「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はフォージドウェッジが主流から外れた理由についてクラブ設計家と考察してみた。
画像: ”FORGED”を謳うニューモデルを見かけなくなったのはナゼ?

”FORGED”を謳うニューモデルを見かけなくなったのはナゼ?

主に日本向けだった“フォージド”ウェッジ

みんゴル取材班(以下、み):かつては「ボーケイ・フォージド」とか「マックダディ・フォージド」など鍛造を謳うモデルが結構ありました。最近はあまり見かけなくなったのはなぜでしょう?

宮城:そもそもボーケイやクリーブランドなどメジャーなウェッジは昔から鋳造ですから。フォージドは主に日本向けのモデルで採用されてきました。

み:日本人ゴルファーは軟鉄鍛造が大好きですもんね。

宮城:実際には鍛造と鋳造でそれほどの違いはありません。確かに顕微鏡レベルでは鍛造のほうが鉄の組織が締まっています。これに対して鋳造は断面を顕微鏡で見ると空気が残っていたり粒子が均一でなかったりします。確かに打感は鍛造のほうがよりやわらかく厚くなりますが、よほど敏感な人でないと違いはわかりません。

み:なるほど。それなら製造費の安上がりな鋳造のほうがいいというわけですか。

宮城:鋳造が大量生産向きなのは確かですが、一番お金のかかる金型代は中国で作れば鋳造でも鍛造でもそんなに変わりません。大手メーカーが鋳造を採用する最大の理由は製造コストではなく製品として再現性が高いからです。

み:鍛造よりも製造上の誤差が小さい?

宮城:鍛造の場合は型の間から鯛焼きの周りの薄い皮のようなバリがはみ出します。日本では完成品に近いくらいに型抜きできますが、中国にはまだそこまでの技術がなく、残ったバリをたくさん研磨するので形状や重さのバラつきが出てしまいます。鋳造の場合は溶かした鉄を流し込む湯口の部分だけ取ればいいのでちょっと磨くだけで完成品になります。だから形状や重量の誤差もごくわずかです。

み:スピン性能はどうでしょう? 鋳造の溝よりも鍛造の溝のほうが加工精度が高くてスピンがよくかかると聞いたことがあります。

宮城: 昔はスコアラインも鋳造していたのでエッジを利かせることが難しかったけれど、いまは鋳造ヘッドでもフェース面だけ後からCNCで機械加工するようになったのでスピン性能の差はありません。

み:最近はウェッジも内部構造が複雑になっています。そのことも関係ありますか?

宮城:ボディをくり抜いてタングステンやセラミックを入れたりするようになって、軟鉄一体鍛造に対するこだわりが薄れてきていることもフォージドが減った要因かもしれませんね。

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