Q.アイアンに合わせてウェッジをリシャフトしたいんですがおすすめは？
A.アイアンが「S」でウェッジをアプローチクラブとして使用するなら「R」をおすすめします
GD 今回の依頼はウェッジのリシャフトですか？
今井 アイアンの流れでウェッジのシャフトも同じにしたいという依頼です。それに合わせてライ角、ロフト角調整をしてほしいとのことです。
GD アイアンは「ミズノプロ 719」で、シャフトは「ゼロス7」のSフレックスが装着されています。これに合わせてウェッジも「ゼロス7」のSに替えるんですね。
今井 ウェッジの場合は、アプローチクラブなのでコントロールショットが主となります。今回は、50度、54度、58度、3本のリシャフト依頼ですが、54度と58度はフレックスを落として「R」にして、50度はPWと同じようにショットクラブとして使いたいと言うことなので「S」にすることにしました。
GD これは「連載#4」で紹介したのと同じですね。
今井 ウェッジのリシャフトをする場合は、アイアンよりも若干重めにするか、フレックスを軟らかくするなどいろいろな選択があるので、どんな使い方をするか相談して決めていきます。今回の依頼主は、54度と58度を「S」にするか「R」にするか、すごく迷われていましたが、最終的に「R」の0.25インチ先端をカットすることで納得していただきました。
GD 0.25インチチップカットするとフレックスは硬くなる？
今井 ウェッジ用のシャフトの0.25インチカットでは、大きな変化は感じないと思いますけど、「Rよりちょっと硬くなっている」と思えるので、気分的にも納得できるのかな？ ということでご提案させていただきました。
GD 「おまじない」みたいですけど、ゴルフのクラブの場合、それってけっこう大事なことですよね。
今井 そうですね。アイアンのソケットを替えるだけで、急に良くなることもあるので納得して使えるクラブが良いと思います。
GD まずは……。
今井 ウェッジに合わせるアイアンのデータを測ってみましょう。
GD 「アイアンの流れで」という依頼ですから、アイアンの状態を見ないといけませんよね。
今井 うむ……。これ、ちょっと、おかしいな……。「ゼロス7」の割にヘッドが効きすぎていますね。持った感じのバランスが悪い。
GD どういうことですか？ グリップもミズノ純正のものが装着されているので、既製品もしくはメーカーカスタムでは？
今井 このアイアンは中古をネットで購入したそうなんですが、もしかしたらカスタム品かもしれませんね。バランスが「D1」でそろっているので、「D1仕上げ」で組まれたアイアンでしょう。
GD 「D1」に問題ありですか？
今井 「ゼロス7」のような軽量シャフトでバランスを「D1」にしてしまうと、ヘッドが効きすぎてシャフトが負けている状態になり、全体的なバランスが崩れてしまいます。軽量シャフトの場合は、バランスを気にせずに組み上げることをおすすめしています。
過去の組み上げデータを見ると「ゼロス7」にリシャフトした場合「C7～9」に仕上がることが多い
GD きっと前の持ち主が「D1」にこだわってカスタムしてみたら、何かがおかしい。だからキズもなく、買ってすぐ売りに出した可能性もありますね。こういったクラブが中古市場には出回っていると思うと安易に購入できませんね。
今井 依頼主に確認したところ、「それはまずい」と言うことで、アイアンの組み直しをしてから、ウェッジのリシャフトをする了承を得ました。
ウェッジのリシャフト依頼だったが、急遽アイアンの組み直しが加わった。バーナーでネックに熱を加えシャフトを抜く
GD 元のアイアンを正さないとウェッジは組めませんからね。
今井 では、アイアンのシャフトを抜いていきましょう。
GD ネック内部から錘（おもり）は出てきましたか？
今井 出てきましたね。3.5～6グラムの錘が入っていました。
ヘッドを抜いたらバランス調整の3.5～6グラムの錘（おもり）が出てきた。ネック内部、シャフト内部の接着かすをきれいに掃除してから組み直し作業に入る
GD けっこう入っていましたね。それぐらい入れないとバランスが「D1」にならなかったということですよね。
今井 錘（おもり）を抜いたら「C8」になったので、ヘッドの重量管理はしっかりできています。さすがミズノという感じです。
GD やっとこれでウェッジのリシャフトができますね。今回は「NS950」の付いた「ボーケイ フォージド」をアイアンと同じ「ゼロス7」にリシャフトですね。
今井 ウェッジは重量管理がまちまちなので、狙った数値が出るかは仮組みしてみないとわかりません。今回の依頼主はできるだけ内部調整を希望されているので、バランスが重くでたら、ホーゼル内を掘る必要があるかもしれません。
GD けっこうドキドキしますね。
今井 おー、大丈夫。50度、54度、58度、3本とも「C9」に仕上がりそうです。
GD 「連載#4」の時は、バックフェース一面に鉛を貼ることになりましたが、今回は必要なしと……。
今井 ちょっと待ってください。このアイアン、ロフトも変えられていますね。規格だと7番で32度ですが、測ってみたら34度あります。バランスだけでなくロフトの注文も出してカスタムしてありますね。
6番アイアンだけバランスがでなかっため、「C8」になるようシャフト先端に錘１グラムを足しバランスを整えた
GD 通りでこのアイアン、ミズノにしてはオフセットが少ないなと。
今井 特別手を加えなければ、ロフトを寝かせるとネックはストレートになり、ロフトを立てるとグースネックになります。※以下、番手：実測値→調整後（カッコ内は規格値）
●6番：30度→27.5度（28度）
●7番：34度→31.5度（32度）
●8番：38度→36度（36度）
●9番：42度→40.5度（41度）
●PW：46度→45度（46度）
今回はいじられていたロフトを元に戻し、ロフトピッチを整えた。8番は規格通り。6番、7番、9番は規格値よりも「0.5度」、PW、50度、54度はそれぞれロフトを「1度」立たせて、アイアンとウェッジの流れを統一した
GD 6番から8番は規格よりロフトを2度寝かせてあり、9番は1度、PWは規格通り。4度ピッチにはなっていますが、これだと男子ツアープロみたいですね。
今井 調整後は6番と7番のロフト差を4度にして、7番からPWは4.5度ピッチに揃えました。「ミズノプロ 719」の規格品よりは、0.5度ですがロフトを立てて調整しました。
GD オフセットの雰囲気もロフトを戻したら変わりましたね。見慣れている“ミズノの顔”になりました。
今井 この流れに50度、54度、58度のロフトを合わせていきます。50度→49度、54度→53度。58度はそのままです。
GD 50度と54度はロフトを1度立たせたのでちょっとグースネックになりましたが、アイアンからの流れをみると、自然な感じがします。アイアンとウェッジで違うメーカーのものをチョイスされる方が増えていますが、ロフトやライ角、ネックまわりの調整で流れを統一させることも「ツアークオリティのクラブ工房」では可能なんですね。
今井 ウェッジはいろいろな調整方法がありますので、「こうしたい」という要望があれば、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
GD なかなかそういった相談ができる工房がないので助かります。ウェッジはスコアメイクに欠かせないクラブなので、自分のイメージに合うものを使いたいですからね。
今井 今回、アイアンの組み直しをするなら、「アイアンのソケットを短くしてほしい」という依頼がありました。通常使用しているものより、5ミリ短いものに取り換えています。
GD 本当だ。ちょっと短い。
今井 ソケットが長いと「高重心に感じる」ということで、ウェッジも含めて6番から58度まですべて5ミリ短いソケットにしました。
GD なかなか気にしないところだと思いますが、そういった要望にも対応しているんですね。
「ソケットが長いと高重心に感じる」とのことで、通常使用するものより5ミリ短いソケットを装着
【依頼主のレビュー】
ウェッジのリシャフトをお願いしたところ、アイアンに問題があると聞いて驚きました。「ゼロス7」の付いた「ミズノプロ 719」は珍しく、「これはいいぞ」と思いネットで中古を購入したのですが、まさかそんなことになっていたとは……。ロフトまでいじっていたなんて素人目には気づきませんでした。
3本の「ボーケイ フォージド」は2017年の旧モデルなんですが、打刻デザインがかっこよく、いつかリシャフトをしてまた使いたいと大事に保管していました。今回アイアンを含め軽量スチールシャフト仕様にすることができ、とても満足しています。
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※フルセットのフィッティングをご希望の方は120分のお申し込みをお勧めします。
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●今回ご紹介した「クラブ計測」、「アイアンの組み直し」、「リシャフト」、「ライ、ロフト調整」をご希望の方は、下記ホームページからお気軽にお問合せください。
【今井正人のツアークオリティのクラブ工房】
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