エストリックス社ってどんなシャフトメーカー?
エストリックス社と聞いてすぐにシャフトメーカーだとわかる方は相当ゴルフシャフトに精通していると思います。まずはエストリックス社について少しだけ説明させて頂きます。
エストリックス社はシャフトメーカーである一方、三菱ケミカル社の代理店として「ディアマナ」や「TENSEI」の販売活動を主に行ってなっている会社です。エストリックス社のシャフトブランドとしてはかつて80t高弾性シート採用シャフトの「SHOCK WAVE」が人気モデルでした。現在発売されているブランドは飛距離追及タイプの長尺用シャフト「S-TRIXX VALMER BBX」があります。エストリックス社のシャフトは三菱ケミカルのシャフトラインナップにない個性的なシャフトが多いイメージです。

S-TRIXX X
三菱ケミカル社との関係が深い会社ですので、エストリックス社のシャフトは全て三菱ケミカル社製です。三菱ケミカル社の優れた素材を使って作られた新型シャフトの「S-TRIXX X」はどんな仕上がりなのか検証したいと思います。
外観デザイン
シャフト外観は手元側にXをモチーフにデザインした高級感のあるイオンプレーティング加工が施されています。イオンプレーティング加工のシャフトはかつて三菱ケミカルのディアマナなどの多くのモデルに採用されていましたが、エストリックスの最上級モデルにふさわしい高級感のある外観に仕上がっています。
シャフトスペック
「S-TRIXX X」は40グラム台、50グラム台、60グラム台の3つの重量帯のラインナップです。それぞれの重量のフレックスは、40と50がR・ S・ X。60がS・ Xを用意しています。カタログでのキックポイントは中元調子の「MID-HIGH」となっています。
S-TRIXX X 40 | S-TRIXX 50 | S-TRIXX X60 | |
R | 242CPM | 242CPM | - |
S | 260CPM | 260CPM | 262CPM |
X | 270CPM | 270CPM | 277CPM |
シャフトフィーリング
S-TRIXX X 50
メインの重量帯「S-TRIXX X 50」からチェックしてみましょう。Sフレックスをワッグルした際に感じるのは手元側がしっかりしています。バット部分もやや太めの15.50ミリでハリがあり、潰れにくい印象。中間部分から先端部分にかけても大きく動く感じはありません。部分的に大きなしなりは感じない一体感のあるシャフトフィーリングです。
カタログの表記にキックポイントはMID- HIGH(中元調子)とありますが、そのように感じません。この独自の中元調子のシャフトフィーリングは三菱ケミカルの炭素繊維を適材適所に使用することで実現しているんだと思います。

S-TRIXX X 50
手元側には超高弾性ピッチ系炭素繊維のDIALEAD(88t)をバイアス層(※)に使用しています。これによって手元側は強めの切り返し時に潰れに強いフィーリングを実現しています。中間部分から先端部分には中弾性炭素繊維のMR70を使用していて、ねじれ剛性を高めていることでスピード感を得られるフィーリングに仕上がっています。
※「バイアス層」とは手元から先端にかけて一本の線を引いたときに、その線に対して45度の角度の繊維層のこと
実際にスウィングしてみても手元側がしっかりしていて切り返しのレスポンスの良さを感じられます。手元がしなってダウンスウィングのタイミングがとれる中元調子のフィーリングではなく、新しい感覚の中元調子です。
切り返しからインパクトエリアにかけてしなり戻りのスピード感がありますが、先調子シャフトのようなインパクトエリアを一気に振り抜けるような感覚ではなく、インパクト時にはしっかりとボールをフェース面に押し込んでとらえてくれます。スピード感がありながらもインパクトエリアでの安定感もあるのが特長です。シャフトそのもののパワーを感じられます。
40グラム台と 50グラム台にはR・S・Xフレックスが用意されていますが、「S-TRIXX X」はSフレックスがメインフレックスになると思います。40、50ともにSフレックスのシャフト振動数は260CPMで、シャフト手元部分の独自の剛性感はレスポンスの良い切り返しを生み出します。

S-TRIXX X 40
40Sは軽いことにより50Sよりもスピード感がありますが、どちらもシャフトの「たわみ」や「ねじれ」を感じることなくスッキリとスムーズに加速していくフィーリングです。インパクトエリアで先端部分が戻ってきてくれることでオートマチックにボールをとらえ、ボールがフェースに押し込まれることなく弾き飛ばしてくれます。
中元調子ながらシャフトを操作して弾道を操るようなシャフトではないと思います。スウィングするだけでシャフトがオートマチックに仕事をしてくれますので、プレーヤーはターゲットに合わせてしっかり振り抜くだけでこのシャフトが持つパフォーマンスを体感できるでしょう。レンジボールでの弾道は高さが抑えられた中弾道でストレートフェードです。フェード回転が入りながらもバックスピン量は多くならずにやや少なめ。ボールスピードは速く、飛距離重視設計のシャフトなのが体感できます。
Rフレックスは一般的なイメージよりもしっかりした硬さがあります。40、50ともにシャフトに潰れるイメージが一切なく、捻れず、たわみのないスッキリしたしなり戻りでインパクトを迎えます。Sフレックスよりも弾道は高さが出ます。切り返しのレスポンスが良く、シャフトがオートマチックに加速してくれるので、ヘッドスピードが出にくい方はヘッドスピードアップが可能なフレックスです。

ヘッドスピードアップが可能なRフレックス
Xフレックスは40、50ともに同じような手元側の硬さがあり、どちらもしっかりとした手応えを感じるでしょう。シャフト先端部分も当たり負け感がなく、左を気にせずに振っていけるイメージです。
50XはSフレックスでも物足りない方は試すと良いと思いますが、切り返しのタイミングが取れないとシャフトパフォーマンスが発揮できず、弾道安定性が低くなると思います。Sフレックスと打ち比べて選んで下さい。40Xは軽め硬めのいわゆる「軽硬」の代表的なシャフトになるでしょう。飛距離を求めてやや長めのレングスでマッチングさせると色々とパフォーマンスアップする可能性を秘めている印象です。
S-TRIXX X 60
60はS とXの2フレックス用意されています。中元調子のシャフトは重量が上がるとシャフトにゆとりを感じられるのものが多いですが、「S-TRIXX X 60」はシャフト重量があっても素材と設計によってシャフト中間部分までしっかりとした手応えのある硬さがあります。ダウンスウィングの切り返しさえ問題なければスムーズにインパクトまでヘッドを導いてくれます。
Sフレックスは切り返し時の感じ方によって印象は変わります。切り返しで硬く感じる方にはハードなスペックと感じますが、うまく切り返せる方には高弾性カーボンのシャフトらしいインパクトエリアまでオートマチックに動くスピード感を得られるはずです。Xフレックスは一気にシャフト全体の硬さが増します。シャフト振動数も277CPMとSフレックスよりも15CPM上がりますのでフィジカル面の強いプレイヤー向けになるでしょう。
Xフレックスのしなり戻りのスピード感は他のシャフトにはないフィーリングです。
どんなヘッドとのマッチングが良いか?
大慣性モーメントヘッドとのマッチングがオススメです。「S-TRIXX X」は高弾性シートの持つシャープなしなり戻りが特長です。シャフトをコントロールしてインパクトを作っていくよりもオートマチックなシャフトのしなり戻りを活かして打っていくほうが良いでしょう。
シャフトもオフセンターヒットに強い先端部分の設計になっていますのでヘッド打点ブレに強い大慣性モーメントヘッドとのマッチングは「S-TRIXX X」の飛距離追及型のシャフトコンセプトに合っていると思います。
特にアマチュアゴルファーはヒールヒット時の飛距離ダウンが多くみられる場合が多いですが、「S-TRIXX X」はヒールヒットにも非常に強い印象です。打点ブレを気にせずに最高飛距離を狙って振ってもらいたいと思います。
「S-TRIXX X」総評
三菱ケミカル社と関係が深いエストリックス社が三菱ケミカル社の有する優れたパフォーマンスのマテリアルを使って作られた「S-TRIXX X」は三菱ケミカル社のラインナップには無い飛距離性能の高い新感覚の中元調子シャフトでした。

飛距離性能の高い新感覚の中元調子シャフト
強烈な弾き感から繰り出される高いボールスピードを持ち、飛距離追及するために開発された個性の光るプロダクトです。高い飛距離性能を持ったシャフトはアフターマーケットでのポジションでも優位になります。エストリックス社はそのポジションを狙ったシャフトが市場に必要との判断で投入したのでしょう。
高弾性シートで作り上げた新感覚の中元調子シャフトは飛距離性能を求めての設計ですので、万人に合う設計ではないと思いますが、合う方には今までにない高いパフォーマンスを発揮してくれます。具体的にはプレーヤーが切り返し時に感じる印象によってパフォーマンスに差が出ます。
飛距離アップを求めてリシャフトを検討している方には必ず試打することをオススメします。