25年の米女子ツアー出場権を新たに手にしたのは最終予選会(Qシリーズ)を突破した山下美夢有、岩井明愛・千怜、吉田優利、馬場咲希の5名と「TOTOジャパンクラシック」で優勝した竹田麗央の6名。みんなのゴルフダイジェスト特派記者でプロゴルファーの中村修がその展望を語る。

24シーズンは既に米女子ツアーで活躍する、笹生優花選手の全米女子オープン2勝目、古江彩佳選手は「アムンディ・エビアン選手権」でメジャー初制覇と日本勢2人のメジャー優勝という快挙が記憶に新しい。

2人の他にも畑岡奈紗、渋野日向子、勝みなみ、西郷真央、西村優菜といった日本勢が参戦しそれぞれ紆余曲折はありながらも結果を残せていることは、国内ツアーでトップクラスの選手になれば米女子ツアーでも活躍できることを身をもって証明し続けていることになっています。

画像: 25シーズンに新たに米女子ツアーに参戦する6名(左から時計回りに山下美夢有、竹田麗央、岩井千怜、馬場咲希、吉田優利、岩井明愛)

25シーズンに新たに米女子ツアーに参戦する6名(左から時計回りに山下美夢有、竹田麗央、岩井千怜、馬場咲希、吉田優利、岩井明愛)

ただし、国内と違って移動距離の長さや時差、コースや芝の違い、宅急便がないこと、食事、言葉の壁など海外での生活に対する準備や覚悟、チーム体制といった環境作りはゴルフに集中する上でとても重要な要素になります。

年末にコーチ陣と座談会をした際に、LIVゴルフに参戦する香妻陣一朗選手をサポートする森守弘コーチは、海外ツアーで重要なことは「アウェイ感をなくすこと」と話していました。国内ツアーであっても初参戦のシーズンにはルーキーたちは練習場の端っこで練習していますし、初めてプレーするコースも多く、移動や練習のペースなどに慣れてきてツアーが自分の居場所として「アウェイ感」を感じなくなるまでには、ある程度の時間や経験が必要だと感じています。

それでも国内であれば言葉の壁もありませんし、北海道と沖縄では芝の違いはありますが海外のような違いを感じるほどではありませんので、アマチュア時代からツアーに出場した選手にとってはルーキーの1年目でシード権を獲得することも珍しくはありません。

しかし、米女子ツアーは国土の広いアメリカだけでも東西南北で時差もあり、気候の違いから芝の種類も変わり、アジアシリーズだけでなくAIG(全英)女子オープン、アムンディ・エビアン選手権といった欧州での試合も組み込まれているので特に1年目は大変なシーズンになるはずです。

ほとんどの選手はご両親や母親が帯同するケースが多いと思いますが、家族が身近にいることは大きな支えとなりますし、マネージャーや通訳などのアテンダントの役割も重要です。そういう意味でも「アウェイ感」のある孤立しがちな1年目のチーム体制はとても重要な要素になることでしょう。

上記のような準備をある程度クリアできていると仮定しても、今季から参戦する山下、竹田、岩井明愛・千怜選手と2年目を迎える吉田優利、馬場咲希選手とは分けて考える必要がありそうです。吉田選手は1年目の昨シーズンは思うような結果を出せずにQシリーズに再挑戦し見事に突破。2年目の今シーズンは昨年からの学びを生かして着実に階段を登って行くことでしょう。

一方の日本のプロテスト合格後に海を渡った馬場選手は「留学に出したつもりで一人で下部ツアーに参戦」と話していた父・哲也さんの言葉の通り、1年間武者修行のような下部ツアーを戦い抜き、QシリーズからLPGAへの道を自らの手で切り開きました。一時帰国した国内ツアーでは一回りたくましくなった馬場選手を見て、自分のペースで一歩ずつ前に進んでいるなと感じました。今季も様々な経験を経てシード選手への道を歩むことでしょう。

画像: 米女子ツアー最終予選「Qシリーズ」でトップ通過を果たし今季からフル参戦する山下美夢有

米女子ツアー最終予選「Qシリーズ」でトップ通過を果たし今季からフル参戦する山下美夢有

そして参戦1年目となる山下、竹田、岩井明愛・千怜選手はというと、山下選手は抜群の安定感と海外メジャーでの豊富な経験を踏まえて自分のゴルフを見失わない強さがあると思います。正確なショット、アプローチやパットの技術にメンタル面の安定から、コースがハマれば優勝も狙える位置で戦う姿が見られるはずです。

対照的に飛距離を武器に攻めるプレースタイルの竹田選手ですが、叔母で米女子ツアー参戦経験もある平瀬真由美プロは、「TOTOジャパンクラシック」で優勝した際に「簡単には通用しない」という辛口コメントを現地で聞いていましたが、「イチからやり直すくらいのつもりでやってほしい。日本ツアーでは姉(竹田にとっては母)と一緒に車で転戦しながら、少しずつ自分の地位を良くしていって、優勝に繋げていった。あまり行ったり来たり(日米の往復)はしないほうが良いかな」と武者修行のような気持ちでトライして欲しいと話していました。

画像: 「TOTOジャパンクラシック」の優勝で2年間のシード権を手にした竹田麗央

「TOTOジャパンクラシック」の優勝で2年間のシード権を手にした竹田麗央

今季の成績はショット力にプラスして「アプローチの技術が上がったから」と竹田選手は話していたので、芝質が毎試合のように変わるアメリカでどう対応するかは見てみたいですね。

二人そろっての参戦となった岩井明愛・千怜選手は、やはり二人で切磋琢磨しながらここまで登って来ていたので、二人ともQシリーズを突破できたことは大きいと思います。コースセッティングやコンディションなどお互いに話すこともできますし、どちらか一人が好成績を収めれば、もう一人も追いつき追い越せで頑張る姿が想像できます。家族全員で英会話も教わっているというので「アウェイ感」も早い段階で払拭できるかもしれません。

画像: Qシリーズを2位で通過した岩井千怜(左)と5位通過の岩井明愛(右)

Qシリーズを2位で通過した岩井千怜(左)と5位通過の岩井明愛(右)

グリーンに関して言うと、転がりは国内ツアーのほうが優れているので、その週のグリーンにどれだけ対応できるかは大きな課題になると思います。2年前に西海岸での「シェブロン選手権」、と「JTBCクラシック」での現地取材で感じたのは、当時会場となっていたミッションヒルズCCのグリーンは転がりも良好で渋野日向子選手は4位でフィニッシュしましたが、翌週のサンディゴ開催の「JTBCクラシック」では西海岸特有の芝質に手を焼き下位で終えていました。

ジャストタッチだと切れてカップを外れ、強めのタッチだとすり抜けることが続くとメンタル面も削られます。国内ツアーのように各メーカーがバスを用意して選手をサポートする体制ではないので、予備のパターを用意するなど、どれだけ準備できるかもポイントになりそうです。そう簡単には行かないと思いますがどの選手にも優勝の可能性は大いにあると思いますし、日本勢同士が上位で争う場面も見られることでしょう。

いずれにしても先に参戦している日本人選手から情報をもらえるでしょうし、時には食事を共にしたり楽しく過ごす時間もあるはずです。メジャー制覇も夢ではない位置まで迫っている日本勢の活躍には期待しても期待し過ぎることはないはずです。

写真/有原裕晶、岡沢裕行、大澤進二、姉崎正

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