こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野 達郎です。今回は米女子ツアーの「リビエラ・マヤオープン」で、見事に初優勝を成し遂げた岩井千怜選手の後方アングルからのドライバースウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させていただきます。
岩井選手のスウィングの特徴は、下記の2点が挙げられます。
①トップで胸の回転と手の奥行きが深い
②インパクトで胸と骨盤の捻転差が大きい
また、後半では岩井選手とアマチュアに多いエラーを3Dアバターで比較して、岩井選手から学べるポイントをご紹介しています。
それでは早速チェックしてみましょう!
トップで胸の回転と手の奥行きが深い
まずはトップに注目しましょう。「HAND THRUST」(以下・両手の前後の移動距離)は両手がアドレスの位置から前後にどれだけ移動したか? の距離を表します。(マイナスは後方の背中側、プラスは前方のボール側)岩井選手のトップでの両手の前後の移動距離はマイナス46.5cm(後方)で、頭と手の間に距離がある奥行きが深いトップです。

画像①トップ/頭と手の間に距離がある奥行きが深いトップ
スポーツボックスAIが独自で調査した、米女子ツアーレンジ(範囲)は、トップで両手の前後の移動距離がマイナス34cm~マイナス46.7cm (後方)ですので、岩井選手はツアー選手の中でもトップで手の位置が深いタイプであることがわかります。また、「CHEST TURN」は胸の回転角度(マイナスは右、プラスは左)を表しますが、トップでマイナス98度(右)と胸もしっかり右に回転しています。この胸が右に90度以上回転して、トップの手の位置が深くなると、自然にクラブはインサイドから下りやすくなります。このトップの位置に関しては、後ほど3Dアバターでの比較でも詳しくご紹介します。
インパクトで胸と骨盤の捻転差が大きい
続いて2つ目の特徴は、「インパクトで胸と骨盤の捻転差が大きい」点です。「PELVIS TURN」は、骨盤の回転角度(マイナスは右、プラスは左)を表し、「X FACTOR」は胸と骨盤の捻転差(マイナスは胸が骨盤より右、プラスは胸が骨盤より左)を表します。岩井選手のインパクトを見ると、骨盤はすでに目標方向に向いているのに対して、背中のロゴマークはまだ少ししか見えていません。これをデータで計測しますと骨盤はインパクトでプラス45度(左)を向き、胸と骨盤にはマイナス13度の捻転差があります。

画像②インパクト/骨盤はすでに目標方向を向いているが、胸と骨盤にはマイナス13度の捻転差がある
この胸と骨盤の捻転差の米女子ツアーレンジはマイナス3度~マイナス11度ですので、岩井選手は捻転差を保ってインパクトする選手とわかります。この捻転差を保ってインパクトすると、フェースローテーションが少なくなる傾向があります。

画像③グリップ/インパクトで胸と骨盤の捻転差が大きい岩井選手は、左手をストロンググリップで握る
このフェースローテーションが少ないタイプには、左手はフェースが開きにくいストロンググリップがマッチします。岩井選手のようにインパクトで胸と骨盤の捻転差が多いタイプの人は、左手のストロンググリップを試してみると良いでしょう。
岩井選手から学べるポイントは「トップの奥行きの深さ」
最後はアマチュアゴルファーと岩井選手を3Dアバターで比較してみましょう。画像④の写真左は一般アマチュア、写真右は岩井選手の3Dアバターです。
左のアマチュアは胸の回転がマイナス93度と悪くないですが、手の前後の移動距離がマイナス22cmと浅いのに対して、右の岩井選手は手の前後の移動距離がマイナス46.5cmと、アマチュアに比べて約2倍以上に手が背中側の深い位置に達しています。

画像④3Dアバターでのデータ比較/左のアマチュアは手と頭の間隔が浅いのに対して、右の岩井選手は手と頭の間隔が深い
この手の前後の移動距離がもたらす違いは、ハンドパスの軌跡にも表れています。左のアマチュアはハンドパスの軌跡がSの字を描くように前から後ろ、そしてまた前とゆがみが大きいのに対して、右の岩井選手はハンドパスがより直線的に斜めに上がっています。スウィング中のハンドパスは、シンプルであるほどスウィングの再現性が高まりますので、岩井選手のように胸が右に回転するのに伴って、自然に手の奥行きが深くなるトップは理想的と言えます。もしアマチュアの方が岩井選手を参考にする際には、この胸の回転に伴って手の奥行きが深いトップを参考にすると良いでしょう。
今回は岩井 千怜選手のスウィングを解説させて頂きました。今週は全米女子オープンがエリンヒルズGCで開催されます。岩井選手をはじめ日本勢は21人が出場します。先日の西郷真央選手に続くメジャー優勝に期待しましょう!