1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄がラウンド中に話題になる「ゴルフの知識」を綴るコラム。第32回目は、ゴルフの起源について。

ローマ帝国とフランスにもルーツが?古代から中世に伝わる球技

画像: かなり前に使われていたクラブ

かなり前に使われていたクラブ

ゴルフの起源には諸説あり、一般的に言われているスコットランドの他にローマ帝国、フランス、オランダなどがある。

まずオランダ起源説だが、14世紀のオランダでは羽毛を詰め込んだ大き目のボールを、長い柄の先端に真鍮製のヘッドが付いたステックで12~40メートル離れた場所にあるポールに向かって打ち、少ない打数で勝負をするコルベンというスポーツがゴルフになったといわれている。冬になり川が凍ると氷上でも行われ、その模様は当時の風景画家に描かれ残されている。

これとは別に1297年2月26日にルーネン・デ・フェヒトで、棒と皮でできたボールを使うゲームで、遠く離れた標的まで最小の打数で地面に掘った穴にボールを運んだ者が勝利するというゲームが行われたという伝説があり、このゲーム自体、17世紀まで行われていたことからスコットランドよりも古いとされる。1200年代中期に、オランダの詩人マーラントのBoeck Merlijnに、棒を使った球技Colf/Kolfについて記述されている。クラブ状のものでボールを打つゲームは13世紀後半の文献の挿絵として残されている。

1650年アメリカのニューヨーク州に入植したオランダ人たちがKolfを年間通じて楽しんでおり、冬季には氷上でもプレーしたとされ、路上でプレーするのは危険なことから1659年12月10日に地方議会で禁止令が可決されている。

ローマ帝国説は、紀元前55年頃スコットランドへローマ人が侵攻した際、ローマ人兵士がパガニアという球技をしたというのがゴルフの原点とされるが、実際にパガニアがどのようなゲームだったのかは不明だ。

画像: 昭和17年、石井光次郎が「ゴルフの起源」と主張した打毬

昭和17年、石井光次郎が「ゴルフの起源」と主張した打毬

フランス説では12世紀に先の曲がったスティック(クラブ状の)でボールを打ち、少ない打数で穴に入れた者が勝つというクロスというゲームがあり、それがゴルフになったとされる。このクロスのゲームは1244年に書かれた文献に残されていて、このゲームがオランダやスコットランドに伝わったとされる。

スコットランド説は14世紀に羊飼いが羊を追うときに使う棒で石を打ち、途中にある兎の巣穴に入れたのがゴルフの最初だとされる。

いずれの起源説も、クラブのようなもので石、もしくはボールのようなものを打ち、少ない打数の者が勝つという共通点がある。

英国ゴルフ協会は「棒とボールを使ったゲームは昔から存在しているが、18ホールで行われるゴルフは明らかにスコットランドで生まれたものだ」と述べている。

ゴルフというゲームが文献に登場したのはいつかと調べると1457年スコットランドのジェームズ2世が、軍事目的の弓術の練習の妨げになるとしてゴルフとフットボールの試合を「利益のないスポーツ」として出したゴルフ禁止令が最初だ。当時のゴルファー、主に身分の高い貴族などが武術ではなくゴルフばかりしていたということから出されたものだが、禁止令を出すほどゴルフが盛んに行われていたとの証明にほかならない。

ゴルフの起源を調べるとスコットランド語にGowfというのがあり意味は「打つ」。オランダ語のKolfは「打つ棒」を意味し、スコットランドに伝わった際にGolfになったという説もある。

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中

This article is a sponsored article by
''.