
「シェブロン選手権」で米女子ツアー初優勝&初メジャー制覇を達成した西郷真央(PHOTO/Getty Images)
思い返せば、渋野日向子選手が2019年にAIG女子オープンを制したとき、メディアには「樋口久子さん以来、42年ぶりのメジャー制覇」という見出しが踊りました。
1977年に樋口久子さんが全米女子プロを勝って以来、日本勢の“2勝目”までは42年の時がかかりましたが、渋野選手以降は笹生優花選手が2021年、2024年に全米女子オープンで優勝(21年優勝時はフィリピン国籍)。また24年には古江彩佳選手がアムンディ・エビアン選手権を勝ちました。
そして2025年、今度は西郷真央選手が女子5大メジャーで日本勢が唯一勝っていなかったシェブロン選手権(旧ナビスコ、ANA)を制覇。今年のマスターズではローリー・マキロイがキャリアグランドスラムを達成したのが記憶に新しいところですが、同じ月に日本勢の女子海外メジャー完全制覇が達成されました。
この快挙について、女子ツアーに詳しい中村修プロは、まず西郷真央選手のプレーを讃えてこう語ります。
「果敢にピンを狙ったショットがグリーンをオーバーするシーンも見られましたが、アプローチとパットでボギーの数を最小限にし、プレーオフに残る粘りを見せました。最後までしっかりと振り抜けていたスウィングが、プレーオフでのバーディを生んだのでしょう。昨年、出場試合数が限られた中で獲得したルーキー・オブ・ザ・イヤーの称号が伊達ではないことを自ら証明してくれました」(中村、以下同)
強い風、硬くなったグリーン、端に切られたピン。メジャーならでのは難しいセッティングとなった最終日、西郷選手も含めてどの選手もスコアメークに苦労するなか、72ホール目のバーディでプレーオフに喰らい付き、5人によるプレーオフでの勝利につなげた粘りはお見事でした。
「西郷選手は2022年に国内で5勝を挙げましたが、最終戦では35オーバーの大乱調に陥っていました。翌23年も不調の中で持ち球をフェードからドローに変えて、終盤の伊藤園レディスで復活優勝。翌週も2位となり完全復活を遂げています。その後、米女子ツアーの最終予選会を突破し、2024年はルーキー・オブ・ザ・イヤー。ここまで決して右肩上がりで来た訳ではなく、挫折も味わいながらそれを乗り越えてつかんだ米女子ツアー初優勝がメジャーという快挙に、心から拍手を送りたいです」
そして、渋野日向子選手以来、多くの日本の女子選手が海外メジャーで結果を出していることに対しては、こう語ってくれました。
「渋野日向子選手が全英に勝ったことは、同世代や下の世代に刺激を与えました。それが渋野選手と同期の“黄金世代”の活躍につながりましたし、黄金世代の活躍を見たさらに下の世代は、米女子ツアーでの活躍を目標にしています」
98年生まれの渋野選手以降、メジャーを制したのは全員が彼女より年下(古江選手が00年、笹生・西郷両選手は01年生まれ)なのも偶然ではないのかもしれません。
また、見逃してはいけないのは宮里藍選手の戦いぶりだと言います。
「女子は男子ほどの海外選手と飛距離の差というか体力の差はありませんが、世界中を旅しながらツアーを戦うための体力、気力、技術は必要です。そんななか、岡本綾子さん、小林浩美さん、福嶋晃子さんといった先人たちに比べて小柄な宮里藍さんが見せてくれた戦い方は、後に続く選手たちの大きな道標になったはずです」
まだメジャーになる“前”だったエビアン選手権(当時はエビアンマスターズ)を制し、世界ランク1位にもなった宮里藍さんは、155センチと小柄ながら、正確なショットとパッティングで世界のトップで戦いました。
宮里藍さんが引退したのは2017年のこと。そのわずか8年後に日本女子勢が5大メジャーすべてを制覇することを、当時誰も予想できなかったのではないでしょうか。時代は大きく変わりました。 西郷真央選手のシェブロン選手権制覇を機に、日本の女子ゴルフ界はまた新たなステージに突入していく、そんな予感もしてきます。
西郷真央が優勝会見で語ったこと
西郷真央のドライバーショット連続写真
西郷真央のシェブロン選手権の最終日ハイライトをLPGA公式YouTubeで見る
Mao Saigo Highlights | 2025 The Chevron Championship Final Round
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