「ニトリレディス」で今季初優勝(通算21勝目)を飾った鈴木愛。首位と3打差でスタートした最終日に5アンダーでプレーし逆転でつかんだ今季初勝利を生んだスウィングをみんなのゴルフダイジェスト特派記者でプロゴルファーの中村修が解説。

通算21勝目を飾った鈴木愛選手ですが、優勝会見では「練習の質は良かったが量が足りていなかった」と話します。確かに30代になって練習量は以前よりも少なくなったと感じていましたが、私たち現場の記者の間では日が暮れるまで練習グリーンにいる練習の虫という認識でした。

20勝を挙げたトップオブトップの選手が「上位にいても最終日に勝てそうな気がしていなかったのは、練習量が少なかったから。練習量でここまでやったから大丈夫という自信を持って最終日に挑めていた部分は大きかった」とと切り出した際にはやはり練習の大切さを気づかされます。

画像: 2カ月前から足りていなかったショットとパットの練習量を増やしたことで自信を持って最終日に臨んだ

2カ月前から足りていなかったショットとパットの練習量を増やしたことで自信を持って最終日に臨んだ

初日に好スタートを切った青木瀬令奈選手は、プロアマ大会で一緒にプレーした順天堂大学の天野教授から「練習でやっていることが本番でも出るから、打つ前にプラスアルファで『練習の通りに打つ』と思ったほうが良い」とアドバイスを受けたと話していましたので、4日間で1打を争う場面では練習に裏付けされた技術が表れた試合だったように思います。

そして12アンダーと後続に2打差を持って進んだ18番パー5の深いラフからの3打目は、低い弾道で花道からバウンドしてピン手前3mにつけるナイスショットが印象的だったので優勝会見で解説をお願いしました。

「距離は137ヤードで、エッジまでが100くらいだったんですけど、キャディさんが9番と8番持ってて、9じゃない? って言ってきたんですよ。奥が137+13ヤードくらいだったので、奥のカラーギリギリまでが150だったんですね。ただ、あそこは傾斜が強いので、なるべく上にも下にもあんまり遠くに着けたくなくて、下からがすごい重いので……。でも2打差リードしてるっていうのは、もう18番のティーに行く時点で確認してたので、残りホール、まだ多分3ホール4ホールくらい最終組が残ってたので、私みたいに最後3つ4つって伸ばす人がいるかもしれないと思ってたので、絶対バーディを取れば優勝っていうのは確実って自分の中でわかっていたので、パーを取りに行くんじゃなくて、バーディを取りに行きたかった。そうなると9番じゃなかなかバーディチャンスにつかないって思ってたので、8番でちょっと短く持って打つっていうのを決めて、なるべく近いところからバーディトライをするっていうのを心がけていた。安全策だと9番だったと思いますけど、8番で行くと言って、8番アイアンで打ちました」

画像: 深いラフからの最終18番パー5の3打目を花道を使って見事にピン手前3mに寄せるゴルフ脳の高さを見せた

深いラフからの最終18番パー5の3打目を花道を使って見事にピン手前3mに寄せるゴルフ脳の高さを見せた

結果は見事にバーディチャンスを作り、残念ながらパットは決められませんでしたがパーでホールアウトし、クラブハウスリーダーとして後続を待つことになりました。洋芝に沈むライの状況、打ち上げで花道を使えるピン位置、後続との差を考えバーディを取るための最善策を選び、実践するゴルフ脳の高さには脱帽するしかありません。勝つべくして勝った21勝目に鈴木選手の強さの秘訣を教えてもらった気がします。

それではスウィングを見てみましょう。鈴木選手はトップでのシャフトの向きをチェックする素振りをしています。それを聞くと「トップで若干クロスに上がる気がして、それが原因でフック回転が強くなるのが嫌で、素振りの時点で結構意識してやっています」との答え。

画像: フック回転が強くなることを嫌いトップでシャフトの向きをターゲットよりも左に向ける

フック回転が強くなることを嫌いトップでシャフトの向きをターゲットよりも左に向ける

トップでシャフトがターゲットラインとクロスするような向きになると、ダウンスウィングでクラブが寝てフェースが開いて下りてくるためインパクトでフェースを返す動きが強くなりフック回転で強くなりやすいものです。そこでトップでのシャフトの向きを意識してターゲットよりも左に向けるようにすることで、ダウンスウィングでクラブが寝なくなりドローの曲がり幅をコントロールできるようになります。

これまで培ったゴルフ脳の高さ、練習量に裏付けされた技術とモチベーションの高さを見せてくれた鈴木選手。3週前は12位だったポイントランクも首位の佐久間朱莉選手500P差の6位と追い上げています。メジャー大会や4日間大会が続く秋の陣に向けて視界は良好なようです。

写真/大澤進二

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