「ツアークオリティのクラブ工房」は、27年間、国内大手メーカーでトッププロ、トップアマ、トップジュニアのクラブをサポートしてきた今井正人氏が、クラブに関するお悩み、相談を解決するコーナーです。他の工房で「それは無理」と断られた。買ったはいいけどまったく合わない。もうちょっと飛ぶようにならないか。この企画はクラブに生じている問題点と解決策を探りながら、ツアークオリティの「最高のクラブ」に仕上げるまでをレポートするものです。

Q.フェアウェイウッドの「かぶったフェース」をスクエアにできますか?
A.フェース角マイナス3度に「組み直し」をすれば解決します

GD 今井さん、今日の依頼主はどんなお悩み相談ですか?

今井 フェアウェイウッドのフェースの向きをスクエアにしたいという依頼です。発売元のメーカーにお直しを頼んだのですが、「腕利きのクラフトマンにやってもらってください」とお断りされ、ここにやってきたそうです。

GD 一般的に売られているフェアウェイウッドは、たいがいフックフェースになっています。フェースを目標に合わせると、ハンドファーストに構えるしかありません。逆に普通に構えると、フェースがかぶってひっかけるイメージしかありません。

今井 カチャカチャでない接着式のフェアウェイウッドのほとんどが、フックにシャフトが入っているといっていいでしょう。きれいに真っすぐ装着されているのは稀です。

GD そうしたほうが球がつかまってやさしくなるからですか?

今井 そういった考えもあるのかもしれませんが、構えたときに気持ちの悪さは否めません。クラブで大事なのはアドレスしたときに、収まるべき所にきちんと収まるか。そうでないと正しいアドレスが作れないので、正しいスウィングにつながっていきません。

GD これが依頼主のフェアウェイウッドですか。本当だ、フェースが左を向いています。7番はまだ我慢できるとしても、5番は左のOB一直線。それを嫌がったら右のOBか、トップしてチョロがでそうな感じですね。

今井 改善方法としては、シャフトを抜いて組み直しです。その作業をすれば構えやすいクラブに仕上がります。

GD 組み直しですか?

今井 シャフトを抜いて、もう一度適切な位置に挿し直す作業になります。これはプロのクラブでは当たり前の作業です。「もうちょっとつかまるようにしてくれ」、「もうちょっとロフトを立たせてくれ」、「もうちょっと逃げ顔にしてくれ」。そんな要望があった際にはシャフトを抜いて挿し方で調整をすることがあります。
 
今回のフェアウェイウッドを計測してみたら、フェース角が「マイナス1度」。この数値はメーカーの基準内になっていると思います。しかし、マイナス1度ではフックフェースに感じる人が多いと思います。スクエアに感じるには「マイナス3度」に調整する必要があります。

画像: 5Wのフェース角を計測してみたら「マイナス1度」でした。この数値はメーカーの規格内だと思いますが、構えてみると「かぶっている」と感じるでしょう。スクエアに感じるには「マイナス3度」に調整が必要です

5Wのフェース角を計測してみたら「マイナス1度」でした。この数値はメーカーの規格内だと思いますが、構えてみると「かぶっている」と感じるでしょう。スクエアに感じるには「マイナス3度」に調整が必要です

GD 一度抜いたシャフトは再利用できるんですか?

今井 100%ではありませんが再利用は可能です。しかし、そのクラブがどんな経緯をたどってきたものかわからなければ、新しいシャフトにしたほうがいいでしょう。抜き差しを何度も繰り返すとシャフトの先端が弱っていますから、破損の恐れがあります。中古でご購入の場合は、新しいシャフトをお勧めしています。

GD 上手く抜けました。

今井 使用されている接着剤によって、上手く抜けないこともあります。今回のクラブのメーカーは比較的抜きやすい接着剤を使っていてよかったです。

画像: ヘッドからシャフトを抜きます。ヒートガンでネック部を温め接着を剥がしていきます。この作業を丁寧にやらないとシャフトの再利用ができなくなるので丁寧に作業します

ヘッドからシャフトを抜きます。ヒートガンでネック部を温め接着を剥がしていきます。この作業を丁寧にやらないとシャフトの再利用ができなくなるので丁寧に作業します

GD 次の工程は?

今井 ホーゼル内のクリーニングです。この作業をしっかりやらないと、目標値にならないことがあるのできれいにします。ここでシャフト径とホーゼル径をチェックして、加工が必要な場合は、ホーゼルの口径を広げる作業をします。
 
「マイナス1度」から「マイナス3度」になるようにシャフトを挿し直すので、ちょっとだけホーゼル内部をもんで口径を広げる必要がありそうです。この作業もプロのクラブを組み上げるときは日常的にやることです。

GD ここは勘ですか?

今井 そうですね。「これぐらいもめば大丈夫」というのは経験値ですね。

画像: シャフトを抜いたらホーゼル内のクリーニング。この作業をしっかりやらないと、組み直しをした際に狙った数値に仕上がりません。今回はホーゼル径に余裕がなかったので、ドリルで口径をもみ広げる必要がありました。この作業は仕上がりに影響するので、クラフトマンの腕の見せ所です

シャフトを抜いたらホーゼル内のクリーニング。この作業をしっかりやらないと、組み直しをした際に狙った数値に仕上がりません。今回はホーゼル径に余裕がなかったので、ドリルで口径をもみ広げる必要がありました。この作業は仕上がりに影響するので、クラフトマンの腕の見せ所です

GD プロのクラブでは当たり前のことが、一般に売られているクラブには施されていないんですね。

今井 量産品はそうですね。プロ支給品であれば、細かく調整してあるのが普通ですが、量産の市販品はそこまでやっていません。カスタムもヘッドとシャフトを組み合わせているだけで、細かいスペックまでは調整できていないと思います。製品には個体差がありますので、その個体に対してどう組んだらいいのかは、1本1本違ってきます。量産の市販品は規格内に収まっていれば市場に流れます。

GD 「当たりはずれ」がありそうですね。

今井 あるでしょうね。同じようなものはあっても、同じものはない。もし同じに仕上げるなら、ヘッドの状態に合わせてしっかり組み上げる必要があります。

画像: 接着をしたらホーゼル内でシャフトが動かないよう硬化するまでテープで押さえておきます。狙った数値に仕上げるにはこのひと手間が必要です

接着をしたらホーゼル内でシャフトが動かないよう硬化するまでテープで押さえておきます。狙った数値に仕上げるにはこのひと手間が必要です

GD これで組み直し完了ですね。元のクラブとは比べ物にならないほど構えやすくなっています。驚きました。「なんか構えにくいな、気持ち悪いな」と思って我慢して使っている人も多いはずです。ここまで変わるなら組み直し作業は絶対やるべきですね。

今井 特に接着式のフェアウェイウッド、ユーティリティは組み直しをすることで、断然よくなりますよ。

GD 今回は組み直し作業に合わせて、リシャフトしたんですね。

今井 『フジクラMCF』 の40Rです。元々付いていた純正シャフトが48グラムのRだったので、重量帯を変えずにリシャフトしました。純正シャフトは軟らかく、遊びが多いのでタイミングを合わせるのが難しいことがあります。『MCF』はフェアウェイウッド専用のカスタムシャフトなので、しっかり感もあり、ボールコンタクトが容易に感じることができます。今まではしっかり振るともたつくとか、頼りなさみたいなものがあったと思います。それが解消されるので、結果的に飛距離が伸びるというケースも珍しくありません。

画像: 今回はシャフトをやや右から挿し直して、フェース角をマイナス1度からマイナス3度に調整。右から挿すと連動してロフトが立ちます。5Wは実測値で19.0度が18.2度に、7Wは20.8度が20.3度になりました

今回はシャフトをやや右から挿し直して、フェース角をマイナス1度からマイナス3度に調整。右から挿すと連動してロフトが立ちます。5Wは実測値で19.0度が18.2度に、7Wは20.8度が20.3度になりました

【ビフォー】
●番手/長さ/バランス/重さ/リアルロフト/フェース角
5W/43インチ/C9/318.9グラム/19度/マイナス1.4度
7W/42.5インチ/C9/323.4グラム/20.8度/マイナス1.8度

【アフター】
5W/43インチ/D0/311.5グラム/18.2度/マイナス3度
7W/42.5インチ/D0/318.2グラム/20.3度/マイナス3.1度

【依頼主のレビュー】

このクラブはネットで買いました。箱を開いて構えたところ愕然。写真では大丈夫そうに見えたのですが、実物は思い切りフェースがかぶっていました。やっぱりネットでクラブを購入してはダメだなと思いつつも、価格の安さにポチっとしてしまいます。

なんとか改善できないものかメーカーに問い合わせたところ、腕利きのいる工房でやってくださいと断られ、半分諦めていたところに今井さんの存在を知りました。

出来上がってきたクラブを見て驚きました。まさに私が求めていたクラブになって戻ってきました。リシャフトもしてよかったです。純正シャフトとはまったく違うフィーリングになり、とても打ちやすくなりました。『フジクラMCF 40R』は最初に手元のしっかり感に違和感を覚えましたが、数発打ったら気にならなくなりました。今井さんにアドバイスをいただかなかったら、このフィーリングと出合うことはなかったと思います。

飛距離は10ヤードほど伸び、それよりも芯を食う確率が格段とアップしたことに驚いています。フックフェース問題の解消とリシャフト、大成功でした。

●フジクラシャフトのロングセラーモデル『MCF』の情報はこちら

【今井正人のクラブなんでも相談会&フィッティング】絶賛開催中!
【日時】2025年3月23日(日曜日)12時~要予約
※「クラブなんでも相談会」開催日は随時更新しております。シェパーズゴルフスタジオHPでご確認ください
【場所】シェパーズゴルフスタジオ(JR石川町駅、徒歩0分)
【料金】90分/16500円(税込み)、120分/22000円(税込み)
※フルセットのフィッティングをご希望の方は120分のお申し込みをお勧めします。

お問合せ、お申し込みはこちら

●今回ご紹介した「フェアウェイウッドのかぶり解消」、『フジクラMCF』のリシャフトをご希望の方は、下記ホームページからお問合せください。

ゴルファーズラウンジby tantanto

This article is a sponsored article by
''.