3打差までに15名がひしめく混戦模様でスタートした最終日に、66とスコアを伸ばした小祝さくら選手がクラブハウスリーダーとしてホールアウトすると、残り2ホールで1打差を追いかける最終組の初優勝を目指した仲村果乃選手、そして同スコアの佐藤心結選手はバーディを奪えずに小祝選手の今季初優勝が決まりました。

「明治安田レディス」で今季初優勝を飾った小祝さくら
小祝選手は3日間でボギーは1個、最終日に追い上げ2位タイに入った河本結選手もボギーは1個、それに対して最終組の佐藤選手は3個、仲村選手は4個と難しくはなかったセッティングにおいて勝利を分けたのはボギー数の差でした。
中継のカメラが追いつかないほどプレーのペースが速い小祝選手ですが、ミスしても外したくないエリアは頭に入れつつ距離や風、ライの状況を判断しシンプルに軽いドローボールで攻めます。派手なガッツポーズやアクションは一切ありませんが、表情を変えずに淡々とプレーする姿こそ小祝さくら流の“目の前の1打に集中したプレー”なのでしょう。
5月末の「全米女子オープン」でドライバーのシャフトを数年ぶりにチェンジしていましたが、その後なかなかセッティングが決まらずに練習場でシャフトやヘッドを取り換えながらテストを重ねる姿を目にしていました。最終的に昨年秋に発売されたスリクソン「ZXi LS ドライバー」に三菱ケミカル「テンセイオレンジ」の50g台のSシャフトに落ち着いたのは2、3週前からでした。
それに加えて7位タイで終えた「資生堂・JALレディス」でディボット跡からのショットで右手首を痛め、「そのときも意外とよくて、力を入れられなかったんですけど、逆にそれがいいのか分からないんですけど、すごいドライバーの調子がよくて、不思議な感じでした」とケガも味方につけショットを安定させる対応力の高さも見せてくれました。
それではスウィングを見てみましょう。軽いドローボールが持ち球の小祝選手ですが、お手本にしたいのはテークバックで左腕と地面が平行になった位置で手元が胸の正面にある点、正面から見ると右腕は左腕よりも上にある点の2点。

左腕が地面と平行になる位置で手元は胸の正面、左腕よりも右腕が上にある
実はこの2点は密接な関係にあります。手元を体の正面から外さないようにテークバックを始動すると、前傾姿勢に沿って左肩は下がります。そうすることによって左腕よりも右腕は上にある状態が作られます。腕や手元を体の正面に保つことで腕の振り遅れを防ぎ、再現性の高いスウィングを身に付けていると言えます。
そしてドローヒッターが消したい左へのミスを防ぐために、小祝選手はインパクト以降の上半身の動きを止めずに胸が動き続けていることが見て取れます。腕を体の正面から外さずに胸郭をしっかりと回していくことで、急なフェースターンを防ぎコントロールされた軽いドローボールでマネジメントを組み立てています。

ドローヒッターが嫌う左へのミスを防ぐために手元を体の正面にキープしたまま胸郭を動かし続ける
2019年の初優勝以来、7年連続の勝利を続ける小祝さくら選手。今週福岡で開催される「大東建託・いい部屋ネットレディス」の後には「AIG女子オープン」(全英女子オープン)へと旅立ちます。昨年のセントアンドリュースでの予選落ちのリベンジを果たし決勝ラウンドで戦う姿を見せてくれることでしょう。
写真/大澤進二、姉崎正、岡沢裕行