2024年の国内女子ツアーは初優勝から8勝を挙げた竹田麗央が年間女王に輝いた。みんなのゴルフダイジェスト特派記者として19試合、桑木志帆のコーチとして18試合と全試合に帯同したみんなのゴルフダイジェストの特派記者でプロゴルファーの中村修が24シーズンを振り返る。

22,23年と年間女王に輝いた絶対女王の山下美夢有選手に対して、どんな選手が挑むことになるのかという図式で開幕を迎えました。開幕戦は岩井千怜選手と西郷真央選手の一騎打ちとなり岩井千怜選手が制すると、2戦目、3戦目を鈴木愛選手が連続優勝しオフからのトレーニングの成果を早速発揮しました。

画像: 開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」を制した岩井千怜(写真/岡沢裕行)

開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」を制した岩井千怜(写真/岡沢裕行)

4戦目の「アクサレディス」では推薦出場から臼井麗香選手が初優勝を飾り、5戦目の「ヤマハレディースオープン葛城」では初優勝を狙う竹田麗央選手を仲の良い小祝さくら選手がこれを阻んで今季初勝利。5戦目「富士フイルムスタジオアリス」では佐久間朱莉とのデッドヒートを制した阿部未悠選手が初優勝を飾りました。

そして熊本で開催された「KKT杯バンテリンレディス」で「優勝は転がり込んでくるもの」と祖父からの教えの通り、自分のプレーに徹した竹田麗央選手が見事に地元で初優勝を飾ると2週連続優勝の快挙を達成します。

画像: 地元熊本の「KKT杯バンテリンレディス」で初優勝から2週連続優勝を挙げた竹田麗央(写真/姉崎正)

地元熊本の「KKT杯バンテリンレディス」で初優勝から2週連続優勝を挙げた竹田麗央(写真/姉崎正)

「パナソニックオープンレディース」では開幕以降好調を維持していた天本ハルカ選手の初優勝、韓国のアマチュアであるリ・ヒョソン選手の「サロンパスレディス」の優勝と初優勝が続き、5月には岩井明愛・千怜姉妹と竹田選手がそれぞれ勝利を手にし、山下選手に挑むのは岩姉妹と竹田麗央選手という図式が徐々に見えて来ていました。

6月に入ると「サントリーレディス」で持ち球をドローからフェードに変えた大里桃子選手が3年ぶりの3勝目を飾り、岩井明愛選手が今季2勝目を挙げ、悪天候の影響で月曜日の予備日まで持ち越した「アースモンダミン・カップ」を小祝さくら選手が制しました。

そして昨年のプレーオフで敗れた桑木志帆選手が「忘れ物を取り来た」と「資生堂レディス」で初優勝を飾ると、川﨑春花選手が1年7カ月ぶりの勝利から2週連続優勝を果たします。

画像: プレーオフで敗れた昨年のリベンジを果たし初優勝を挙げた桑木志帆(写真/姉崎正)

プレーオフで敗れた昨年のリベンジを果たし初優勝を挙げた桑木志帆(写真/姉崎正)

絶対女王の山下選手は、序盤こそスロースタートになりましたが4戦目の「アクサレディス」で2位で終えると翌週の「ヤマハレディースオープン葛城」の15位タイ以降、10月の「三菱電機レディス」までトップ5を外したのはわずかに2試合(7位が2回)と抜群の安定感を誇りました。

画像: 圧倒的な安定感で今季2勝から米女子ツアーの予選会トップ通過を果たした山下美夢有(写真/有原裕晶)

圧倒的な安定感で今季2勝から米女子ツアーの予選会トップ通過を果たした山下美夢有(写真/有原裕晶)

またパリ五輪出場を目指して出場した「KPMG全米女子プロ選手権」で2位に入り、上位にいた古江彩佳選手をかわして代表入りを果たし、終盤までメダル争いを展開、4位で終えました。5大会ある海外メジャーとパリ五輪に出場したこともあり国内ツアーの出場は25試合にとどまり、優勝こそ2回でしたが、圧倒的な安定感でポイントランクは2位で終えました。その後米女子ツアー参戦のための12月の最終予選をトップ通過し25年は本格参戦することになります。

8月に入ると竹田選手が4勝目を挙げ、上位フィニッシュが続き復調をアピールしていた河本結選手が「NEC軽井沢72トーナメント」で5年ぶりのツアー2勝目を飾り、「CATレディス」で川﨑春花選手が今季3勝目、「ニトリレディス」では全英女子オープンに行かずに国内に残った桑木志帆選手が2勝目、全英帰りの竹田選手が「ゴルフ5レディス」で5勝目を挙げます。

竹田選手の勢いが止まりません。有り余るほどの飛距離も体力も身に付けた竹田選手は、まだまだ勝ちそうだとメディアも選手達からも声が聞こえていました。その翌週9月に入ると「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」で再び2週連続優勝を成し遂げ6勝目を国内メジャーで飾り、月末の「日本女子オープン」も制してメジャー2冠を達成します。

画像: 「日本女子プロゴルフ選手権」と「日本女子オープン」の国内メジャー2冠を達成した竹田麗央(写真/姉崎正)

「日本女子プロゴルフ選手権」と「日本女子オープン」の国内メジャー2冠を達成した竹田麗央(写真/姉崎正)

その間、岩井明愛選手の今季3勝目があり、「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」では安田祐香選手が初優勝を飾りました。

10月に入りシード権争いも視野に入る中でシード圏外から佐藤心結選手が「スタンレーレディスホンダ」で今季8人目初優勝を飾り、10月に入ると安定した成績を続けていた山下選手が「富士通レディース」で古江彩佳選手をプレーオフで破り今季初優勝。飛距離が落ちて来たことで大嫌いなトレーニングを始めたというイ・ミニョン選手が今季30代以上での初優勝を「NOBUTAグループマスターズGCレディース」で飾りました。「三菱電機レディス」では岩井千怜選手が優勝し、2位に岩井明愛選手と姉妹で躍動し地元大会を大いに盛り上げました。

画像: それぞれ3勝を挙げ米女子ツアーの予選会も上位で通過した岩井明愛(右)・千怜(左)姉妹(写真/姉崎正)

それぞれ3勝を挙げ米女子ツアーの予選会も上位で通過した岩井明愛(右)・千怜(左)姉妹(写真/姉崎正)

残るは4戦。米女子ツアー参戦を表明する山下選手、岩井姉妹、竹田選手らのポイントランク上位陣は勝てば2年間のシード権が手に入る「TOTOジャパンクラシック」へと照準を定めていたことでしょう。初日に9バーディノーボギーと気を吐いたのは脇元華選手。コ・ジンヨン、キム・ヒョージュ、古江彩佳選手らの実力者が上位に名を連ね、岩井千怜選手は4アンダー10位タイ、竹田選手は3アンダー15位タイ、山下選手は2アンダー34位タイ、岩井明愛選手はイーブンパー56位タイからのスタートとなりました。

2日目に65を叩き出した竹田選手が首位の脇本選手に3打差まで迫り一気に4位タイに浮上。岩井千怜選手も68でプレーし5打差の8位タイ、山下選手も68と伸ばし21位タイまで順位を上げます。3日目は悪天候の予報で中止になり3日間の短期決戦となった最終日は、最終組が伸び悩む中で飛距離を武器にスコアを5つ伸ばした竹田選手と正確性を武器に戦うマリナ・アレックス選手との一騎打ちとなりプレーオフに突入。6ホールの死闘の末、竹田選手が今季8勝目を挙げ米ツアーへの切符を手にしました。

画像: 「TOTOジャパンクラシック」の優勝で米女子ツアーの切符を手にした竹田麗央(写真/大澤進二)

「TOTOジャパンクラシック」の優勝で米女子ツアーの切符を手にした竹田麗央(写真/大澤進二)

11月に入り「伊藤園レディス」では73位にランクしていた山内日菜子選手が17番ホールのチップインバーディで2勝目を狙った安田祐香選手を振り切り今季初優勝を飾ると、予選落ちした竹田選手の年間女王獲得が決定し、会見はリモートで行われました。

シード権争いの最終戦「エリエールレディス」ではパターをチェンジした山下選手が完全優勝で今季2勝目を飾り、来年以降ツアーを休止すると発表した上田桃子選手を予選ラウンドのあとに有志達がセレモニーを行いました。いつもツアー会場にいるのが当たり前の選手がいなくなることの寂しさを改めて感じましたね。
 
河本結、渡邉彩香、岡山絵里、内田ことこ選手らがシード権復活し、初シードを決めたのは鶴岡果恋、小林夢果、小林光希、ウー・チャイェン、リ・ヒョソンらとなりました。

そして最終戦の「JLPGAツアー選手権リコー杯」では、歴代優勝者はドローヒッターばかりの宮崎CCでフェードヒッターの桑木志帆選手が見事に国内メジャー初勝利と今季3勝目を飾り幕を閉じました。

画像: 最終戦の「JLPGAツアー選手権リコー杯」で国内メジャーを制し今季3勝を飾った桑木志帆(写真/岡沢裕行)

最終戦の「JLPGAツアー選手権リコー杯」で国内メジャーを制し今季3勝を飾った桑木志帆(写真/岡沢裕行)

こうして振り返ると、初優勝から8勝し米女子ツアーの切符も手にした竹田選手の勢いと成長っぷりには誰もが驚いたことでしょう。山下選手は期待していた通りの安定感は健在で、米ツアー予選会もトップ通過と実力通りの力を発揮しました。同じく岩井明愛・千怜姉妹も国内でそれぞれ3勝を挙げた実力を発揮し二人そろって米女子ツアー参戦を決めました。大きく成長した選手としては、一時不調に陥っていた川﨑春花選手は復活優勝から3勝を挙げましたし、初優勝から3勝を挙げ国内メジャーも制した桑木志帆選手もその一人です。プロデビューから2、3年で一気にトップレベルまで駆け上がる選手が多くなり、その成長の速さと勢いには驚かされます。

一方で女子ツアーの若年化も見えて来ています。山下美夢有、竹田麗央、岩井姉妹、桑木志帆、川﨑春花選手などの20代前半の選手層と小祝さくら、河本結、大里桃子、新垣比菜、天本ハルカ選手などの26歳になった黄金世代は中堅。そしてそれよりも年上はベテラン勢ということも浮き彫りになっています。上田桃子選手はツアーから撤退しましたが、藤田さいき(39歳)、穴井詩(37歳)、菊地絵理香(36歳)選手たちはそれぞれの持ち味を生かし輝きを放っています。それぞれの世代で活躍する選手が多く存在していることも選手層の厚さやファンの獲得につながっています。

画像: 黄金世代の小祝さくらはメルセデスポイントランク4位でシーズンを終えた(写真/有原裕晶)

黄金世代の小祝さくらはメルセデスポイントランク4位でシーズンを終えた(写真/有原裕晶)

ルーキーとして今季を戦い惜しくもシード権獲得はなりませんでしたが、ファイナルQTから勝ち上がって2年目を迎える菅楓華、政田夢乃選手、そして新たにプロテストを通過しレギュラーツアーに参戦するルーキーたちも来季は盛り上げてくれることでしょう。

JLPGAが世界で活躍する選手を輩出するための取り組み、例えば4日間大会を増やすことやコースセッティングなどの成果もあり、21年の予選会では渋野日向子、古江彩佳選手、22年は勝みなみ、西村優菜選手、23年は西郷真央、吉田優利選手と国内ツアーのトップレベルの選手であれば、米女子ツアーの予選会を突破しフル参戦できる道が開けていましたが、今季の予選会でもその図式は証明された形となりました。多くの選手が米女子ツアーに参戦することで空洞化を心配する声もありますが、来季も第二、第三の山下美夢有、竹田麗央になる選手が必ず現れます。

来季の展望については別の記事で書きますのでお楽しみに!

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