練習日の火曜、水曜日に現地で練習ラウンドについて歩きながら選手やキャディさん達に大洗GCの攻略法を聞くと、ラフが深いもののグリーンは比較的軟らかくUTや7Wでも止まる状態だったため、とにかく「フェアウェイキープとラフに入ったら無理せず3打目を寄せてパット勝負」とどの選手も口を揃えていました。
太平洋のすぐ横にある大洗GCは風の影響で松林は斜めに伸びティーからはコースを狭く見せ、グリーンを狙うショットでは高さを要求されるホールもありました。初日と2日目は風もあり球の高さを出せば風に影響されショット力が求められるコンディションでしたが、スコアメークのカギになったのはアプローチとパットのショートゲームだったように思います。
金澤志奈選手のスタッツを見ると、FWキープ率1位の堀琴音選手は48/56に対して金澤選手は39/56、パーオン率1位のシン・ジエ選手57/72に対して47/72と、ショットのスタッツでは劣るもののスコアを作ったのは4日間の平均パット数27.25回という全体4位のパット数が光っています。ショットが良かったシン・ジエ選手は平均パット数が31.75回と金澤選手よりも1日4打以上多かったことが10位タイで終えた大きな要因となりました。

初優勝を「ソニー日本女子プロ選手権」で飾った金澤志奈(写真/岡沢裕行)
金澤選手の少ないパット数は、正規の18番とプレーオフでもアプローチをピンそばに寄せて難なくパーで切り抜けて見せたアプローチの精度とショートパットに表れていたように思います。もちろん安定したショット力には定評がありましたが、スコアを崩さないプレースタイルが難コースの大洗GCを相手に初優勝を手にしたカギになったのではないでしょうか。
それではスウィングを見てみましょう。金澤選手のスウィングの特徴をひと言で表すと「スウィングプレーンが非常に安定していて再現性が高い」ということになるでしょう。スウィングのテンポも狂うことが少ないですし、飛距離を求めないプレースタイルにマッチしたスウィングといえます。

体幹部のゆるみのないアドレスから前傾姿勢をキープしたままスムーズテークバックする(写真/姉崎正)
164センチで細身の体系ではありますが、しっかりとトレーニングに取り組み体力が向上していきています。その結果、最終日に伸ばして終えることができるようになり、今回の優勝にもつながっています。その体力の向上がスウィングの安定感に繋がっています。
体幹とは、胸、お腹、背中、腰回り、お尻、肩甲骨周り、股関節周りのを指しますが、体幹部を鍛えた効果はゆるみのないアドレスの姿勢に表れます。体の芯がしっかりしているとアドレスも整い、体幹部をねじりながらターゲットと反対方向にクラブをスムーズに振り上げていきます。
トップにかけて骨盤の回転量と肩のラインの回転量に差を作ることで体幹部をしっかりとねじってエネルギーを蓄えると、ターゲット方向にクラブを振るために体幹をゆるませずに切り返し、足、腰、胸、腕、クラブへとエネルギーが伝達されていくことが見て取れます。

トップからの切り返しで右の側屈が入ることでクラブをインサイドから下ろす(写真/姉崎正)
トップの右肩の高さとダウンスウィングの右肩の位置に注目すると、右肩が下がるつまり右の体側が縮み側屈が入っていることがわかります。切り返しで右の側屈が入る動きが左への重心移動や手元が低い位置に下りる動きと連動しています。インサイドからクラブを下ろすコツとも言えますので参考にしてみて下さい。
安定したスウィングプレーンとショートゲームの精度の高さを身に付けたことで、難コースほどスコアを作れるプレースタイルを構築して来た金澤選手。秋に続く4日間大会や日本女子オープンでも活躍する姿が見られることでしょう。