
冬の河川敷コースは、リンクスでのプレーが疑似体験できる
スコティッシュ・ゴルフのすすめ
もう2024年もわずか。年末のコンペもだいたい終わったところでしょうか。なかには「もう春までゴルフはお休み」という方もいらっしゃるかも知れません。でもそれでは私的には、もったいないと感じてしまいます。
厳寒期に向かうこの季節。私が足を向けるのは、「河川敷コース」です。荒川や多摩川など、首都圏の大きな河川の河川敷には、多くのゴルフ場が造られていますが、一般的には「コースデビューに最適なビギナー向け」というイメージが強いかも知れません。
この時期の河川敷コースは、芝が冬枯れてティーもフェアウェイ、グリーンもほぼ茶色に染まります。慣れていないコースだと、次のホールが分からなくなったり、間違って違うホールのグリーンを狙ってしまったりします。平坦で木も低く、遮蔽物も少ないので風の影響を大きく受ける「吹きっさらし」のコースがほとんどです。
こうした風景は、ゴルフの原点、スコットランドのリンクスコースそのものです。
リンクスとはその名の通り、海と陸がリンクする場所、原初のリンクスは、海辺の砂丘に芝が自生した土地でした。河川敷コースは厳密にはリンクスとは呼べないのですが、冬の河川敷コースの茫洋たる風景はスコティッシュリンクスそのもの。
そう、この時期、河川敷コースではゴルフの原点、リンクスでのプレーを疑似体験出来るのです。本場のリンクスでは多くのコースが手引きカートで歩いてのプレー。日本では乗用カートの導入が進み、歩いてプレー出来るコースはどんどん減っていますし、手引きカートや担ぎで出来るコースはほぼ河川敷コースに限られていると言ってもいいでしょう。
河川敷でも乗用カートを導入しているコースもありますが、あえて歩けるコースを選びます。寒さ対策は万全にしますが、カートを引いて歩くスタイルだと意外と身体が暖まります。そしてクラブもフルセットは不要。私の場合、大抵9本くらいのクラブをコンパクトなバッグに入れて、さあスタートです。
風の強い冬の河川敷では高いボールは禁物。ドライバーでもティーを低くして、地を這うようなボールをイメージします。固く締まったフェアウェイはランで距離を稼げます。
そうそう、河川コースはティーも固いところが多いので、短めのティーは必須アイテムです。
グリーンを狙うのも、とにかく手前から。花道が開いているホールなら、グリーン50ヤード手前からパターや7番アイアンでのランニングアプローチで攻めるのも、全英オープン的、リンクスゴルフの醍醐味です。
それからなんと言っても風と戯れるのがリンクスゴルフ。スコットランドのゴルファーは、風の強い日を「ゴルフ日和」と呼んで勇んでコースに出ていくそうです。
強い向かい風なら、大きい番手を選んでハーフショット。強振しないことが風の中でのプレーの鉄則です。また少ない本数でプレーすることで、スリークォーターやハーフショットなどの機会を増やし、敢えてそうしたショットを楽しむのです。
もう一つ、河川敷コースの特徴は、「一般社会との距離が近いこと」。
土手の上にはランナーや自転車、犬を連れた散歩の人々、少し目線を上げれば鉄橋を渡る通勤電車や、高速を走るトラックなど、ゴルフ場という非日常の場に居ながら、日常の風景が隣り合わせ。この感覚は他ではなかなか味わうことが出来ません。
ネット際でボール探しをしていたら、通学途中の小学生が「もっと左だよ!」と教えてくれたこともありました。
そうそう、川面で戯れる冬鳥の姿を間近に楽しめるのも河川敷ならではですね。
厳冬期ならではの河川敷コースでのリンクスゴルフ。冬ゴルフの楽しみ方の一つに加えていただけたらと思います。