「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はウェッジの重心設計が性能に与える影響について教えてもらった。
画像: ウェッジの重心設計とは?(写真はイメージ)

ウェッジの重心設計とは?(写真はイメージ)

芯に当たりやすいがいいとは限らない

みんゴル取材班(以下、み):クリーブランドの「RTZ」には従来の軟鉄ではなくZ-AROYという新素材が使われています。この合金のメリットは、打感のやわらかさもさることながら、比重の軽さによる設計自由度の高さだといいます。最近のウェッジの重心設計について教えてください。

宮城:クリーブランド、ボーケイ、ミズノなど主要メーカーが重心位置をセンターに近づけたり、慣性モーメントを増やしたりしてヘッドの性能を上げてきています。

み:アマチュアにとってはありがたい話ですね。

宮城:残念ながらそうとも限りません。ドライバーやアイアンはともかく、ウェッジの場合は使い方が特殊なので高すぎる性能は邪魔になることもあります。というよりむしろ性能が低いほどプレーのパフォーマンスは上がります。

み:え、それはどういうことですか?

宮城:フルショットしか打たないなら、芯に当たりやすいセンター重心や高慣性モーメントのほうが球のばらつきは小さくなります。しかし、コントロールショット、とくにグリーン周りの短いアプローチの場合は芯からどれだけ外して初速を抑えられるかが勝負です。いまどきの高性能ウェッジは芯を外そうと思っても外せません。振った分だけ初速が出てしまうので距離のコントロールが難しくなってしまいます。

み:なるほど。ウェッジは、やさしいイコール寄るというわけではないと。

宮城:そうです。アプローチの本質が分かっていないとなかなか伝わりづらいのですが、クルマに例えると、昔はハンドル操作にクイックに反応するオーバーステアが主流でしたが、いまのクルマは乗り心地をよくするためにどんどんアンダーステアになってハンドルを切った通りには曲がってくれません。

み:テクニックを使う余地がないわけですね。

宮城:フェースの打痕を見れば分かりますが、タイガーのようにアプローチの上手い人ほどトウを使っているし、下手な人は真ん中で打っています。丸山茂樹さんを筆頭に昔のプロはみんなそうしていたけれど、いまはそれすら分からないプロもいるかもしれません。ちなみに最近いろいろなメーカーがやたらスピン性能のことを言い始めたのも、以前のウェッジのように芯を外して止めるテクニックが使いづらくなってきたからです。

み:スピンといえば、逆テーパーブレードやハイトウなど高重心化をねらったデザインが増えていますが効果のほどは?

宮城:フェースを閉じて打つフルショットなら問題ありませんが、フェースを開いて打つのは難しくなります。上が重くなるとフェースを閉じて球をつかまえる操作がしづらく、そのまま下を抜けるミスが出やすくなります。実際、そのせいでアプローチイップスになったプロもいます

み:重心はただ上げればいいというわけではないと。ボーケイのフォワードCG(浅重心)なんかも同じ考え方ですね。

宮城:昔ながらの方法ですがネックを長くするのが正解です。重心が高くヒール寄りで高くなるので、トゥ寄りの低い位置で当てれば、打点と重心が離れるので初速が落ちるしスピンも入ります。「MT-28」なんかも角溝だからスピンが入るといわれていましたが、実はネックを世界一長く作っていました。最近でいえば、クリーブランドがネック下部にセラミックを入れたり、ヒール下に空洞を作ったりして下を軽くしていますが、効果的に重心を上げてスピンを増やすにはとてもいいアイデアだと思います。

み:ドライバーのように数値で比較されることは滅多にありませんが、ウェッジの重心設計がとても重要なことがよくわかりました。

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