのことでしたが、左前に木が迫り出した狭いターゲットラインに対して、右に立つこともなく迷いなくスレスレを打っていくフェードの精度と、自信に満ちたスウィングが非常に印象的でした。

左前に木がが立ち並んでいると「右からドローで打ちたい」と思いがちですが、桑木選手のように「曲がり幅をコントロールした持ち球で攻める」コースマネジメントは、ゴルフをなるべくシンプルに組み立てる上で、アマチュアの方にも大いに参考になるでしょう。

今回は、桑木 志帆選手のスウィングを解説させていただきました。コーチを務める中村プロと試合を観戦した桑木選手が、最終戦の国内女子メジャーに優勝して個人的にも非常に嬉しい勝利でした。桑木選手の来シーズンの活躍に期待しましょう!

桑木志帆のドライバー後方連続写真はこちらから

コーチ・中村修が桑木志帆のスウィングを解説

This article is a sponsored article by
''.