Zスターはなぜ3種類?
そのワケとは…
実はアベレージにもおすすめ
「2025年モデルのZスターで16年目の9代目になります。初代から6代目までは2モデル展開でしたが、そこにダイヤモンドが加わったのが2021年、今回のダイヤモンドは3代目です」
「PGAツアーのようなハードなコースセッティングでは、ロングショットのスピン性能が重要で、それを目的に開発したのがきっかけです。特定の選手を挙げればキーガン・ブラッドリー選手がズバリ。彼はアイアンショットでのスピン量にこだわりがあり、スウィングでスピン量を増やす努力をしていました。ダイヤモンドを使ったらボールでもスピン量が増え、『弾道を楽に操れるようになった』と、以来ずっとダイヤモンド。アイアンだけでなく、ドライバーもスピンが入るので、狙った球筋で飛ばせるメリットが大きいです」
そして、3モデル態勢がスタートした。
「実は、ダイヤモンドのスピン性能がアマチュアのアベレージ層にも有効になるケースもあります。近年、飛距離重視の低スピン系クラブやボールが増え、適正なスピン量に届かないゴルファーもいるのですが、ドライバーやミドルアイアンでスピンが少なく、球が上がらないゴルファーはダイヤモンドがマッチします」
やさしいZスター、
攻めのXV、
操れるダイヤモンド

写真左からZスター、Zスターダイヤモンド、ZスターXV(写真/三木崇徳、協力/市原GC柿の木台C)
スリクソン Zスター
ロングショットで余計なスピンが入らない低スピン弾道で直進性がとても高い。ショーゲームではスピン性能が優れた3モデルの中でも最もスピンがかかる。打感はソフト。ボールナンバーは黒色。
スリクソン Zスター ダイヤモンド
ドライバーからアイアンまでスピン量が多めに入り、球筋を打ち分けやすいだけでなく、高い球が楽に打てる。飛距離、ショートゲームのスピン量はZスターとXVの中間。ボールナンバーは金色。
スリクソン ZスターXV
弾きの良い打感の通り高初速で飛び出し、最高レベルの飛距離性能を誇るうえ、直進性も高い。グリーン上ではタッチや距離感のフィードバックが得られる大きな打音が特徴。ボールナンバーは赤色。
ZスターとXVは?
「9代目Zスターは軟らかな打感に磨きをかけました。コンプレッション(注1)が低いのでHS40m/s前後の方でもフェースにボールが乗った感触を味わえ、ドライバーなどのロングショットでは、リコイル現象(注2)によって低スピン弾道になります。低スピンゆえ大曲がりせず真っすぐ飛ばせるメリットがあります」
「最新のXVはしっかりした打感で、初速が出て飛距離が3モデル中一番のまま全体性能を引き上げました」
「(3モデルとも)それぞれの特性をブラさず、全体バランスを最適化しているので似たり重なったりすることなく、それぞれにニーズがある。それが3モデル展開の大きな理由です。最適化の面では、中心部のコアが影響します。DGコア(注3)と呼んでいますが、初速が出て、コアとしてスピンを抑える、2つのいいとこ取りをする技術をシリーズ8代目から採用、9代目はその改良という作業でした」

Zスター(左)、ダイヤモンド(中)、XV(右)の断面。前作を元にコアもミッド層も特性を底上げするようにチューニング
正常進化の中で、特に大きく変わったのがカバーだという。
「ボールカバーの材料を一新しました。住友ゴムではサステナブル(SDGs)を推進し、トウモロコシ由来の原料でカバーを作りました。その効果は、松山英樹選手の言葉を借りれば、『(アプローチショットで)ボールがフェースに乗って食い付く時間が長くなった』とのこと」
「20〜30ヤードの実験では、カバーでスピン量が増えることが証明されています。ラフや沈んだライでは、プロでもフェースとボールの間に入る芝の量がばらつきます。ボールとフェースの間に芝が少し噛むだけでスピン量は大幅に減り、あっという間に1000回転ぐらい減りますが、そんなケースでもスピンを減らさず打ち出せることを目標に開発しました。グリーン周りのスピン性能は3モデルとも確実に底上げされています」
(注釈1) コンプレッション
インパクト時にボールがつぶれる量を表す指標。数値が低いほど軟らかなボールになる。
(注釈2) リコイル現象
インパクトの衝撃でボールのコアが変形すると、バックスピンとは逆方向に回転しようとする力が発生する現象。これによりバックスピンが抑えられて低スピンになる。
(注釈3) D.Gコア
正式名は「ファストレイヤーD.G.コア」。硬度分布が2段階になっている独自技術コア。1層のコアで2層分の役割を果たし、エネルギー伝達効率が良く、フィーリングも向上。D.G.はDual Gradient(二重勾配)の略。
まずはダイヤモンドを試してほしい!
Zスターは特色違いの3モデルがあるため守備範囲が広い。どんな選び方をするのが良いか、最後に聞いてみた。
「お薦めは、何も考えず〝まずはダイヤモンド〞。スピン、初速、高さ、打感……トータルバランスが良いのでダイヤモンドを試したうえで〝飛ばしで攻めたい〞〝曲げたくない〞などの願望に合わせてZスターとXVを試すのが良いと思います。いずれもショートゲームのスピン性能は十分。『中上級者のボールでしょ』と言わず、ぜひ試してほしいです」

Zスター ユーザー代表 竹田麗央
軟らかな打感を好む竹田麗央が愛用。昨年、竹田は8代目Zスターで8勝を挙げ、JLPGA年間女王に輝いた。今年は9代目ZスターでUSLPGAツアー2勝目を挙げた

Zスターダイヤモンド ユーザー代表 青木瀬令奈
「どの番手もイメージしたスピンが入り、球筋の管理がしやすい」と青木瀬令奈。B ・ケプカ、K ・ブラッドリー、星野陸也、平田憲聖など国外ツアーでの使用者も多数

ZスターXV ユーザー代表 松山英樹
PGAツアーの11勝すべてを歴代XVで達成。女子では岩井姉妹、山下美夢有、小祝さくらが長く愛用し、すでに最新のXVにスイッチ。渋野日向子も今季からXV
3モデルある理由、
テストしてわかった
Zスターはゴルファー
みんなのボールと言えます!

試打・解説
松本一誠プロ
32歳。ゴルフ部の名門、杉並学院高校卒業後、研修生生活を経てレッスンプロとして活動する傍らドラコン競技にも出場。2023年ロングドライブ日本大会優勝。日本練習場連盟ティーチングプロ
テスト方式
TEST1~4は各ボールを7球打ち、トラックマン計測データの上と下を省いた5球の平均値を採用
TEST 01【HS45~46m/s】
ZXiドライバー

ZXiドライバーで3つのZスターをテスト。スペックはロフト10.5度、ディアマナZXi50(S)
XVは圧倒的な最高初速で280ヤード超

ZXiドライバーのテスト結果。このHSでの飛距離は280ヤード超えでXVに軍配
「XVの飛距離は圧倒的です。弾く打感通りの高初速で平均飛距離280ヤードを超えました。弾きは強くても球離れが早すぎて滑ってしまう感じはありません。ダイヤモンドはインパクトの衝撃が一番強くて分厚さがあり、平均2580回転とスピン多めで安定。Zスターは長く食い付くので低スピンでも出球の管理をしやすいです」(松本・以下同)
TEST 02【HS40~41m/s】
ZXi MAXドライバー
Zスターのつぶれる打感が気持ちいい

ZXi MAXドライバーのテスト結果。ZXi MAXドライバーのスペックはロフト10.5度、ディアマナZXi50(SR)
「このHS帯で面白いのがZスター。フェースにしっかり乗るので、全球ともつかまったドローになりました。低スピン弾道でランも出ますしスライサーにお薦め。ダイヤモンドはスピンが入って打ち出しも高いので高弾道で飛ばせます。XVは2つの中間の感じですが初速は変わらず一番。HS40.5m/sの1球は250.1ヤードを記録しました」
TEST 03【6割ショット】
ZXi5の7番アイアン

ZXi5アイアンで3つのボールをテスト。「6割の力感でゆっくり振って、ライン出しフェードのイメージに統一して打った結果です」
ダイヤモンドはライン出しが最高

ZXi5の7番アイアンでのテスト結果。試打は6割の力感で行った
7Iでは松本プロが普通に打ったら190ヤード出たため6割の力感で試打。「ゆっくり振るフェードのライン出しイメージに揃えて打ちました。150ヤード台の飛距離でも飛び方に違いが出ました。ダイヤモンドは平均7000回転強で薄いフェードが安定して出ます。Zスターは球がつかまって真っすぐ飛ぶので、やはりスライサーに合うはず。XVは小さく曲がって目標と左5ヤードのエリアに球が集まる安定感でした」
TEST 04【30ヤード ピッチ&ラン】
クリーブランドRTZ 56度

クリーブランドRTZの56度(DG・S200)でテスト。30ヤードをフェースを開かず、スタンダードなピッチ&ランに統一
一番止まるZスター、スピンのかかりが凄い

30ヤードのピッチ&ラン、テストデータ。Zスターのスピン性能が特に際立つ
「フェースは開かず、キャリー20・ラン10のピッチ&ランで打ちました。驚いたのがZスターのスピン性能。1球目にキャリー後の5~6ヤード先で止まったため、やや強く打つとそれに比例してスピンもかかってどんどん止まる、これは凄い。ダイヤモンドとXVは飛び方と止まり方が見た目もデータ上も似ていました」
TEST 05【パッティング】
クリーブランドHB SOFT #8パター

クリーブランドHB SOFT #8パターで3モデルをテスト(写真/姉﨑正、協力/Forex Show Room Studio)
XVの大きな打音
個人的に好きです
最初は3m。「Zスターの打音は静かで低い音。ゆっくり転がる感覚です。XVはこの距離でも高めのカツッという音が響きます。ダイヤモンドはコンという音で何となく安心します」
次に20m。「Zスターは食い付いてから転がる反力を感じ、音は静かです。ダイヤモンドは距離通りに大きめのコン。XVはドライバーを打ったような大きな音。しっかり聞こえる音が好きなので個人的にはXVです」
アマが使うべき理由
Zスター3モデルを実際に見極めるための試打企画。全テストを終えて松本一誠は、「Zスター、Zスターダイヤモンド、ZスターXVをテストして思ったのは、プロや上級者だけのボールではないということ」と開口一番に語った。
「Zスターシリーズは、悩みや願いを持ったアマチュアの方こそ使うべき性能を持つと感じました。試打しているとゴルファーのリアルな顔が浮かぶんです」
「例えば、振り遅れの癖が強くてプッシュスライスに悩む生徒がいますが、Zスターの軟らかな打感が生む球のつかまりの良さを目の当たりにすると、『あの人が使ったら、右に逃げずつかまった強い球が打てそうだ』と思えてくる。単なる低スピンボールでは右へのプッシュスライスを解消できませんが、Zスターならフェースに乗る時間が長いので球をつかまえたうえでの低スピン弾道になります。これはスライサーに効きます」
「ダイヤモンドはしっかりした打感があってスピンが入るボール。上級者の場合はこのスピン性能が操作性の良さにつながりますが、アベレージの人には全番手でスピンが入るので、高い球が打ちやすくキャリーが伸びる利点が大きい。『長い番手はどれを打っても距離が変わらない』という人が使えば、番手ごとのキャリー飛距離の階段ができるようになるはず」
「XVは言うまでもなく『飛距離をもっと伸ばしたい』という人に試してほしい。一般に飛距離を伸ばす要素は、高初速・低スピン・高打ち出しの3つと言われますが、XVの場合は、高初速が際立ち低スピン過ぎないので、『ドライバーは飛んでくれるけども、アイアンが全く止まらずスコアにならない』とのジレンマに陥らず、『ドライバーはしっかり飛び、アイアンも止まる』というスコアメイクのバランスを高次元で達成しています。また、松山英樹選手のリクエストに合わせた打感・打音のしっかり感も大きな特徴です」
使うとアプローチも上手くなる
「そして何よりもディスタンス系ボールとZスターシリーズが違うのはショートゲームに必須のスピン性能です。打点が多少ブレても回転数が乱高下しないスピンの安定感は数あるツアーボールの中でもピカイチで、それこそアプローチを上達させたいアマチュアに欠かせない性能です」
2モデルをメイン展開する他社のツアーボールとの違いについては、「近年のツアーモデルは、スピン系が飛ぶようになり、飛距離系が止まるようになり、2モデルの差異が近づいている印象ですが、Zスターの3つは個性が明白で、むしろ自分のお気に入りを見つけやすいはず。マイエースボール、必ずあります」と締めてくれた。