今年2戦目となる西村優菜に心強い味方が戻ってきた。中学2年生の頃から指導、その後一度は離れていた中島敏雅コーチと再びタッグを組み、今シーズンを戦うことになったという。Honda LPGA THAILANDにも中島コーチは帯同、西村のスウィングチェックを行なっていた。

「“中2”から指導しているので、ほぼ全てを知っています(笑)」と話す中島コーチと西村優菜
西村といえば、飛距離こそ出るほうではないものの、綺麗なドローボールで正確にフェアウェイをとらえるショット力が魅力の選手だ。アメリカではまだ日本で戦っていたときのような活躍はできていないが、昔から知っている中島コーチの目にはどう見えているのか?
「もともと上手い選手ですから、これから大きくどうこうしようということでもないんです。スウィングのクセは知らない間にいい方向にも悪い方向にいってしまいますから、そこをチェックしている感じですね。ちょっとした部分なんですが、トップから切り返しの動きが気になりますね」(中島コーチ)

中島コーチが「ちょっと気になる」といった西村の切り返し前後の連続写真
スウィングにおいてトップから切り返しの動きが最も難しいとされている。動きが切り替わる瞬間だけに、アマチュアゴルファーの多くはここで大きなエラーが発生してミスになることが多い。もちろんプロとアマで程度の差はあるが、プロにとってもナイススウィングを決めるうえで重要な部分だ。
「切り返しが上手くいかないとダウンスウィングで軌道が安定しないので、結果インパクトもズレてしまうんですよね。彼女はドローヒッターなんですが、トップでシャフトがややクロス気味に入ってきて、そこから上体で切り返すので、切り返しはややカットの動きになるんです。でも、ドローが打ちたいのでそこから無理やりクラブをインサイドへ持っていく。動きとしてチグハグな状態になることがあるので、そこを修正しています」(中島コーチ)
リリースは決して悪い動きではない
ただ、切り返しのこの動きはカット方向だけでなく、インサイド過ぎる方向に動くこともあるという。その間の“ちょうどいい部分”を探りながら調整を重ねていっているという。もうひとつ、“手首”の使い方もチェックしているポイントだと中島コーチ。
「リリースをするクセがある選手なので、そこのタイミングがズレてくるとインパクトが安定しなくなってきますよね。ただこれは、リリースしないように修正するわけではありません。リリースする動きは、彼女にとって決して悪い動きではなく、それは個性とも言うべきもの。例えばですが、野球のピッチャーでも誰ひとりとして同じ投げ方をする人はいませんよね。そして、それぞれみんなリリースの仕方が違うわけです。違っていても“最も力が入る場所”でリリースをしているのは共通している部分です。つまり、その選手にとって“最もいい場所”で使っていればいい。そういう意味で言うと、彼女の一番いいところを探っていく作業をしています」
生で見たらやっぱり期待せずにはいられない
中島コーチは国内では吉本ひかるの指導も行なっているため、拠点は日本に置くとのことだが、西村が日本に帰ってきたタイミングでは国内で、海外メジャーなどは中島コーチが出向きチェックを行うという。
2人のやり取りは、どちらかから一方方向のコミュニケーションではなく、お互いが聞き合い、意見を言い合い、どちらも納得して取り組んでいるように見える。昔よく見た光景だが、改めて“いい距離感”で、いい関係なんだなぁ、と強く感じる。

リモートでのやり取りではわからないことが現場では細かくチェックできるのもメリットのひとつ。事件は現場で起こっている
アメリカでは苦しんでいることは間違いないが、レベルアップしていることもまた間違いない事実。中島コーチと再びタッグを組み、今年は過去2年とはちょっと違った西村を見られるかもしれない。そんな期待をしてしまう2人のやり取りだった。
写真/姉崎正