『新 03アイアン』を深掘りするにあたり、まず下の『PRGR IRONs』マップを見てほしい。

HSが速くなくてもキャリーが出て飛ばせるアイアン。『新 03』が目指したゾーンだ
現在、00・01・02・03・04・05と『PRGR IRONs』の6モデル中、〝ぶっ飛び性能〟に特化しているのが『新 03アイアン』の位置。圧倒的な飛距離と許容性(やさしさ)に加え『新 03』は、構えやすさ、操作しやすさ、そして『PRGR IRONs』らしい外観にもこだわって開発されたという。
アイアンらしさ……
オーバル(楕円)状のバックフェースデザイン

ぶっ飛び性能を持つアイアンだが、そう見えない佇まいが印象的。セットは7I、8I、9I、PW、AWの5本。5I、6IとGWは単品
まず、目に止まるのは、オーバルキャビティデザイン(Oval Cavity Design)と呼ばれる楕円形状がアクセントになっているバックフェース。アスリート志向の鍛造ハーフキャビティ然とした印象だ。ヘッドボディはオーバル部分を含め軟鉄S20Cの鍛造製法で作られている。
そして、このオーバルの内側が飛距離性能をもたらす一つ目のキーとなる。ヘッド内部にはCNCミルド製法で加工された小部屋(空間)が設けられ重量配分を番手別に最適化。そのうえでフェース面上のセンターに重心が位置するように深重心と低重心を両立させている。
さらに、反発性能が高いニッケルモリブデン鋼によるフェース自体も新たに設計、開発している。下部から上部にかけてフェースの厚みを徐々に薄くして上下方向の打点ブレの飛距離差を縮め、フェースの裏面に数本の溝を入れることで反発性能をさらに高めている。
前作(旧 03)でもフェース裏面に溝が入っていたが、『新 03』では溝の入れ方と本数を番手別に設計し直した。5I~7Iは実打点での高初速化を、8I~PWは飛距離とやさしさを、それぞれ向上させている。新開発したフェースが二つ目のキーだ。

『新 03』の7Iのヘッド構造。ヘッド内部の小部屋(空間)はCNCミルド加工によって、番手別に重量配分を最適化している。ニッケルクロムモリブデン鋼のフェースは下部から上部にかけて肉厚が薄くなり、裏面には写真(7I)のように溝が入る。この溝は5I~7Iの入り方で、8I~PWは下側3本のみの溝になる。AWとGWは裏溝なし。これらが飛距離と弾道高さと打点ブレに対する強さを生む。
※グラデーションフェース設計、番手別バックフェースグルーブ・・・特許、意匠出願中
早速、プロのもとへ持ち込んで『新 03アイアン』をチェック。解説担当は、都内の合田洋ゴルフクリニックで多くのゴルファーを指導する西田幸一プロ。週刊GD誌のクラブ試打企画でも活躍、ギアに精通している。
目標に構えやすい
フォルムと
据わりの良さ
「今回の『新 03』と『旧 03』の5Iをアドレスで比べたところ、ヘッドの見え方がまったく違うところに目が止まりました。トレーリングエッジの輪郭(ソールの後部ライン)はどちらも見えますが、『旧 03』は輪郭が角張っていて直線的で、向き自体がフェース面(の向き)と合っていません」(西田プロ・以下同)

『旧03』の5I。ソールのトレーリングエッジが直線的で角張った印象。向きがトップラインと平行
「対して『新 03』は、トレーリングエッジの輪郭が滑らかな曲線でフェース面の向きと揃っている印象で、スッと構えやすいです。ヘッドをポンと置いた時の据わりも明らかにいい。『旧 03』は閉じようとしますが、『新03』は置けば自然と真っすぐを向きます」

『新03』の5I。トレーリングエッジがアーチ状の曲線。「フェース面の向きに合っているので構えやすい」(西田プロ)。構えた際に目立たない印象だ
5Iに続いて6I、7Iと番手順に比較していく。「(アドレスの目線は)人によって変わりますが、僕の見た目では、トレーリングエッジが見えるのは『新 03』は6Iまで。『旧 03』は7Iでも見えます。構えやすい仕上がりの良さは、明らかに進化していて、これが操作性の良さにもつながるんです」
7Iで平均194.8ヤード
6割の力感でも
平均160ヤード
『新 03』、『旧 03』、オーソドックスなアイアンの代表として『02』を選び、3モデルを試打比較した。番手は7I。

『新 03』『旧 03』『02』を7Iで比較試打。ロフトは『新 03』『旧 03』が26度。『02』が30度。シャフトはいずれもN.S.プロ for PRGR(スペックスチールⅢ)のフレックスS。ボールはプロギアのツアーボール『RS SPIN』。各クラブとも7球打ち、上下2球を省いた5球の平均値を採用。計測はトラックマン
「構えやすさがショットに反映されますね。『新 03』は自分のイメージと重なってインパクトできます。『旧 03』は構えると後ろが重そうに見えて、ロフトが寝て当たるイメージになります。実際に打てばどちらも飛んで、新旧の飛距離差はあまりありませんが、バラつきの少なさ、フェース面の管理という点では、圧倒的に『新 03』に軍配が上がります」
『新 03』は、平均飛距離194.8ヤード(キャリー188.9ヤード)、平均スピン量5230rpm、弾道高さ34.2ヤード。
『旧 03』は、平均192.7ヤード(キャリー185.0ヤード)、スピン量5190rpm、弾道高さ30.9ヤード。

「構えやすい『新 03』はやっぱり打ちやすい。インパクトのイメージと実際のインパクトが合致するんです」(西田プロ)
平均距離の差は2ヤードほどだが、高さの差が3ヤード以上。
「7Iで、この弾道高さの違いは大きいです。そして、7球打った飛距離のバラつき幅が『旧 03』は12.4ヤード。対して『新 03』は8.8ヤード。これもアイアンの性能ではとても大事なところですね」
「打っていてソールの進化も感じました。それもバラつきの少なさにつながっていると思います。新旧どちらも抜けは良いのですが、『新 03』の方が深く入らない感じ。人工マットの上でも滑りの良さが伝わってきました」

左が『旧 03』、右が『新 03』。『新 03』はソール後部のトレーリングエッジ側が削り込んであり、ヒール側もネックに向かって滑らかになっている。これが据わりの良さ、抜けの良さ、操作性の良さを向上させた
『02』の7Iは、平均飛距離179.5ヤード(キャリー172.9ヤード)、スピン量5990rpm、弾道高さ34.8ヤード。7球の飛距離バラつき6.1ヤード。
「同じ7Iで、飛距離は約15ヤードの違い。打感は、正直なところ『02』が軟らかくて一番気持ちいいですね。『新 03』の打感は、弾くだけでなくフェースに乗る感触があるからコントロール性もあると感じます」
次に『新 03』の7Iで、6割程度の力感で打ってもらった。
「力感を落としつつ、ライン出しのイメージで打ってみましたが、これで160ヤードいくんです。これは楽です。高さも20ヤードを超えています。この数値はアマチュアの方の参考になると思います」

アマチュアのHSをイメージして『新 03』の7Iを、6割の力感でショット。平均飛距離162.4ヤード(キャリー152.0ヤード)、スピン量5030rpm、弾道高さ21.1ヤード
「試しに『新 03』の7Iのまま、パンチショットで低くしっかり打ったら200ヤードいっちゃいました。個人的に、これに125グラムのXを挿して(試打クラブはSシャフト)、使いたくなりました」
『新 03』のPW、平均145.1ヤード
西田プロからの希望で『新03』のPWを試打。
「セットで使うことを考えるとPWは基準番手になるので大事です。PWを構えると、グースネックの感じがそれほどなく、セミグース程度でいい感じです。普通に打って平均145ヤード。高さが32ヤードなので、(最初に打った)7Iの弾道とほぼ揃っています。各番手の弾道高さが揃うのはいいアイアンの条件です」

『新 03』のPW。ロフトは39度。「ロフトは立っていますがPWらしい顔をしています。普通に打って145ヤード、スピンは7000回転前後入っているので、しっかり狙えるPWです。また旧03に比べて、PW、AWのフェース長さが短くなりウェッジとのつながりもよく、今回ウェッジとの距離差を埋めるG(ギャップ)Wが新たに追加されたことも進化ポイントですね」(西田プロ)
『新 03』のPW、平均飛距離145.1ヤード(キャリー141.6ヤード)、スピン量6992rpm、弾道高さ32.2ヤード。
最後に、『新 03』の5Iを試打。
「改めて5Iを見ると、ヘッドは大きめですが大きすぎる感じはなく、安心感があります。『旧 03』の方が大きくてUT的な印象です。こちらはアイアンらしい佇まい。7球打っての平均がキャリー209ヤードのトータル220ヤード。繰り返しになりますが、これだけ飛んだら本当に楽です。この5I、6Iを入れて、UTを抜くセッティングもありかもしれません」
『新 03』の5I、平均飛距離220.1ヤード(キャリー209.6ヤード)、スピン量4450rpm、弾道高さ33.4ヤード。
硬派で
洗練された
ディスタンスアイアン
「一般的なぶっ飛び系といえば、ヘッドが超ワイドでバックフェースが大きくえぐれた『いかにも』というコスメか、幅広ソールで膨張した感じの中空アイアンのどちらかのイメージでしたが、これ(新 03)はそのどちらでもない。キャディバッグにセットで並んでいるのを見てもシックですね。硬派で、洗練された印象を持ちました」
「『各番手とも、もう少し楽に飛ばしたいけど、本格派アイアンらしさは譲れない』という人に選んでほしい、と思いました。飛ぶだけでなく、ターゲットに向かって構えやすい形状なので、上達できるアイアンでもあります」

『新 03』はヘッド全体がサテン仕上げだが、バックフェースとソールをつなぐ面の部分だけ鏡面仕上げ。これにより芝の上で構えた際、芝の色が反射してトレーリングエッジの輪郭がより目立たなくなる。細やかな配慮は、まさに本格派アイアンの矜持だろう
PHOTO/姉﨑正、野村知也、
協力/G-STUDIO