
「バンテリン東海クラシック」で初優勝を飾った下家秀琉(撮影/岡沢裕行)
「これが現実なのかって思えるくらいに夢のよう」

最終ホールは2パットで優勝を決めた(撮影/岡沢裕行)
最後にタップインでウィニングパットを沈めると、下家は右手でボールを拾い、両手を高々と突き上げた。追い上げてきた安森に1打差をつけて逃げ切りの初優勝。グリーンサイドで待ち受けたツアー仲間から今季男子ツアーの「名物」となったウォーターシャワーを浴び、底抜けの笑みを浮かべた。
優勝インタビューでは謙虚な言葉の中に喜びをにじませた。
「これが現実なのかって思えるくらいに夢のようです。ここまで育ててくれた両親、いろいろな方が僕を応援してくださっているので、その方たちにまず感謝したいです。名前がすごく難しいんですけど、覚えてもらえるとうれしいです」
自身初の最終日最終組から首位で出て、2番パー5で3打目のアプローチを2メートルに寄せてバーディを奪い、いい流れに乗った。ピンまで残り130ヤードを50度で1ピンに寄せた4番パー4からは怒とうの3連続バーディ。12、13番連続バーディのあと、圧巻は15番パー5だった。グリーン右横からのアプローチでチップインイーグルを決め、右手でガッツポーズ。この時点で2位に3打差をつけた。
初優勝へ産みの苦しみも味わった。逃げ切り目前の17番パー4で3メートルのパーパットを外してボギーをたたき、このホールでバーディを奪った安森に1打差に詰められた。緊迫感の中で迎えた18番パー4だったが、第2打を8Iでしっかりとグリーンをとらえ、2パットでVゴールに飛び込んだ。
「うれしいです。緊張したのは出だしだけでした。2番のバーディでいけるかなと思って頑張りました。最後のパーパットは震えていました。いろんなことを考えてしまったので」
下部ツアーでは「59」を記録

ドライビングディスタンスは15位で301.45Yの飛ばし屋。ドライバーはタイトリストGT2を使用(撮影/岡沢裕行)
大阪府枚方市出身。4歳年長の長兄・秀翔、2歳上の次兄・秀平の影響で5歳でゴルフを始めた。大阪学院高3年の日本ジュニア、大阪学院大3年の関西学生で優勝。同年QTでサードを突破しプロに転向した。2024年チャレンジトーナメント(ACNツアー)「PGM Challenge」最終日に同ツアータイ記録の59を出してプロ初優勝を果たした。レギュラーツアーでも同年初シードを決めた。今季は「リシャール・ミルチャリティトーナメント」と「ISPS HANDA夏の決戦 誰が一番強いんだトーナメント」でそれぞれ9位、7位でトップ10入りしていた。
根っからのゴルフ好き。優勝記者会見で「趣味」を聞かれると「ゴルフだったら気持ち悪いですかね。でも、ゴルフです」と答えた。ゴルフの魅力については「今日よくても次の日がダメだったり、ダメでもよくなったりする。それを追求するのが楽しくて、どうやったらうまくいくのかを考えて、それが結果に出るのが面白いと思います」と話した。
もともと米ツアー志向が強く、この初優勝で今後の夢は大きく広がる。
「(米ツアーは)行ってみたいというよりかは、行きたいです。メジャーはやっぱりマスターズですかね。(松山英樹には)同じ日本人でこんな人がいるんだなと思いました」
次戦は16日に開幕する国内メジャーの日本オープン(栃木県・日光CC)となる。
「日本オープンは一番気合を入れて出場したい試合だと思っています。人生の中で取りたいタイトルのひとつです」
今季の初優勝者は下家で9人目。若手の台頭が著しい男子ゴルフ界にまたひとり期待のホープが飛び出した。
※2025年10月6日12時38分、タイトルを一部修正しました。