ツアー支給品のスピンは一度味わったら病みつき
ビタビタ寄せるツアープロのアプローチを目にするたび、その技術の高さに感服せざるを得ないが、見逃してはならないのは、彼らが手にしているウェッジもまた特別だということ。中でもブリヂストン(以下・BS)契約のプロが使用するレースエンジン開発メーカー・無限とのコラボウェッジは、極めて精度が高く、スピン性能に優れると注目を集めている逸品だ。

精密さの極致を目指し、フルミルドで削り出されるBSと無限のコラボウェッジ
両社が初めて共同開発のウェッジを作ったのは2009年。それは新溝ルール施行後でもしっかりスピンをかけるという意図に基づいたものだった。BSが設計図を描き、無限が忠実に具現化、その試作品はツアーで高い評価を得た。当初はプロへの支給だけだったが、2015年にはツアープロ用と同じ製造、性能を持つウェッジを市販化。以来一部のコアなゴルファーに支持され続けている。
「フェースに乗る感じがウェット時でも味わえる」(宮里優作)
「フェースに乗る感じがすごくて、特にウェット時に効果が高いと感じています。フルスコアライン仕様は、トウヒットさせた時でもよりスピンをかけやすいですね」
そして新たに第5世代の「Bリミテッド バイティングスピン フルミルド」が誕生した。一貫しているのは〝強いスピン〞が〝安定して〞かかるという点だ。その理由はいくつかあるが、まずはフェース面が極めて平滑であること、そして溝をルールギリギリまで攻めていること、さらには超精密加工のミーリングが施されていることなどだ。
ルールギリギリを攻めた溝の間には、平行に走らせた鋭角のミーリングが施されている。ボール の“乗り感”がさらに高まり、強くかつ安定したスピン性能を発揮する
平滑なフェース面は安定したスピン性能を生み、すべての溝をルールギリギリに作れる高い技術力があれば、個体差を考慮した余裕を持たせた設計にしないで済む。ミーリングも1000分の1ミリの精度を常識とする無限の手にかかれば、比類なき仕上がりが約束される。これを1台のマシニングセンタでほぼ完成形まで削り出すのだから驚きだ。また最新作は、1兆分の1秒パルスの微細なレーザーミーリングも施し、排水性を高めている。
左の状態が鍛造後のヘッド。打感の良さも追求し、硬化しすぎないよう叩く回数と圧力を抑えてい
る。そこからマシニングセンタで削り出し、完成形に近い状態までもっていく
量産できないため正直値段は張るが、ツアーレベルの真のスピン性能を体感したい人や、一打の重みを知る競技派にとっては、その価値を十分に味わえる一本に違いない。
もっと大きな鉄塊から削り出すことも

プロに支給するプロトタイプの場合は、好みの形状が多岐にわたるため、それらを包括できるより大きな状態の鍛造ヘッドから削り出すことも少なくない
形状、溝、フェース面……BSと無限の熱意がミクロのずれも許さない!
極限の精度を実現するマシニングセンタ。一度に8個のヘッドを削り出す。フェース面の加工だけで11種類の刃を使用するが、精度のために例えば20個作れるところを10個で刃を交換するなど管理を徹底している。

一度に8個のヘッドを削り出す

1台で何役もこなすスグレもののマシニングセンタ

ボスと呼ばれる接合部を作り、そこをマシンに固定することで設計とミクロン単位でたがわぬヘッドに仕上がる

完成品(右端)は鍛造後のヘッド(左端)に比べ6割弱の重さ。かなりの重量を落としながら削り出していることがわかる
無限(MUGEN)とは
モータースポーツのパーツ設計、製造、試験など一気通貫で行うメーカー。屈指の技術力を持ち、自社のレーシングチーム及びHONDAの様々なレースシーンに関わる。

F1マシンに搭載されていたエンジン

無限のショール―ムには実際のF1マシンなどが所狭しと展示されている
BRIDGESTONE B-Limited BITING SPIN フルミルド
BSと無限のコラボで生まれた第5世代、「B-Limited BITING SPIN フルミルド」。他が真似できないフェース面の平滑性、極めて精密な溝やミーリングが安定したスピンを確保する(価格:11万2200円[税込]~)※ブリヂストンが主催する試打会・フィッティング会にて注文が可能

BRIDGESTONE B-Limited BITING SPIN フルミルド

フルスコアライン(右)が新登場!
BITING SPIN ウェッジの評価も高まっている
BSと無限の精度を追求する取り組み姿勢や製品性能は、通常モデル「BITING SPIN ウェッジ」にも注入されている。こちらもスピン性能の高さは折り紙付きだ。
写真/有原裕晶