今季11人目の初優勝者の誕生
初優勝が待ち望まれる選手のなかで“最も近い選手の一人”と期待されていた脇元華選手がついに初優勝を飾りました。最終日のゴルフは初優勝とは思えないバーディラッシュの圧倒的なプレーで2位に3打差をつける圧勝劇。正確なショットとパットで次々にバーディを奪う姿に多くのギャラリーを魅了しました。
腰痛が悪化し来月には手術を受ける予定だという満身創痍の体調でしたが、フェアウェイキープ率は全体の1位、パーオン率も全体の3位成績とショットはとても安定し、平均パット数も28.67と全体の3位とパーオン率が高い中で平均パットが3位だったことで優勝を手繰り寄せました。

2週前から投入したマレット型のスコッティキャメロン「P5」で平均パット数は全体の3位を記録(写真/大澤進二)
2週前に投入したパター、スコッティキャメロンのマレット型「P5」も目を引きました。削り出しの打感の良さだけでなく独特の機能もあるとタイトリストと契約する須藤大和パットコーチは言います。「ポケットバックと呼ばれるトウヒールバランスのフェース部の後方を伸ばしたマレット型でフェース面の高さもしっかりと確保されています。ソール面の処理によって“据わり”が良く、安定して構えられる特徴があります」と教えてくれました。
5月の「サロンパスレディス」で脇元選手のパッティンググリーンでの練習風景を撮影していたので紹介します。スティックをターゲットラインと平行に置き、ヘッドの通り道にガイド役としてティーを指して右手一本と左手一本でボールを転がしていました。タイガー・ウッズの片手で打つ練習を見たことがありますが、安定ししたストロークを実現するために地味ですが基礎練習として取り組んでいました。

アライメントスティックをターゲットラインと平行に置き、ティーをガイド役にヘッドの軌道を整えるドリル(写真/中村修)
この当時はブレード型のモデルを使用していましたが、今大会ではマレット型がバッチリとハマったようです。
両肩と手元で作る三角形を崩さないから番手間の距離感が抜群
1カ月前の「富士通レディース」の練習日に話した際にも腰の痛みを口にし、練習もトレーニングも満足にできていないなかで何とか戦っていると聞いていました。脇元選手のプレーを見ていて感じるのは、アイアンの距離感の良さです。番手間の距離の打ち分けがとても上手で、アプローチも緩みがなくヘッドスピードのコントロールが抜群に効いています。
距離と方向性をコントロールしながら打つ番手間のショットでは、フルショットよりもヘッドスピードを落とす必要があるので、ヘッドを走らせずに打つ感覚が重要になります。そのためには、両肩と手元でできる三角形を崩さずに体幹を締めたままスウィングする必要がありますが、脇元選手をサポートする真栄城輝也トレーナーによると、脇元選手は固める部位と動かす部位の使い分けがとても上手く、しなやかな体の使い方ができる特徴があると話します。

番手間の距離感が抜群なのは、ヘッドを走らせ過ぎないスウィングができるから(写真/大澤進二)
その話を聞いて番手間の距離の打ち分けの上手さに納得しました。手元とクラブを体の正面に保持したままテークバックし、ダウンスウィングでもその関係性をキープすること。言葉で表すと簡単ですが、体幹をしっかりと使えないと体の正面にキープすることはできません。

腕が振り遅れずに体の正面にキープされている(写真/大澤進二)
真栄城トレーナーは、内臓の配置が左右対称ではない体に対して呼吸を使って不均衡を整えるPRIという身体機能改善メソッドをゴルフに取り入れる数少ないトレーナーです。帯同するトーナメント会場で日々呼吸を使って取り組んだトレーニングの積み重ねが、腰痛に苦しむ中でつかんだ初優勝につながったことでしょう。現地取材する最終戦の宮崎で開催される「JLPGAツアー選手権リコー杯」でおめでとうございますと声を掛けたいと思います。
