グリーンは傷つけない
兼濱開人(以下兼濱):ついにココへやってきました!
はやしりか(以下はやし):グリーンですね!
兼濱:グリーン上はやっぱり一番緊張する場所でもあります。そのホールの打数が決まる場所ですからね。あとはゴルファーにとって特別で、神聖視されているくらい大切な場所ですね。

「オーイ! とんぼ」アニメ版で主人公・大井とんぼの声を務めたはやしりか(左)と、東京都目黒区のゴルフスクール「学芸大ゴルフスタジオ」のヘッドコーチ・兼濱開人(右)
はやし:ほう。
兼濱:なんでかっていうと、ゴルフってすごい広大な土地でやるじゃないですか。そしてカップに近づけば近づくほど、どんどん「みんなのもの」になっていきます。カップに近づくほど歩く人の量が増えると思いませんか?
はやし:なるほど、たしかに!
兼濱: 要はコースの中でもとくに一日中みんなで使う場所というわけです。なのでグリーンに来てまず第一に守らないといけないマナーは「傷つけない」こと。それが大事になります。グリーン上ではしゃいだり、走ったりしちゃうと傷がついて、あとにプレーするゴルファー全員がその傷を背負って戦うことになっちゃうんです。
はやし:大変! 気を付けます。
兼濱:もちろん、ボールが着弾したときにどうしても傷ついてしまうことがあります。そんなときの対応も含め、グリーンでのマナーを一通り教えていこうかなと思います。
はやし:よろしくお願いします!
ボールをマークしよう
兼濱:まずショットをして、グリーンにナイスオンしたとしましょう。ボールへ向かうときに、グリーン周辺はもちろんですが、グリーン上ではより一層気を付けてください。そ~っと、かつスピーディーに歩きましょう。
はやし:そ~っと、ですね。

グリーン上では走ったりするのはNG。傷つけないように気を付けて歩こう
兼濱:ボールのある位置まで着きました。そうしたら、ゴルフは基本的に複数人でプレーを行いますから、ボール自体がプレーの邪魔にならないように一度取り除きます。そして自分が打つときにボールのあった場所がわかるように、目印となるグリーンマーカーを置く必要があるんです。グリーンで使う用のマーカーも売っていて、はやしさんのバイザーについているマーカーのように、マグネットで留めて持ち運びや取り出しがしやすい工夫もされていたりしますよ。
はやし:あ、コレか!
兼濱:マーカーを置く位置はカップとボールを結んだ後ろです。マーカーを置いたらボールを拾いましょう。「マークして」「マークお願いします」と言われたら、コレをするのがマナーですね。
はやし:わかりました!

グリーン上のボールは、同伴者のプレーの邪魔にならないように一度取り除く。ボールのあった位置がわかるよう、カップとボールを結んだ線(赤い線)の後ろ(赤い点の位置)にマーカーを置こう
グリーンを傷つけたら、グリーンフォークで直そう
兼濱:はやしさん、ちょっと地面を見てみてください。
はやし:あ! グリーンが凹んでます。
兼濱:シミュレーション上のはやしさんは相当良いショットを打ったので、グリーンに落ちてきたときの衝撃で穴が開いてしまいました。
はやし:大変! 傷つけちゃった。罪深い女になってしまった……。
兼濱:重いな(笑)。先ほども言いましたが、グリーンは傷つけないのがマナー。ですがボールが落ちてきた衝撃で傷つけてしまうことがどうしてもあります。こういった、ボールの着弾の衝撃でグリーンにできてしまった傷を「ボールマーク」と言います。ボールマークができてしまったときは必ず直しましょう。
はやし:直す!……直せるんですか?
兼濱:グリーンフォークっていう道具を使って直すんです。
はやし:あ、それは……!?(髪をまとめながら)
兼濱:いやいや、髪を留めるやつじゃないですよ。

グリーンの修繕に使うグリーンフォーク
はやし:お団子にするやつじゃない!?
兼濱:とんぼちゃんはやっていましたけどね(笑)。グリーンを直す手順なんですが、まず最初にボールマークをパターのソールでトントンと均しましょう。これだけでもちょっと直ります。
はやし:おぉ~!
兼濱:トントンしたあとに、ボールマークの周りにグリーンフォークを斜めに刺してから、穴の内側に倒しましょう。すると、ちょっと穴がなくなっているのがわかりますか?
はやし:穴がふくらんでいる感じですね。

傷ついた箇所の周りにグリーンフォークを斜めに刺したら、内側に倒して芝を寄せよう。同じ作業を、傷ついた箇所を円状に囲うように繰り返し行う
兼濱:そうそう。そして今と同じことを、傷ついた部分をくるっと円状に囲うように繰り返しやっていくんです。はやしさんもやってみましょうか?
はやし:内側に、ギュッ!

実際にボールマークの修繕に挑戦するはやし
兼濱:もうちょっとガツッと倒していいですよ……そうそう、OKです! このようにグリーンフォークを使って芝を寄せていくと、穴がふさがり盛り上がります。そうしたら最後にまたパターのソールでトントンと均しましょう。

最後にパターのソールでトントンと叩いて均そう
はやし:お~! すごい、元通り!
兼濱:直し方をおさらいすると、①ボールマークの周りにグリーンフォークを刺す。②刺したグリーンフォークをボールマークの内側に倒す。②パターのソールでボールマークをトントンと叩いて均す。この3つですね。
はやし:わかりました!
同伴者のラインは踏まない
兼濱:続いて、これも大事なマナーのご紹介です。先ほどはやしさんにはマークしてボールを回収してもらいました。では今置いてあるマーカーが他の方のものだとしましょう。
はやし:はい。
兼濱:マーカーとカップの間って、パッティングするときのボールの通り道……「ライン」になるわけです。そして一緒に回っている方たちのラインは踏まないこと。これも覚えておきたいマナーです。

同伴者のマーカー(赤い丸)とカップを結んだライン(赤い線)は踏まないこと。基本的に迂回しよう
はやし:ラインは踏まない!
兼濱:なのでグリーン上で移動する際はラインを避けて後ろから回りましょう。とはいえすごく離れた位置にマークしている場合は、ラインを避けて迂回するのが大変だったりします。そんなときは……今はやしさんの置いたマーカーとカップを結んだラインで実演すると「ココ、跨いで大丈夫ですか?」と確認します。どうでしょう? 跨いで良さそうですか?
はやし:良いですよ!
兼濱:「すみません。失礼します」……こんな感じで一声かけて確認を取る。こういった配慮をする姿勢を見せることも大切ですよ。

ラインが長く迂回が困難な場合は、一声かけて同伴者に確認をとったうえで、跨いで移動する場合も
はやし:ラインを踏まない! 跨ぐときは許可を取る!
兼濱:まだはやしさんは初心者なので、優しい方だったら「気にしないで通っていいよ」と言ってくれると思います。でもそういう声がけひとつで気持ち良くそういったことが言えるので、必ず聞くことを心掛けましょう。
はやし:罪深い女から、いい女になります!
同伴者が打つときの「自分の立ち位置」に気を付けよう
兼濱:続いて、他の方がパットを打つときに気を付けたいのが「ボールの飛球線の延長線上に立たない」ことです。カップ側にもクラブを引く側にも立たないようにしましょう。
他の方がパットを打つ際は、打つ方の体の正面、あるいは背中側にいるのがいいですね。ではなぜそうするのか。実際にはやしさんに構えてもらって、僕がカップの向こう側に立ってみると……。
はやし:なんかいる! ざわざわしちゃう!

カップ側に人が立っていると、どうしても視界に入って集中が削がれてしまう
兼濱:そうなんです。プレーしていて結構気になっちゃうんですよ。パットを打つ人の集中を妨げないように、体の正面側か背中側にいましょう。影も視界に入ると気になってしまうので、自分の影にも注意しつつ、打つ方の視界に入らない位置まで下がりましょう。こういう気遣いができると良いと思います。

同伴者がパットを打つ際は視界に入らないよう立ち位置に気を付けよう。また自分の影の位置にも気を配ろう
はやし:気遣いが大事!
兼濱:ちなみに飛球線に立たないっていうのはショットのときも同様なので、覚えていてくださいね。キャディーさん付きでプレーする場合は、キャディーさんの横にいれば大体問題にはなりません。絶対邪魔な位置に立たないので。それかキャディーさんに立ち位置を聞くのもアリです。『ココに立つといいよ』って教えてもらえて、それでだんだん慣れていくと思いますよ。
取材協力/東名カントリークラブ
写真撮影/小林司