
「伊藤園レディス」でツアー初優勝を飾った脇元華(撮影/大澤進二)
2位に3打差をつけて圧勝!

持病の腰痛(ヘルニア)と戦いながらのラウンドだった(撮影/大澤進二)
最終18番、脇元は事実上のウイニングパットになるはずだった1メートルがカップに蹴られると、肩をすくめて恥ずかしそうに笑った。仕切り直しをして、短いパットを沈めたあとは、それがほっとしたような表情に変わった。スコア提出所に向かう途中ではグリーサイドで見守ったプロテスト合格同期の原英莉花から祝福のハグ。今度は大きな目から大粒の涙がこぼれた。
優勝インタビューでは喜びを言葉に換えた。
「私いつも最終日弱いんですけど、ずっとボードを見ないようにして、自分は何位にいるか分からないまま18番になっていた。すごい集中力で自分のやれることをちゃんとできたなと思います」
首位に2打差の8位から出て、1番パー3でピンまで残り121ヤードの2打目を9Iで3メートルにつけて幸先よくバーディ先行。いい流れに乗ると、5番パー5で1.5メートル、6番パー4は5メートル、7番パー3は2メートルを沈めて3連続バーディを奪った。後半も勢いは止まらず、5メートルを決めた13番パー5からは怒とうの4連続バーディ。最終18番こそ苦笑いのボギーをたたいたが、2位に3打差をつけて圧勝した。
「今日は7アンダーで回ろうってキャディさんと話していた。1ホールずつ集中して1個ずつ(バーディが)取れたなって感じでした。(ボードは見なかったが)15番、16番のバーディを取ったときにギャラリーの方が盛り上がっていたので、今1位なのかなとは思いました」
持病の腰痛(ヘルニア)と戦いながらのラウンドだった。今季はずっと悩まされてきたそうで「トレーナーも考えて、ピラティスも行った。薬を飲んだり、いろいろな治療も受けました。こういうボロボロの状態なのに優勝できて自分が一番びっくりです」と振り返った。
パターの名手たちからアドバイスもらう

イップスを克服して8つのバーディを奪った(撮影/大澤進二)
技術的にはパターイップスの克服が大きかった。
「2020年から2022年まですごく苦しかった。そのときは本当にパターが入らなすぎて、私このまま消える選手だって思ったので、グリーン上で1人で泣いたこともあります」
その克服はパターの名手にアドバイスをもらうことで成し遂げた。
「上田桃子さんとか谷原秀人さん岩田寛さんとか、パターの上手な人に聞いて、見てもらったりしました。そうしたら、なんだ、こんなにシンプルだったんだみたいな感じになって、考えすぎていたっていうのもありました」
支えてくれた家族には心から感謝した。この日は父・信幸さんと祖母がコースで見守った。
「父とおばあちゃんで育った感じなので、頭が上がらないですね。どんなときでも励ましてくれたので、特に父にはレギュラーツアーの初優勝を届けたかったです」
ホールアウト後、娘を力の限り抱きしめて祝福した信幸さんは「(娘は)ずっと苦しんできたので、ただほっとしました。本人はこのまま勝てない選手で終わるのかなと話したこともありますけど、私の子なので、やってくれました」と涙ぐんだ。
この優勝により地元宮崎で開催される今季最終戦のメジャー「JLPGAツアー選手権リコーカップ」(27日開幕、宮崎CC)への出場権を得た。昨年は年間ランキング上位で初出場(35位)を果たしたが、優勝しての出場は初めてだけに、誇らしげな笑顔で抱負を口にした。
「こうやって優勝してリコーカップに出るために(宮崎に)戻ることが夢だったので、よかったです」
初優勝まで8年を要したが、咲かせた「華」はその分大きく鮮やかだった。
