
日本人6人目のメジャー制覇を達成した山下美夢有(写真提供/U-NEXT)
思えば1998年、韓国のパク・セリがメジャーである全米女子プロと全米女子オープンに勝ち、それをきっかけに韓国にゴルフブームを巻き起こし、パク・セリキッズと呼ばれるジュニアゴルファー層を生み出しました。
パク・インビ、シン・ジエ、イ・ボミと数え上げればキリがないパク・セリキッズは、その後成長して米女子ツアーやメジャーを席巻することになります。韓国女子は今も米女子ツアーで上位層を形成していますが、そのきっかけになったのが98年のパク・セリ選手の活躍です。
日本で、パク・セリのような影響を後進のプレーヤーに与えたのが、宮里藍さんでした。パク・セリさんは1977年生まれ。パク・セリキッズの中心層は1988年生まれの世代でしたが、1985年生まれの宮里藍さんに強く影響を受けた世代が渋野日向子選手、畑岡奈紗選手ら1998年度生まれの選手たち、いわゆる黄金世代です。
世界ランク1位にまでなった藍さんを見て育った黄金世代には大きな出来事が3つありました。ファーストインパクトが勝みなみ選手のアマチュア優勝(2014年)。セカンドインパクトが畑岡奈紗選手のアマチュアで日本女子オープン優勝からの米女子ツアー優勝(2018年)、そして決定打ともいえるサードインパクトが渋野日向子選手のメジャー制覇(2019年)です。
同世代の選手たちはもちろん、稲見萌寧選手が東京オリンピックで銀メダルを獲得するなど、ジュニア時代から身近にいる同世代、あるいは先輩たちの活躍を見ることにより、「自分もああなりたい!」と誰かから強制されたのではなく、自ら目標に向かって取り組んで来たことで、一気に日本の女子ゴルフ界のレベルが上がったのです。
宮里藍さんが教えてくれたのは、「日本人が海外でも活躍できること」だけではなく、体格に恵まれなくても戦える術(すべ)であったことも見逃せません。
代名詞とも言えるドローボール。そしてショットの正確性とショートゲームなど、得意技を磨き抜けば世界で戦えることを、藍さんは背中で示してくれました。
結果、今ではJLPGAツアーからLPGA(米女子)ツアーへ向かう流れは“当たり前”になっています。多くの先例が生まれ、それがシェアされることで、JLPGAでなにを学び、なにを磨くのか。そのプロセスをLPGAでも積み重ねることで、どう成績に結びついていくのかが理解できるようになっています。
山下美夢有選手のメジャー制覇も、このような大きな歴史のうねりのなかで生まれた快挙だったと思います(もちろん、讃えられるべきは本人の努力です)。
かつては“海の向こう”の憧れの地だった海外のツアー、そしてメジャーは、日本ツアーからステップを踏めば辿り着ける“地続き”な場所へと変化していると言えるかもしれません。
現在の米女子ツアー参戦組の中で次のメジャー覇者に誰がなっても不思議ではありませんし、来季以降も海を渡る選手が続くことでしょう。楽しみでなりません。