「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はPGAツアーでフジクラ「ベンタス」の使用率・勝率が高い理由について、同ツアーでツアーレップを務めた経験もある宮城さんと考察してみた。
画像: マスターズを制したローリー・マキロイは「ベンタス ブラック6」を使用(Photo/Blue Sky Photos)

マスターズを制したローリー・マキロイは「ベンタス ブラック6」を使用(Photo/Blue Sky Photos)

“すごくない”ところが”すごい”

みんゴル取材班(以下、み):少し古い話になりますが⑳25年の男子メジャー大会は、「マスターズ」でマキロイ(ベンタスブラック6)、「全米プロ」と「全英オープン」がシェフラー(ベンタスブラック7)、「全米オープン」はスポーン(24ベンタスブラック6)が勝ちました。フジクラ「ベンタス」がシャフトのグランドスラムを達成したわけですが、いったい「ベンタス」の何がすごいのでしょうか?

宮城:話の腰を折るようで申し訳ないですが、「ベンタス」はすごくないところがいいんです。そんなに飛ぶシャフトでもないし、球がつかまるわけでもありません。とくに「ベンタスブラック」はガチガチに硬くてアマチュアが打ったら右にしか行かないようなシャフトですが、それが欧米のプロのスウィングや最近のヘッドには合っています。

み:どう合っているのか具体的教えてください。

宮城:米ツアーではヘッドをシャットに使う選手が多く、スライサーで右方向にミスをするシェフラーは別として、ほとんどの選手にとって何が一番大事かと言えば左にミスがないことです。また、最近のヘッドはつかまる方向に進化しています。だからベンタスのようなつかまり過ぎないシャフトがもてはやされるわけです。

み:他のメーカーでも左に行かないシャフトはたくさんありますが。

宮城:確かに松山選手をはじめ「ツアーAD DI」なんかを好む選手も多いですね。では「ベンタス」の何が違うかといえば球が上がることです。そのおかげでロフトを立ててスピンを減らすような打ち方もできます。

み:なるほど。トッププロが技術を生かせるシャフトなのですね。それにしてもメジャーの勝率100%は凄いと思います。

宮城:使用している人数が多ければ勝つ確率も上がります。

み:なぜ「ベンタス」が一人勝ちしているのでしょう?

宮城:一番の理由はアメリカのツアーレップがプロモーションを一生懸命やっているからだと思います。ぼくもPGAツアーに行っていたのでわかりますが、向こうの選手はレップとの関係が良ければ、まあまあレベルのクラブやシャフトでも使ってくれるんですよ。昔、三菱ケミカルがシェアを伸ばしていた頃に、レップがシャフトに漢字のシールを貼って「日本仕様だ」といって選手に渡していました。それを選手はクールだとか何とか言いながら使うわけです。

み:トップレベルのプロなのに! アマチュアみたいですね。

宮城:マキロイなんかは本当に良くなければ使いませんが、そのマキロイやシェフラーが「ベンタス」を使っているから使ってみたいと思う選手も多いと思います。

み:ますます親近感を覚えます。

宮城:かといってアマチュアに合うかどうかは別問題です。試すならアマチュアには少しやさしい「24ベンタス」をおすすめします。

み:フジクラが近年PGAツアーに力を入れているのはなぜでしょう?

宮城:裏話になりますが、フジクラは外ブラのOEMシャフトを取りに行っているからでしょう。反対にグラファイトデザインはOEMをねらっていないので昔ほど積極的ではありません。メーカーの経営方針の違いがツアーの使用率にも影響していると思います。

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