
テキサスチルドレンズ・ヒューストンオープンでPGAツアー初優勝を遂げたミンウー・リー(写真は25年WMフェニックス。撮影/Blue Sky Photos)
こんにちは。SPORTSBOX AI 3Dスタッフコーチの北野達郎です。今回は、テキサスチルドレン・ヒューストンオープンでPGAツアー初優勝を挙げたミンウー・リーのドライバースウィングをスポーツボックスのデータと共に解説させて頂きます。ミンウー・リーのスウィングの主な特徴は、
①広いスタンスで胸と骨盤の捻転差が大きい
②アーリーコックでテークバックして、ダウンも手首の角度を保っている
の2点です。それでは早速チェックしてみましょう!
広いスタンスは胸と骨盤の捻転差が大きくなる。
まずはスタンス幅と捻転差に注目しましょう。スタンスは肩幅より広いワイドスタンスが特徴的ですが、このスタンスですと特に骨盤の回転を抑える効果があります。「PELVIS TURN」は骨盤の回転量、「X FACTOR」は胸と骨盤の捻転差を表しますが、トップで骨盤の回転量はマイナス36度(右)と回転が抑えられていて、逆に胸と骨盤の捻転差はマイナス67度(右)と捻転差は非常に大きいのがわかります。

画像①アドレスとトップの比較/トップで骨盤の回転量は抑えられているが、逆に捻転差は非常に大きい
スポーツボックスAIが独自で調査した、トップでの海外男子ツアープロレンジは、骨盤の回転がマイナス36度~マイナス44度(右)、捻転差がマイナス58度~マイナスス68度(右)ですので、ミンウー・リーは骨盤の回転量が少ないぶん、捻転差は大きいタイプであることがわかります。スタンス幅を広げてトップでの捻転差を大きくする選手では、ブルックス・ケプカなどもこのタイプです。通常はスタンス幅を広げると右に体がスウェーしやすいですが、ミンウー・リーは強靭な下半身で右に流れることなく大きな捻転差を生んでいます。この大きな捻転差は飛距離を出すポイントのひとつです。
アーリーコックで早めに手首の角度を作って、ダウンでも角度を保つ
2つ目の特徴は、「アーリーコックで手首の角度を早めに作って、ダウンでも角度を保つ」点です。「LEAD WRIST ANGLE」は、左手首の縦コックの角度(コップで水を飲む時の動き。手首を上げるのはとう屈、下げるのは尺屈)を表しますが、P3(バックスウィングで左腕が地面と平行の位置)で左手首の角度が108度、ダウンスウィングで正面から見て左腕が30度の位置では左手首の角度が114度と、左手首の角度がほぼ変わらないことがわかります。

画像②左手首の角度の比較/バックスウィングとダウンスウィングで左手首の角度がほぼ変わらない
ミンウー・リーのように左手首の角度を早めに作るアーリーコックの選手は、実は少なくなってきており、P3での左手首の角度の海外男子ツアーレンジ(111度~131度)と比較すると、ミンウー・リーは左手首のコック(角度)を早めに作るタイプとわかります。同じアーリーコックの代表例では、アーニー・エルスやトム・ワトソンなどがこのタイプです。そしてダウンスウィングでも左手首の角度は保たれており、それがわかるのが「手元よりクラブヘッドが上にある」位置関係です。これはツアープロほぼ全員に共通するポイントです。
ペットボトルを使って、左手首の正しいコックを覚えよう!
それでは、左手首の角度を保つ手軽なドリルをご紹介します。用意するのは500mlのペットボトルに半分ほど水を入れて下さい。そのペットボトルのフタ付近で両手のグリップを作ります。まずバックスウィングをする際に水が先端側ではなく、手元側に向かって流れているのを感じて下さい。そしてダウンスウィングでもその状態をキープします。

画像③手首のコックを覚える練習ドリル/水が先端側ではなく手元側に流れているのを感じよう
もし、ここで水が手元側ではなく先端側に流れているとしたら、手首の角度がほどけている証拠です。

画像④手首の角度がうまく作れていないケース/画像③に比べてペットボトルの先端が下がっているのがわかる
これは球を打たなくてもできる練習ドリルですので、バックスウィングで手首のコックがうまく作れない人や、ダウンスウィングで手首が早めにほどけるアーリーリリースにお悩みの方は、是非スマホでスロー撮影したり、鏡でチェックしたりして試してみて下さい。
今回はミンウー・リーのスウィングを解説させて頂きました。待望のPGAツアー初勝利を挙げたミンウー・リーが、マスターズでどんなプレーを見せてくれるのか注目です!